ハンドメイド作品の転売について
こんにちは、夫婦とパグの雑貨ブランドminimumsの西野(夫)です!
前回の記事で2022年の上半期を振り返りました。その上半期の締めくくりとなるイベント、クリエーターズマーケットVol.46後に行った「クリマ後夜祭」なる通販企画にて、転売(と疑わしき)大量購入をされるという事態となりました。
今回は転売に対する思いと業界全体について書いていきたいと思います。
改めて言いたい、つくる目的
なぜ転売されることが嫌なのか
ハンドメイドイベント会場では2-3年前あたりから、ライブコマース等の動画配信サービスを使った転売(と疑わしき)大量購入が急激に増えました。コロナの影響もあり、そういった商売が増えるのもやむ無しとも思いますが、個人的には断固販売お断りしています。
対価としてお金はきちんともらっているし、むしろたくさん買ってくれる上客という見方もできます。一方で狭いブース前を長時間陣取るだとか、他に買いたい人もいるのに平等ではないという弊害もありますが、私にとっては大きな拒絶理由にはなりませんでした。
ではなぜ転売目的の購入が嫌なのか。当初は「なんでお前の稼ぎに加担せなアカンねん」と感情的に考えていましたが、意外と理性的に拒絶していると最近気づきました。
お金を得るのは二の次
ハンドメイドをする動機は人それぞれですが、私は「お金を得るため」に作品づくりをしていません。無論、お金は欲しいです。有り余るほど欲しいです。そんな生来お金にがめついタイプの俗物ですが、作品づくりの動機づけにはしていません。この辺は過去記事をぜひ見て欲しいです。
ものづくりの動機づけとして、私はただただ「良いものをつくりたい」というのが初動となっています。作品づくりの初期段階では、売れるか売れないか、人が喜ぶか喜ばないかは判断基準にはせず、自分の価値観で「良いもの」をつくる努力をします。
あれこれ考えずに良いものをつくれば結果は後からついてくる。人事を尽くして天命を待つという、誰にもアドバイスのしようがない抽象的な信念をもって作品をつくってきました。
結果を受け、また自分の価値観を研ぎ澄ませていく行為こそがクリエイティブの根源であり、洗練された価値観が自分の個性だと誇りを持ってきました。
私にとって転売(と疑わしき)大量購入はその価値観を根底から覆す行為なのです。
つまり、良いものをつくって売って結果(お金、お褒めの言葉、新たな考え方、出会いなど)を得てまたつくって…というサイクルで価値観を磨きたい私にとって、転売目的で大量に購入されても、得る結果は「お金」だけになり、そのサイクルが止まってしまいます。たとえ「ここからここまで買いたい」とM.ジャクソンばりに言われても、答えはNOです。
シンプルにプライドが高く融通が効かないだけですが、それでも拒絶する理由に気づいた以上、嫌なものは嫌、です。
転売を目的とした購入の実態
イベント会場での実態と対応
クリエーターズマーケットでは前回から、他ハンドメイドイベントでもライブコマースを禁止とする会場が増えてきました。しかし最近は動画撮影はせず静止画で撮影し、LINEなどで誰かとやり取りをした後に購入しに来るという逆進化系のパターンも出てきました。
各ブースでのライブコマース等への対応は、POP書きと口頭でお願いをすれば、大抵の人は理解して諦めてくれます。ところがどっこい、そんな環境下でもライブコマースをするような難敵もいます。一人断ってもグループ内の別の人が買いに来たり、小学生の子どもに買いに来させるという、こちらの良心を試すような手段も使ってきます。
通販での落とし穴
イベントではそう対応してきましたが、今回「クリマ後夜祭」での経験は少し毛色が違いました。
そもそもこれまでにも通販で月に1-2件ほど転売目的だろうなーという買い方をする人がいましたが、せいぜい3-4個ほどで毎月のように購入するわけでもないので、あまり気に留めないようにしていました。
一方、クリマ後夜祭は私どもminimumsのファンでいてくれつつも、会場へ来れない方へ向けた通販での販売をイメージしていたので、前回も、そして今回も多くの方は開始直後にまず1点狙いを絞って購入され、時間があれば他作品もという買い方をされました。
しかしお一人、3回の注文に分けて計17点購入された方がいました。1回目の注文の時点で怪しいと感じ、2回目の注文でこれ以上買わないようメッセージを送りましたが、無視され3回目の購入をされました。
毎月定刻に再販開始&即完売、というコアなファンに支えられているminimumsにとって、通販でのこういった購入のされ方は初めての経験でした。しかし通販サイトの仕様上、当然起こりうる事態でもありました。
販売者側の都合のみで原則キャンセルできない
イベントでは直接対面するので販売拒否できますが、通販でメインとして使っているECサイト「minne」では、購入者側の都合のみでは原則キャンセルはできず、購入者と販売者の双方の合意があってはじめてキャンセルが可能となっています。
他ECサイトでは一方の都合のみでキャンセルできるところも一部ありますが、ハンドメイドを扱う多くのサイトではキャンセルは双方合意が原則のようです。しかしこれに関しては「なんで片方のみでキャンセルできないんだ!」と否定的な考えはありません。購入者側の立場で考えると、買ったのに&振り込んだのに発送されない、という販売者側の悪質な行為が横行する恐れもあるからです。
そもそも転売自体が違法ではない以上、各作家ごとにささやかな対応をする以外に現状できることはありません。
minne新機能の実装
とりあえずキャンセルはできたが…
クリマ後夜祭での大量購入の対応として、快諾とはいきませんでしたが、キャンセルの同意を得て、
・転売目的と疑わしき大量購入のため
・メッセージによる購入に関するお願い以降も購入が続いたため
の2点を理由に全注文のキャンセル依頼をし、ゴタゴタもありつつキャンセルが成立しました。
今回はこれである意味逃げきれたのですが、今後同じことが起こった場合どうすれば良いのか。個人で通販サイトをつくってマイルールで運用するのか、Googleフォームで個別で注文を取るのか、そもそもハンドメイドの限界か…とにかく1週間ほど悩んで凹んでやる気を失っていました。
ブロック機能の提供
そんな矢先、minneから告知された新機能の提供。SNSを見ても、多くの作家が待望していた「ブロック機能の追加」でした。
◆ブロック機能(仮)の内容
ブロック登録した販売者・購入者からのメッセージや、購入などに対して一部制限をかける機能を提供予定です。
まだ(仮)の段階ではありますが、今回のクリマ後夜祭騒動で起きたことを未然に防ぐ可能性を感じる内容です。理想としては各作品ごとの購入制限ですが、転売対策として大きな、そして勇気ある一歩目だと感じました。
個人の通販サイト立ち上げも視野に入れていましたが、抜本的な転売対策はもう少し様子を見ていきたいと思います。通販においては、転売を目的とした購入遠慮のお願いなどを明記する程度に留め、新作や限定作品の販売は新たな手段で、欲しい人に届けられるよう継続して考えていきます。
一方ハンドメイドイベントはどうする
ハンドメイドそのものの衰退
通販ではminneが転売トラブル対策へ一歩目を踏み出し、何か変わるきっかけになればと思いますが、ハンドメイドイベントはどうする、どう在るべきなのでしょうか。
大規模なイベントではライブコマースを禁止する会場が増えてきましたが、「ライブコマースでの販売もOKというブースもあるのだから、一様に禁止するのではなく各ブースごとに対応すれば良いじゃない」という意見もSNSで見かけます。多様性を考えるなら正しい意見ですが、そもそも各ブース単位の次元ではなく、私が危惧しているのはハンドメイトイベント自体の、行く末はハンドメイドそのものの衰退です。
かつてはヤフオクやレンタルスペースがハンドメイド作品の販売ツールの一つでしたが、専門のECサイトの出現で衰退していきました。これから先も世界規模でハンドメイド作品の販売方法は更に変化をしていきます。
そもそも海外のデザインの影響を色濃く受けている日本のハンドメイド産業は、転売天国の現状を放置すればいずれ海外で逆輸入的に展開され、そのうち日本人が海外のサイトで、海外の人がつくったハンドメイド作品をより安く購入することが主流となるかもしれません。
そうなると日本の作家たちは食い繋ぐことができなくなり、ハンドメイドイベントは消滅、ECサイトは軒並み撤退することになります。アニメーションや漫画業界ではとうの昔に始まっており、ハンドメイド業界も転売行為だけに目を向けるのではなく、転売による文化や技術の流出対策について、今後真剣に取り組まなくてはいけません。
少し話がそれました。ハンドメイド「イベント」に戻します。ハンドメイド作品の購入方法は様々変化してきましたが、ハンドメイドイベントだけは通販が主流になる以前から変わらず存在し、常に盛り上がってきました。世界的に見てもハンドメイドに特化した大規模なイベントは珍しいそうです。
それが昨今の転売を目的とした来場者の増加により、出展者は転売対策に疲弊し、来場者は迷惑し、ハンドメイドイベントから足を遠ざけ始めています。周りの作家さんと話していると、来場者より先に出展者のイベント離れの方が早そうです。私もそんな一人です。出展者がいなければ、そもそもイベントが成立しません。現状を野放しにすると、コロナから復興しつつあるハンドメイドイベントもまた過疎化してしまうかもしれません。
通販とハンドメイドイベントの違い
minneやcreemaなどのECサイトが転売を厳しく排除すると、売上の面から見ても徹底した転売対策は現状得策ではないでしょう。しかしハンドメイドイベントはどうでしょうか。
シンプルなCtoCの対面販売のハンドメイドイベントにおいて、主催者にとって「お客様」は出展者と来場者の双方です。しかし転売目的で会場を闊歩する人たちは来場者でありつつも「お客様」ではなく、純粋に良いものを売りたい出展者と、良いものを探しにきている来場者にとっては何一つメリットがない「邪魔者」です。
彼らを徹底的に排除してもイベントの売上(出展料&入場料)へ影響はほぼなく、むしろメリットが増えることも想定されます。多くのイベントがライブコマースを禁止する理由はここにあるのでしょう。イベントに関しては転売行為を厳しく排除できる状況に「まだ」あります。そしてこれが通販とハンドメイドイベントの大きな違いだと私は考えます。
出展者の要望に合わせた住み分け
現状ではイベント自体でライブコマースの禁止、そしてスタッフが巡回して注意したり、出展者がスタッフに助けを求めることもできますが、一方で前出のとおり、ライブコマースOKというブースもあります。
本当に多様性を認めるならば、イベント自体がライブコマースを禁止する以上、出展者側にも禁止に同意の上で出展させてはいかがでしょうか。もしくは会場内でライブコマースOKエリアとNGエリアと分けても良いですし、ライブコマースOKのハンドメイドイベントを企画しても良いと思います。
転売する側に明確な意思表明を主催者、出展者で示していかなくては、彼らには何も伝わらないし、何も変わりません。
実物をつくる作家において、多くの人に作品を見てもらえる機会となるハンドメイドイベントはとても大切な場所です。黙々と家で作業する作家にとって生の反応を見れることは、通販では体験できない喜びがあります。これがモチベーションとなり、またイベントに出したり、通販でも展開したりできるのです。
作家にも、ファンにも、イベント主催者にも、ECサイトにとっても、ハンドメイドイベントの存続は日本のハンドメイド業界を守るためにも非常に意味あることだと、私は考えます。
全ては、ハンドメイドを愛する人々のために。
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