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夢、色鮮やかな幽霊

2021.1.19未明 記

娘はここじゃないよう!と叫んだ

 夢を見た。
 わたしは大きな声で叫んだようで、横で寝ていた娘が泣いた。

 娘も、うわ言で
「ここじゃないよう!」
 と泣いた。

 夢では、何やら不思議な生き物が出てきた。
 それを、夢の外、つまりわたしたち家族の寝室に持ち込んだのではないか?
 そんな氣がして、しばらくののちに起き上がり、2階に上がって祭壇の蝋燭に火を灯した。

 その蝋燭は、聖なる力が秘められており、家一軒くらいの範囲の魔を払うと聞いていた。
「蝋燭を灯した方が良い」そんな思いが湧いたので、思いに従った。

夢の内容


 どんな夢だったか・・・

 5階建ての古いマンションに住んでいた。
 1階と2階部分は店舗が入っており、3階から5階が住居だ。

 5階の住人が、4階に住むわたしに、なにごとか言いにきた。
「このマンションに何かがいる」
 というようなことだ。

 わたしは、なぜかその謎の存在のことを知っており、
「5階と3階にいる」
 と、説明する。
 5階の住人は、ドアの「のぞき穴」から見ているようで、魚眼レンズで撮った写真のように歪んで、真ん中が大きい。

 5階の住人が、
「5階にいるのは色鮮やかなモノだ」
 という。
 わたしは、「それはその通りだと思う」と、5階に出没するモノが描かれた絵を思い出しながら言っている。
 その絵は鮮やかな色をふんだんに使って描かれている。
 絵は、娘が保育園で描いて持って帰った絵に似ている。


 子供というものは、でたらめに塗りたくったり、いびつなマルをいくつか描いて、「これはアレだ・コレだ」と、お氣に入りのテレビキャラクターの名前を言ったり動物の名前を言ったりするものだと思っていた。
 しかし、娘は、持って帰った色鮮やかだが何にも見えないその絵を前にして、
「何を描いたの?」
 と問うと、
「ぐしゃぐしゃ」
 と答えた。

 娘は、自分の絵がただのぐしゃぐしゃであることをわきまえていた。
 意外だった。
 意外だったので、印象に残った。
 そのぐしゃぐしゃの絵は、まだリビングにおいてある。


 3階にいるものは、黒くてモヤッとした存在だったが、5階にいるものはその絵のごとくにカラフルで。そして、悪い存在ではなかった。
 そんなことを、訪ねてきた5階の住人に話していたわたしだった。

 話していると、その、色鮮やかなぐしゃぐしゃが、ザワザワと動き出し、わたしの体にまとわりついてくるような感覚があった。
 それは、悪い存在ではないはずであったが、なにかわたしにまとわりついてきて、このままではいけないと感じた。
 わたしは、そのまとわりついてくるものを祓う言葉を唱えた。

 その、唱えた言葉が、実際に声に出た。
 その声に驚いた娘が、泣いて、
「ここじゃないよう」
 と、言ったのだ。

 そして、わたしは、寝ぼけて泣く娘をケアしたのち、
 しばらく、夢の内容を考えて、
 蝋燭を灯しに、2階に上がった。

 階段を上がりながら腕時計を見ると、1時27分だった。
 草木も眠る丑三つ時とは、何時ごろのことだっただろうか、と思いながら上がっていた。


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