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カット割りの話「肩なめショット(OTS, Shot/ Reverse Shot)」の歴史について調べてみました

こんにちは、高橋です。
記事画像は、まさに肩なめで撮ったショットです。2018年製作の自主映画より。

映画といえばカット割り。今回は「OTS, Shot/ Reverse Shot」ついて学んだことを備忘録的に記してみます(丁寧に説明する内容では無いため、映画製作の知識が多少ある人向けだと思います)。

肩なめはいずこ?

最近白黒時代(なんならサイレント)の映画を観ることが多いのですが、その時にふと「そういえば肩なめショットってほとんどないよなぁ」と思いました。

現代では会話のシーンでもはやスタンダードになっている肩なめショット。ある人物の肩越しに、その先の景色を撮る構図です。肩越しという性質上、カメラは目線の高さになるので、その人が見ている視界を追体験するような映し出し方が出来ます。
また、向き合った2者の両側からの視界を交互に映すことで、会話している2人のそれぞれの顔を映すのに便利です。

肩なめで会話シーンを撮ると、基本的には両側分のカットを作ることになるので、自動的にカット割りが作れるのも楽でイイですね。

イマジナリーラインの話なんかにも繋がるので興味があったらこちらの記事もどうぞ。

また「前景〜中景〜後景」が作られることになるので、3つの対象を配置出来ます。映画では「前・中景に人物、後景は背景」というパターンが多いと思います。テレンス・マリックはこの3景/3対象を使う撮り方が好みだそうです。

さて、そんな肩なめショットですが、一体いつから使われているのか気になり調べてみました。

肩なめショットといえばリバースショットも同時に扱うことになるため、今回は「OTS, Shot/ Reverse Shot」の2つについてのお話です。

さすが英語Wiki

「肩なめ 歴史」なんて日本語で調べても全然情報がなかったので、「OTS Shot History」調べた所、なんとWikiのページがありました。さすが英語圏。OTSとは「Over the Shoulder Shot」の略で、肩なめショットの英訳です。

まあ、正直Wikiの情報で解決しちゃったのでWikiを読んでもらえれば良くて、この記事の意味はあまり無いかと思いましたが、日本語で情報を残す意味もあるかと思ったので、一応紹介しておきます。

フェルメールが生み出した!?

OTSは写真や映画が登場するよりもずっと前に、数多くの絵画に登場していたようです。そして1666年〜1668年の間に、フェルメールによって生み出されたのが最初であるとのこと。真珠の耳飾りの少女なんかで有名なフェルメールが草分け的存在だったとは・・・・・・。

Wikiに載っているこの絵を見る限りでは、現代の映画で見られるような至近距離ではなく、もっと遠景からのOTSですね。映画でOTSを使うときは、文字通り肩しか入らないくらいの前景に人物がいますが、この絵では前景に人物以外が入っているので逆に新鮮です。

フリードリヒによって多く使われてるっぽい

そして、19世紀の画家「カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ」がOTSを多用していたようです。絵画には学がないので初めて知った人でしたが、確かに彼の絵を画像検索すると、OTSショットが多く見られます。OTS好きとしては結構好みの絵が多くて刺激になりました。

個人的にはこの絵がツボでした。

映画でのOTS

映画では、サイレント時代の初期の頃はこういった構図は見られなかったようです。演劇からの影響が大きく、正面からステージを見るのと同じ感じで映画も撮られていたとのことです。

これは確かにそうですね。古い映画はアングルの数が多くなく、固定された向きからのショットばかりです。演技をする人も、ちゃんと正面から顔が見えるような動きに制限されています。

つまり、一方向からのアングルしかなくリバースショットも使われていなかったということになります。リバースショットを使ったカット割が存在していなかった、とも言えるでしょう。Wikiの説明を見る限り、カメラの技術的な制約もあったせいでそうなってしまっていたんでしょうね。

映画でOTS及びそれに伴うShot/ Reverse Shotが使われたのは、1900年に作られた「Atack on a China Misson」が初めてのようです。
YouTubeにあったので見てみました。著作権は切れているので良いのだとは思いますが抵抗はありますね・・・・・・あまり気乗りはしませんが、勉強のためです。

思ったよりは初期に登場しているなという感想ですが、Shot/ Reverse Shotが使われています。リバースショットがあることによって、演技者は片側アングルしか使わないカメラに向かって顔を向けようとする必要もなく、また、向き合った2者間でのやりとりをカットを割ることによって表現できるようになっています。これをやるだけで創作の幅は相当広がりますね。

終わりに

ここから先はWikiでの説明もなく、ネットでの情報もあまり取れませんでした。

総合すると、OTSやReverse Shotは技術的な問題や演劇の影響が大きかったなどの要因から、初期にはあまり使われていなかったという感じなのかなと。

確かに、リバースショットを撮るには機材を動かさなければなりませんから、カメラや機材の軽量化・小型化が進まないと難しいでしょう。
ライティングについても、Shot/ Reverse Shotが順光と逆光の関係なら、同じような明るさで表情を写すためには、フィルムの感度やレンズのF値について選択肢がないと厳しいと思います。今ではデジタルで4ケタ以上もある感度も、フィルムでは2ケタとかですからね・・・・・・。

技術的進歩によってどのようなアングルでも撮れる今は恵まれているんだなぁ、と感じたところで、今回はおしまいです。

過去作品

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