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海外で聴く宇多田ヒカルは沁みる。

20代のころ、青年海外協力隊に参加し、パプアニューギニアで2年間生活したことがある。初めての海外での生活、しかも途上国。日が落ちれば周りは真っ暗であり、外には出かけられない。最初のころは友人もいなかったため、非常に孤独を感じた。

iPhoneが世の中に出る前だったのでスマホはもちろんないし、インターネットはダイヤルアップで頻繁につなげられる環境ではなかったため、夜にやれることは本を読むか、音楽を聴くことくらいだった。そのころ、よくかけていた曲が宇多田ヒカルのアルバム、First Loveである。AutomaticやFirst Loveだけでなく、アルバムに入っている全ての曲が好きで、擦り切れるくらい聴いた。切ない歌詞やメロディが異国に一人きりという環境で、心に刺さった。特に日本っぽい曲というわけではないのに、なぜか郷愁を感じたことをよく覚えている。

このことを妻に話したところ、妻もアフリカに在住していたときにFirst Loveをよく聴いていたそうだ。もしかすると、日本人が共通で持つ精神性に響く何かがあるのかもしれない。ぜひ、海外に住んでいる他の人たちの声も聴いてみたい。

この原稿を書きながら久しぶりにFirst Loveをかけたところ、日本で聴いてもいい音楽だった。持っているアルバムの中で一番好きかもしれない。だが、海外で聴いていたころの、なんとも言えない切なさは感じなかった。寂しさと化学反応しやすい曲なのかもしれない。今度、寂しさを感じたときにもう一度聴いてみよう。

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