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新解釈:四十九日…四七日

三七日編はこちら

私とゆみさんは例のカフェにいた。
『パイナップルタルトもイケるわね。さやさん本当たくさんお供えしてもらったのね。あっ、でもさやさんはチョコ派なのよね。』
毎週裁判があるから、毎日しっかり食べないと頭が回らなくなる。

「あっ、1つ質問しておきたいことあったんですよ。次の四七日の裁判官はどんな方ですか?」
『え?そんなの気になるの?』
「気になりますよ!二七日は途中ペンライト振ってノリノリの人がいたし、三七日はスナックのママみたいな人が裁判官だったんですよ?私の思っている裁判と違う!」
そもそも毎週裁判があること自体が非日常だが、死んじゃってからは常識が通じない。
『じゃあ答えるけど、四七日はたぶんさやさんがテレビで見たことがある裁判に一番近いと思います。』
「“異議あり!”ってやつ?」
『普段の裁判で“異議あり!”はほとんど言わないらしいよ?一番普通の裁判官だと思う。でもまぁぐさぐさ心が痛む裁判になるかもしれません。“嘘”についての裁判なので。』

私たちは少し静かになった。
確かにそうなのかもしれない。
“嘘”はつかれた側もだけど、ついた側もいい気はしない。小さな嘘を守るためにさらに嘘をついてどんどん大きくなることもある。
一番人間の知られたくないこと、人間の心の奥底をエグられるような裁判になるに違いない。

私は口を開いた。
「………“嘘”をつかない人間なんているのでしょうか?」
ゆみさんは首を横にふる。
『子どもも大人も嘘をついたことは絶対あるよ。 理由はいろいろある。“見栄”だったり、“その場をやり過ごすため”だったり、“誰かを守るため”だったり…。大切なのは嘘をついた後、相手は・自分はどう感じたか。悪かったな、って思ったらきちんと謝れたか。もし謝れなかったとしても、四七日ではその場で懺悔する時間が与えられます。』
私は涙が出ていた。

『わかって欲しいのは、嘘をついた・謝れなかった=ダメ人間!ではなくて、そんな自分を認めてしっかり反省できるかどうか。自分の人生を客観的に振り返れるか、が四七日の要です。』
今まで見たことがない、ゆみさんの優しい表情になぜか涙が止まらない。
『たぶんさやさんのことだから、そんなものすごい嘘はついてないと思うけど……。1杯温かい紅茶飲んで落ち着いたら、じっくり振り返りましょう。』
私は大きく頷いた。

続く

【四七日】
四七日は五官王(普賢菩薩)が審判となり、生前についた嘘について裁きを受けます。
五官王のいる秤量舎という場所には、生前の罪業の重さを測る「業秤」(ごうのはかり)と呼ばれるものがあり、罪が重ければ重いほど、反対側の秤に乗せられた重い石が軽々と持ち上がります。

また、五官王の「五官」とは目・耳・鼻・舌・身のことを指し、人はこれら五官を使って他人を欺き、傷つけることができるとし、その罪の重さを見極めます。

参考資料


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