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栗まんじゅうを食べた

栗まんじゅうをふたつ買い、うちひとつを食べた。
僕は自称辛党で、甘いものは買わず、口に入れることもほとんどない。

が、きょうは必要に迫られた。
19日に人前で披露する落語「長短(ちょうたん)」で、気の長い登場人物が栗饅頭をゆっくり、ゆっくりと食べる場面がある。
口と顔全体の動きでくすくす笑いを狙うところだが、饅頭を食べたこと(少なくとも記憶)がない僕は、歯や舌がどう動き、その結果、どのような見え方になるのかが分からない。
そこで、これから毎日、饅頭をひとつずつ、ゆっくり時間をかけて食べて、リアリティある口の動きをマスターしようという、まさに落語並みにくだらないアイデアをひねり出した。

セブンの栗まんじゅうは、ずしりと重かった。
ひとつ174キロカロリーとある。値段は100円台後半だったかな。
「一粒栗を使用」している、と書いてある。
落語と同じように、ひとつの饅頭を左右の手でふたつに割るのだが、当然ながら栗はまるごと片方にくっつく。
その栗+饅頭半分を口に入れると、その重さと大きさに、口が驚いた。
大袈裟に口や顔を動かしながら5分ほどかけてこれを胃に落とすと、栗なしのもう片方は3分ほどで消えた。
饅頭ひとつ、まるごと食べたのは何十年ぶりか。とにかく記憶にない。

こんなに美味しいとは知らなかった。
稽古のためゆっくり食べたせいもあるだろうけど、甘いだけじゃなく、とても深くて広い味があるんだね。
甘味を軽くみてはいけないのだ、と思った。

こんなたわいもない、だけど大事な出来事が現在から過去になる、その一瞬の果てしない連なりで人生はできているのだろうな。
明日もそんな一日でありますように。


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