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雨漏りは、家から一歩も出ずには、直せない

徳島県神山町の大南信也さんの 「偶発性をデザインする」〜人口5000人の徳島県神山町はなぜ進化し続けるのか〜 という講演会に行った。
ストレートな感想は昨日の note 「高専を作った話を聞きに行ったら30年前の話から始まった」に書かせていただいた。
今日は、この講演会で感じた別サイドの感想。


雨漏りは、家から一歩も出ずには、直せない

結論から述べると、福井を変えるような人材は、福井の外にいたり、福井を外から見たことがあったり、福井と福井以外の差を実際に体験している人であろうと思った。

雨漏りは、家から一歩も出ずには、直せない。

家の構造、屋根の構造、外から見た状態、原因がどこか。家の地理条件、置かれている環境。最近の屋根の構造の技術、修理方法、素材の調達、修理業者の手配、工数、工賃、予算。。。
家の内側から目張りしたり、その場をしのぐことはできるかもしれない。でも、毎回雨漏りするような屋根は、内部構造まで水がしみて、いつか屋根が、いずれは家そのものが腐ってしまうかもしれない。
外側の知見、知識、技術が必要なのだ。

地方活性化もしかり。
外のことを全く知らない人だけで成し遂げることはできない。

優秀な若者は外に出るべき

高校を卒業すると、進学する若者は都会に出てしまう。そのまま帰ってこないから過疎高齢化が進行する、というのはよくある話。
反対に、中堅以上の大学が県内にあるから、「県外に出たくないけど優秀」な層が一定数いて、県内で働き家庭をもってくれる、という持ちこたえかたもある。(地方の大学はこのニーズがないとつぶれてしまう)
地方都市は、人口減少社会に対応するため、県内進学や県内就職、UターンやIターンを上げる施策をたくさん考え、取り組んできたのだと思う。

だけど、それこそ神山町のようなドラスティックな変化が起こることを期待するのなら、自治体内に人材をプールするような発想ではなく、どんどん流動させることに目を向けるべきなんじゃないかな。
だから、優秀な若者ほど、引き止めちゃいけない。

わたしは福井育ちではなく、東京で8年働いてから移り住んできた身なのだが、ずっと福井住まいの方との間で、福井に対する認識の違いがまあまあ、ある。
東京などの大都市に比べ、福井で得られる経験にも限りがある。
(インターネットがあれば地方格差はない、と主張する人もいるが、あれは戯言だ。インターネットがあればいいのなら、なぜコロナ渦が去った後、都市部でオフラインイベントが復活・活発化してるんだ)

言い方は悪いが、県内にずっといると、頭打ちする。
知見も、技術も、人とのコネクションも、考え方も、感覚も。
変化する世の中において、現状維持は衰退だ。
新しい人、別チャネルの人とのコミュニケーションがないと、どうしても考え方が凝り固まってしまう。そうなると内向きに、現状維持思考になりがちだ。

客観視するため、知見や技術を身に着けるため、人とつながるため。
優秀な若者ほど、外に出て、貪欲に多くのものを得てほしいと思う。

KPIは流動性

一方、
優秀な若者が外に出ていくと、結局人口減少するだけと言われる。

そりゃそうだ。
日本全体でみても、そもそも人口は減少している。1地域の住民数を増やそうとしても、日本国内で人口をとりあっているだけで、レッドオーシャン。Win-Winの構図にはならない。

優秀な若者を、単に「つなぎとめ」ようという試みは、たびたび失敗する。
つなぎとめたいなら、それ相応のメリット、価値、魅力、可能性のある土地でなければならない。
資本主義社会の市場原理だ。

先述の通り、人口は減少し続けている。
その中で、地方を活性化したいと思うのなら、キーになるのは「流動」であり「縁」であろう。
何らかのドメイン知識や専門性を持った人が、いかに地方とつながり、「何かあった時はあそこで」と思ってくれるか。地元で何かしたい、してみようと思ってくれるか。
定住や住民の増加だけが重要なのではなく、土地と「縁」をむすんでくれ、好意的でいてくれる。これが、ふとした拍子に偶発を生む土壌になる。
だからこそ、地方の町は、その可能性がある、魅力的な土地である必要があるのだ。

大南さんは、外からやってくる「風の人」と、地元に住まう「土の人」の両方が必要だとおっしゃった。両方が交わることが必要だと。

この動きに、〇か年計画という達成目標はそぐわないと思う。
能動的な活動でありつつ、どこか起こるかもしれない偶然を期待する、非常に他力本願で、人の善意に期待する、楽観的なアクションだ。
だからこそ、行政だけが音頭をとってすすめることは難しい。

福井だっておもしろい

結論は先に書いてしまったので、オチがないんですが。
地元の人と外の人、それをつなぐ人や縁、そういう要素が善意で紡がれることが必要なんだろうなと思った、というお話でした。

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