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王室の一員であることの苦悩がエグい……Netflixドラマ『ザ・クラウン』【エミー賞】

【海外ドラマファンのためのマガジン第101回】

だれでも、自分の人生は「自分を中心にして生きていきたい」と願うもの。
人間として、当たり前の感情だとも思います。
ところが、英国には、「自分を中心にして生きることが許されない人たち」が存在するのです。

王室」の一員になったとき、その人の権利や人権は「ないがしろ」にされてしまいます。
王室のメンバーは、王室のために生きなければならないから……。
そして「王室」とは、女王のことです。

『ザ・クラウン』シーズン4【Netflix】

英国君主エリザベス女王の人生を描くNetflixドラマ『ザ・クラウン』。

実際に起った事件や事故、歴代の英国首相との関係性などを描くのはもちろんですが、王室一家の関係性や、スキャンダルについても迷うことなく切り込んでいく歴史ドラマです。

シーズン4では、1979年マーガレット・サッチャーの首相就任から、1990年に退任するまでの11年間が描かれます。

1979年に起こったテロ事件で、王室関係者が犠牲になったことや、1981年のチャールズ皇太子の結婚などの実際の出来事を、綿密な調査を元に脚本に起こし、「その時、女王はどう感じていたか」をクリエイションしていくのです。

女王の妹、マーガレット王女のスキャンダルや、チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚生活の破綻について、王室のプライバシーをタブー無しで切り込む姿勢は、日本では考えられないドラマの作り方だと言えます。

しかも、スキャンダルをタブロイド的に好奇心で扱うのではなく、「王家に生まれたものの使命」や、「女王としての感情」にフォーカスを当てて、人間として生きることが許されない立場に置かれた人々の諦めと苦悩、そしてかすかな希望を映し出す、文学的な脚本力に圧倒される全10話です。

脚本は、映画『クイーン』(2006)でアカデミー賞にノミネートされたピーター・モーガン。
女王役は、『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー主演女優賞を獲得したオリヴィア・コールマン。
エリザベス女王と同い年で、女性初の英国首相となったマーガレット・サッチャーを『Xーファイル』のジリアン・アンダーソンが演じています。

サッチャー首相とエリザベス女王の、相性がいいのか悪いのか分からない、「静かな女の戦い」も見どころでした。

2021年度のエミー賞には、最多となる24ノミネートを果たしているドラマです。ドラマ部門作品賞の大本命と言えるでしょう。

第73回エミー賞 【ドラマ部門】24ノミネート
主要部門


主演男優賞 ジョシュ・オコナー(チャールズ皇太子)
主演女優賞 オリヴィア・コールマン(エリザベス女王)
主演女優賞 エマ・コリン(ダイアナ・スペンサー)
助演男優賞 トビアス・メンジーズ(フィリップ殿下)
助演女優賞 ジリアン・アンダーソン(サッチャー首相)
助演女優賞 ヘレナ・ボナム=カーター(マーガレット王女)
助演女優賞 エメラルド・フェネル(カミラ・パーカー・ボウルズ)
ゲスト男優賞 チャールズ・ダンス (マウントバッテン卿)
ゲスト女優賞 クレア・フォイ(若き日のエリザベス女王)
監督賞 第3話「ウィンザー家」ベンジャミン・キャロン 
監督賞 第10話「栄光の女王」ジェシカ・ホッブス 
脚本賞 第10話「栄光の女王」ピーター・モーガン

本日からエミー賞授賞式がある9月20日まで、エミー賞ノミネート作のコンプリート紹介を目指していきます!

まずは、ドラマ部門の作品賞にノミネートされた8作品から。トップバッターは、最多ノミネートの『ザ・クラウン』でした。
次回は、同じく最多24ノミネートとなった『マンダロリアン』をご紹介します。

ドラマ部門全8作品の詳細はこちらで↓




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