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エッセイ【母の人生が一転した日】

【母の人生が一転した日】峯岸 よぞら

2023年11月28日。
その日の出来事は、鮮明に覚えている。
それは今後の人生でも、
記憶として脳裏に焼き付いていることでしょう。



午後一時半頃、兄からのLINE通知。

「母ちゃんが、運ばれた」

急にそんなことを言うものだから、
バイト中だった私は、「んあ?」みたいな声が出てしまった。


でも、良くない状況というのは、瞬時に察知した。
急に手の震えが止まらなくなり、呼吸も荒くなっていた。
とにかく、病院へ向かうことを伝えて、走った。

もしも、命が…とか、良くないことを考えてしまいながら、電車に乗る。
いるはずもない母ちゃんの姿を探してしまう。
安心したくて。


気が動転しているのを隠すのは、難しかった。


「脳出血、左半身麻痺。」
その連絡が、頭の中で埋め尽くされていく。


病院へ着くと、兄がいた。
タイミング良く、看護師さんが、
病室へ案内してくれた。


病室で点滴を打ちながら、横たわる母。
心電図も着けられていて、脳出血の恐ろしさを実感した。


看護師さんが呼ぶと、母は、すぐに目を覚ました。
その時、すぐに兄のことは分かったみたい。
だが、私のことは視えていないようだった。
その時は、私が母から見て左側にいたから、
左の視力も無かったのかもしれない。


兄と看護師さんが、入院セットについて話していたが、
耳に入らなかった。(聞いておきなさいよ。笑)


私のことを認知していないというのは、
存在を消されたみたいで、気が気じゃなかった。
母との思い出が、自分だけのものになってしまうのは嫌だ。
なんとか視界に入ろうと、
ウロウロしていると、母と目が合った。
右手を挙げてくれて、ようやく安心した。
(病室でウロウロしていたら、邪魔だよね。笑)

ちなみに、うちの母ちゃんはどんな人かというと、
ウルトラスーパーハイパー超ガチのパワー母ちゃんで、
週6で、スポーツ系の習い事をしていた程だ。


また、コミュニケーション能力が鬼レベルのような人で、
近所の人との繋がりも濃い。
○○さんがここのお店が良いって言うから行ってきたとか、
某グー●ルよりも、某食べ●グよりも、
本気の口コミを知っている。


どこに行っても存在感もハイレベルで、
例えば、あの人は太陽のような人だとか、
月のような人だとか、例えるとするが、
そんな生ぬるいものではない。


銀河系全てのような人だ。


ここまで言うと、大袈裟に聞こえるが、
ついさっきまで、元気だった人の人生が、
一瞬で変わってしまうんだということが、
とてもショックだった。


ただ、幸いなこともある。
習い事の最中に急にふらつき始めて、
呂律が回らなくなったとのことで、
周りの人がすぐに救急車を呼んでくれて助かった。

更には、その場所から、目と鼻の先が病院だった。

だから、一時間以内に点滴を打ち始めることが出来たとのこと。
六時間以内に点滴を打たないと、生存率が変わってしまうらしい。

もしも自宅で倒れていたら、その日は皆不在だったので、
助からなかっただろう。
周りの方や、救急隊、医師や看護師、皆さんに感謝の気持ちでいっぱいだ。

出血部分は深いが、体を動かす神経は若干逸れてくれた。
だから、左半身麻痺で重症との診断だったが、
次の日から自分で手足を動かし始めたとのこと。


母ちゃん自身は、まだ軽症だと思っている。
勘違いしていた方が、体を動かす原動力にもなるかなと思って、
そこは訂正していない。

子どもの頃、母ちゃんの口紅を勝手に使って、
バレバレだったことがあったが、今回はバレずにいきたい。


現在は、リハビリの病院で、毎日リハビリに励んでくれている。
こちらも全力でサポート出来るよう、
兄たちとの連携をしっかりやっているつもりだ。


こうして文章にしていくと、気持ちの整理も着く。
だが、私は普段ショートショート小説を書いているのに、
これがエッセイであることが、
非常に悔しい。<終>

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