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好きnote 30 「日常」

友人が突然「すいか」を貸してくれた。

食べるスイカではなく、ドラマの「すいか」DVD BOX。彼女にとって「すいか」はバイブルだそうだ。


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「すいか」は2003年のドラマで日本テレビ系列で土曜日の9時から放映されていた。

当時、私は29歳で、1番ぐちゃぐちゃに煮詰まっていた頃だったように思う。ボンヤリとこのドラマを見ていた気がするけど記憶にない。

改めて見て、めちゃくちゃ良いドラマだった。友人がバイブルだと言う気持ちもよく分かる。

ストーリーをざっくり簡単に説明すると、早川もとこ(小林聡美)は34歳独身の実家暮らし。職業は銀行員。職場ではお局扱いされ、同期の馬場まりこ(小泉今日子)と、昼休みにお弁当食べながら悪口を言って気晴らしをする日々だった。

そんなある日、同期の馬場まりこが職場のお金を3億円横領して逃亡する。ショックを受け、ひとりぼっちになってしまったと悲しむもとこはハピネス三茶という下宿屋と、そこに住む個性的な住人と出会い、家を出てハピネス三茶で暮らしていくという話。


小林聡美、小泉今日子の他に、ともさかりえ、浅丘ルリ子、市川実日子、高橋克実、もたいまさこ、片桐はいり、白石加代子、金子貴俊という面々が出演してる。ゴールデンタイムにこのメンバーは豪華だ。土曜日の夜9時の日テレドラマはだいたいジャニーズドラマやん。そんな時間帯にこのメンツは痺れる。

しかも主人公の早川もとこは、めちゃくちゃ煮詰まってる。34歳にしてアイディンティティに悩んでる。それまでさほど疑問を持たずに無難に生きてきたのが、同期の友人が3億円横領して逃亡したことで、本当に自分はこれでいいのか悩む。自分には何があるんだと悩む。自分らしく生きるハピネス三茶の面々と暮らすことで、悩みが解決する訳ではないが、そのモヤが少しずつ晴れていく。地味だけど、とてもいいドラマだった。

特に9話と最終話がよかった。最終話では逃亡中の馬場まりこがハピネス三茶を訪れる。ハピネス三茶の住人は留守で、留守番の近所のバーのママがまりこをハピネス三茶に招き入れる。もとこを待ちながらウロウロするまりこ。洗われずにキッチンに置かれたままになっていた朝食の食器や梅干しの種を見て、まりこは自分が3億円と引き換えに失ってしまった日常の素晴らしさや重さを感じいる。そしてまた、まりこと再会したもとこも、まりこ本人からその話を聞かされ、何もないと思っていた自分にある、かけがえのない愛しい日常を自分の大切なものとして感じ入り、自分で何の変哲も無い日常を選択する。


9話は帰宅途中のもとこが「あなたは20年後何をしていますか?」とテレビ局からインタビューされて、何も答えられずに佇んでしまう場面があった。

20年後を想像したシーンには2023年という西暦が書かれており、むしろあと2年後やん!!と、ドラマを見ながらビックリしつつ、私はこの20年何しとったんや!と思った。


「すいか」が放送されていた2003年の29歳の私は煮詰まっていた。結婚する訳でもなく、やりがいがある仕事がある訳でもなく、悶々としていた。私の人生はこれでいいのか? こんなはずじゃなかった。私はもっと才能があって、私にしかできない事をしたかった。イケメンと薔薇色の恋愛をしたかった。チヤホヤされるような人気者になりたかった。もっと自由にどこでも行けたり、好きなものを買えるようなお金が欲しかった。そんなキラキラしたことを願いながら、実際の自分の不甲斐なさに、ただ悶々として何も出来ずにいたり、何かやってもうまくいかず、文句ばかり言って、気が病むばかりの自分が大嫌いだった。

当時の私は、このドラマが示唆する3億円より愛しい日常が大切だというメッセージは伝わらなかったし気づけなかった。だから内容を覚えてないんのだろう。


しかし、今の私には、とても大切なメッセージだった。割と最近まで、何か特別なことや、特別なものに憧れていた。お金も欲しいと思っていたし、私だからできる事も見つけたかった。自分を特別だと思いたかったり、自分の価値を知りたかったし、自分を認めてもらいたかった。キラキラしたものに憧れ続けた20年だった。


でも、去年くらいからか、何かそういうのがパッタリ無くなった。コロナで自分の今までの生活をリセットされて、今までの無理が必要なくなり、自分の出来ることや好きなことをしようと思ったり、お金を欲しがったり、人から何かをもらうことより、自分が何ができるかを見つけるのが楽しくなってきた。


今までお店で買うものだと思ってた餡子を小豆から炊いてみたり

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コーヒーゼリーやプリン作ってみたり

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焼き鳥作ってみたり

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今日は昼ごはんを豚肉の細切れの残りと、ナスを味噌炒めして、炒り卵作って2食丼を作って

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自分でこんなにも美味しいもん作れるんや!って感動を毎日してる。


美味しく出来たからと言って、それを売り物にしようとは思わず、家族が「美味しい」と言って食べてくれるのがすごく嬉しい。


今の私は、「すいか」の早川もとこ34歳どころか、46歳独身実家住みである。文字情報だけ見たら、めちゃくちゃ冴えないし、ダサくて悲惨な人生かも知れない。20年前の私が1番嫌がり、絶対にこれだけは嫌だと思っていた姿や日常かも知れない。


だけど、何かもう、そういう他人なのか、社会なのかよくわからない価値や判断はどうでもよくて、私は今の日常に価値を感じてるし愛してる。


両親は高齢者で少しずつ体力や認知能力が低下しているので、その見守りをしながら、週5日近所の介護施設でパート働いている。


毎月の収入はそんなによくはない。でもいろいろ支払えていける。母親の体力や料理に対する意欲が落ちてるから昼食や夕食の用意をする。夕食を作れない時はひとまず買い物をしてから出勤する。それができない時もたまにある。毎日の食事を考えるのは面倒な時もある。母親が必要以上にたくさんきな粉を買ってきてめちゃくちゃ怒る時もある。職場の仕事にストレスを感じる時もある。


だけど私は、この日常を愛してる。


月々いくらで毎日美味しいご飯が届きます!というサービスのCMを見て、そりゃあ便利だし、美味しかも知れないし、栄養の偏りが無いかもしれないけど、私は不便で面倒になりながらも、手際が悪くてめちゃくちゃ時間がかかっても、失敗したり、家族から不評な日があっても、自分で料理がしたい。


自分で決めて、自分で失敗したり、悩んだり、いろいろ面倒になりながらも、そういう日常を生きたい。そういう日常が幸せだ。


だけど、今は両親が居るけど、私はひとりになった時どうなるのかなと、たまに思う。


そんな時は「すいか」の中で浅丘ルリ子が言っていた言葉を思い出そうと思う。

***

生きていくのは誰でもみんな怖いわ。一寸先は闇かも知れない。何が起こるかもわからない。永遠にあるものなんてないの。


だけど自分ですべて責任を持つという覚悟や意思があれば、人生はそんなに怖いものでもないわ。


***


一語一句すべて合って無いかもしれないけど、こんなセリフだった。


どんなことが起きても自分の人生にすべて責任をもち、今の日常を愛していれば、それが1番幸せなことかもしれない。


特別じゃないように見える日常が、本当は1番大切で1番愛おしい。


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ふと見た地面にパンジーが咲いてた。

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庭に藤の花が咲いた。


そういう小さな事を発見して喜べる日常を、私は愛し続けながら大切に守っていこう。

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