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元フリーランス/現SES営業視点で考えるフリーランスエンジニアのリアル

都内のITベンチャーでマネージャをしております、みねむーと申します。
今回は私の経験・視点で見た【フリーランスエンジニア】のリアルについて書きたいと思います。
これからフリーランスになろうと考えているあなた、既にフリーランスで活躍されているあなたが、将来について考える一助となればと考えております。

私の自己紹介noteにも記載しておりますが、私は現職で、SESエンジニアの営業/調達を行っており、日々フリーランスエンジニアの営業を受けております。また、現職に就く前はSIerにアサインされた、1人のフリーランスエンジニアでした。
私の経験・視点というのは、
【元フリーランスエンジニアとして】
【現SES営業/調達として】
のものになります。故に、あくまでも私の経験に基づいた個人の見解であること、ご理解頂ければと思います。

なお、便宜上、本記事でフリーランスエンジニアの事を【フリーランス】と呼称します。また、PM/SE/PGその他IT技術者を総じて【エンジニア】と呼称します。

フリーランス転身は計画的に。

あなたはどのような理由でフリーランスになろうと考えていますか?
また、なりましたか?
【会社に縛られたくな】【自由な働き方がしたい】と言った、アンチ・サラリーマン的思考でしょうか?それとも、夢や目標のためにフリーランスという道を選んだのでしょうか?

私は、目標もなくフリーランスに転身すべきでないと考えています。
特にアンチ・サラリーマン的思考だけでフリーランスデビューをする事はお勧めしません
詳細は後述しますが、私がフリーランスデビューをした時に感じた、「あ、これヤバいな」という感覚と、感覚が確信に変わった現職での経験から、このような考え方を持っています。

※そもそも、フリーランスSEが仕事を得るには

フリーランスが仕事を得るには、大きく分けて3通りの方法があります。前提知識として記します。

1.エージェントを介して受注する

ざっくり言えば、フリーランスの代わりに、企業にSES営業をしてくれる企業です。そのため契約形態もSES(※)となります。
実際にSIerとして、自前でエンジニアを抱え、受託開発を行っている企業もあります。

エージェント企業はマージンビジネスですので、大抵は10~20%程度のマージンをフリーランスの単価から抜いています。クリーンなエージェントならばマージン率を公表、あるいは聞けば教えてくれます。教えてくれない場合は相場以上のマージンを抜いている可能性があるので、エージェント乗り換えを考えた方が良いかもしれません。
※SES=System Engineer Service/エンジニアの労働力に対して金銭が発生する契約形態。月単位で○○万円、の形式で発注/受注額が決まります。

2.クラウドサービスサービスを使って受注する

私はフリーランス時代に「クラウドサービス」「ランサーズ」の二つに登録していました。いずれも、「発注したい人(会社)と受注したいフリーランスを引き合わせる”場”を提供する」サービスです。

フリーランスがサービスを利用する分にはお金は掛からず、受注金額を発注元(クライアント)と直接交渉するケースや、クライアントが「XXXの依頼・○○万円/月」と公示しているケースもあります。

この様なサービスでは、隙間時間を利用した、アンケート等のちょっとした小遣い稼ぎから、ECサイト開発やデザイン等の業務まで幅広く案件が扱われています。

ただ注意して頂きたいことがあります。それは【受注するまで、発注元がどのような人(企業)か分からない】ということです。Twitterを見ていても、詐欺まがいの発注者がいるとの情報もあり、騙されないだけの見識が必要です。

3.個人人脈で受注する

フリーランスは個人事業主・あるいは法人ですので、個人の人脈で営業し、受注することも可能です。仲介企業がいないため、マージンが抜かれることもありませんが、同時にトラブルが発生しないよう注意する必要があります(契約書類なども、コンプライアンスチェックをお勧めします)

フリーランスエンジニアのリアル

ここから、現職と元フリーランスの立場から感じたフリーランスのリアル(の一部)を記します。なお、私の経験上、実態がある程度分かるのは【1.エージェントを介して受注する】だけですので、主にこのケースのフリーランスについてのみ記します。

1.フリーランスとして見たフリーランスSEのリアル

私がフリーランスとしてお世話になったのは、大手のSIerでした。
私の場合は子供の保育園送迎のため、通勤時間が短い事や残業NGを条件とし、単価を度外視しました。そのため、適正価格より10~20万低い単価でアサインしました。元々、低賃金・大量採用・高離職率で知っていた企業ですから、このSIerさんの調達金額は、業界の中でも低い方になると思います。

同じフロアには何名かのフリーランス(らしき)エンジニアがアサインされ、各々のプロジェクトにアサインされていました。驚いたのは、当時35歳の私が、その中でで年少の方だったという事です。
【経験はあるけど単価を抑えたい】場合、ベテランエンジニアか、私の様に特殊な事情があるエンジニアをアサインすることになります。【経験があり、若い】エンジニアは高単価になるからです。

プロパーならば何らかの役職を与えられているであろう、40~60代のベテランフリーランスが、プロパーの新入社員さんの指示を受けて黙々とPCに向かっている様は、それまで企業勤めだった私には衝撃に感じました。

人それぞれの価値観がありますし、どのような働き方をするかは本人次第です。しかしキャリアの集大成の世代に、決して高くない単価でアサインされ、20代前半の若手に指示を受けてタスクをこなす日々を、本当に望んでいたのか?望んだ未来を描けなくなり、本来【仕事を選べる】はずのフリーランスでありながら、【選べなくなってしまった】のではないか?と考えました。

その考えは、SES営業/調達の仕事をする事で確信に変わりました。

2.SES営業/調達として見たフリーランスのリアル

私がフリーランスになる前の勤め先で、協力会社として一緒に仕事をしてくれていた会社が現職です。フリーランス時代に「助けてくれないか」と望む会社と、「現在の就労リズムを守りながら、フリーランスとしてのリスクを減らしたい」と考えていた私の目的が合致し、現職にジョインしました。

以来、クライアントへのエンジニアアサイン及び調達を仕事とし、フリーランス時代にお世話になったエージェントやその他の企業から、エンジニアの営業を日々受けています。

営業メールは一日に数十通もらいますので、
【毎日のように営業をかけられるエンジニア】
【すぐに営業が止まるエンジニア】
が分かります。なお、この背景には【営業する必要が無いエンジニア】も多くいらっしゃいます(全てのエージェントがそう、という事は無いと思いますが、私とお付き合いしているエージェントは、1人のエンジニアに対して1人~複数の営業担当が、毎日機械的に営業メールを配信してきます)

では【毎日のように営業をかけられるエンジニア】にはどんな特徴があるでしょうか?以下に、ほんの一例を記します。

(ⅰ)年齢が高く、かつレガシーな技術しか持っていない
(ⅱ)そもそも技術が全くない(未経験や、就職経験が無いケースも)
(ⅲ)未経験分野の経験を積みたがる(未経験のPythonがやりたいです、等の注文がある)
(ⅳ)コストが高い、あるいは相対的に見てキャリアに見合っていない
(ⅴ)就労条件や通勤条件のハードルが高い(「リモート希望」「週●日勤務の現場希望」「最寄駅から●分以内の現場希望」等)

このうち、(ⅲ)~(ⅴ)は比較的早い段階で営業が止まるケースが見受けられます。単価や就労条件等は、クライアントとエージェント、エージェントとフリーランスの間で、交渉がしやすいからです(希望単価を下げる、希望通勤時間+10分を飲んでもらう、フレックス対応等)

そもそも、クライアントがフリーランスの力を必要とする時は、どのようなケースでしょうか?
実はざっくり分けてしまえば、2ケースしかないと思います。

人手が足りない
◆技術が足りない(特定の技術者が不足)

そして、より多く需要があるのが後者になります。
また、技術と人格を兼ね揃えたエンジニアならば【すぐに営業が止まるエンジニア】となり、クライアントが離したがりません。
プロジェクトや担当フェーズの終了時に、次のプロジェクト、フェーズへの継続を希望されます。こうして【営業する必要が無いエンジニア】が出来上がります。
※余談ですが、SES企業のプロパーとフリーランスの明確な違いの一つとして、フリーランスはこのようなケースで「断りやすい」というメリットがあります

さて、上記の通りであれば、(ⅰ)のベテランエンジニアと(ⅱ)の未経験エンジニアには、【人手が足りない】ケースでしかアサインの見込みが無い事が分かると思います。そしてこのケースにおける単価は決して高くありません。

単純なマンパワーとして見るならば、(ⅱ)未経験エンジニアの中でも若い方に需要が生まれます。若く未経験という時点で単価が安くなるからです。未経験エンジニアも、実績を作りたいという願望があるので、(ⅰ)(ⅱ)の中でも比較的早く、営業が止まります。

ここで怖いのが、【人手が足りない】ケースでアサインされる若手エンジニアが、つまみ食いの様にロースキル案件にアサインされ続け、強みがないエンジニアになる事です。「何でもいいから実績を作る」事は、「技術力のあるエンジニア」になる道ではありません。

さて、(ⅰ)のベテランエンジニアはどうでしょうか。ベテランエンジニアが持つレガシーな技術(例:COBOL)の経験値によっては、需要があります。実際に弊社においても、COBOL技術と設計の経験を買われ、長期参画となったエンジニアがおります。

ただ、このように需要と供給がタイミングよく合致するケースは、そう頻繁にありません。結果的に彼らは単価を下げる事で仕事を得るしか道がなくります。統計上、フリーランスエンジニアの平均年収は40代後半から下がり始め、50代の平均年収は20代のそれを下回ります。

意外と多いのが、【3.個人人脈で仕事をもらう】エンジニアとしてのキャリアを積まれているベテランフリーランスです。企業勤めのキャリアを続け、ある程度のキャリアを重ねられたところで引退し、それまでに構築した個人人脈や関係企業などから仕事を受注したものの、ご縁が切れたのか、仕事が無くなったのか・・・込み入ったご事情は分かりませんが、50代を過ぎてからエージェントを使うケースを見たことがあります。

フリーランスエンジニアと言えば、【会社に搾取されることも、縛られることもなく、好きな仕事ができる、夢のあるキャリア】のイメージがあるかもしれませんが、すぐに仕事が決まり、案件にアサインできる【エージェント孝行なエンジニア】の裏には、エージェントが毎日多くのクライアントに営業をかけなくてはならない【エージェント泣かせのエンジニア】がいらっしゃるのが事実です。

自分のキャリアをエージェント任せにしてはいけない

あなたは【エージェント孝行なエンジニア】になれるでしょうか?あるいは既になっているでしょうか?もしかして、【エージェント泣かせなエンジニア】でしょうか?

ここでもうひとつ、知って欲しいのは、【エージェント孝行なエンジニア】も、いずれは【エージェント泣かせなエンジニア】になるかもしれないということです。

その要因は、例えば以下の様なものです。

①クライアントもプロパーを育てる
②IT業界の技術は数年で錆びる、新しいものに取って代わられる
③クライアントの廃業、撤退、シュリンク(縮小・要員削減)

それなりの歴史や規模があるクライアントならば、中途採用や新卒採用を行っています。それは、エージェントを含めた商流上のSIerも同様です。

自前でエンジニアが調達できるならば、わざわざ協力会社・フリーランスを調達する必要はありません。マンパワーとして需要があったエンジニアならば、プロパーエンジニアの成長と共に存在価値は低下します。

また、特定の技術を持ったエンジニアであっても、プロパーエンジニアがその技術を習得した場合や、他プロジェクトから当該技術を持つエンジニアを連れてきた場合も、プロジェクトからの退場候補になります。

あくまでもフリーランスエンジニアは、不足しているポジションを補うピンチヒッターなのです。

特定の技術と言っても、例えばSAPコンサルタントの様な、【習得のために多くの費用とプロジェクト経験を必要とするもの】でない限り、時間と共に価値が失われていきます。
何故ならば、【その技術を持つエンジニアが増える】【新しい開発言語がモダンになる】等により、技術が普遍的、非モダンになると、その技術を持つエンジニアの価値が下がるからです。
そうなると、リーダーやPMを任せるのでない限り、経験を積んだベテランより、同じ技術を持った若手に取って代わられる可能性があります。その方が単価が抑えられるからです。

「自分はクライアントとの信頼関係が厚いから大丈夫!」と思っている方も危険です。クライアントは体制変更や方針変更、退職等を含む担当者の交代等により、その”信頼関係”がゼロリセットされる可能性があるからです。

実際に、今までフリーランスがアサインされていた企業が方針変更により「調達するエンジニアに、フリーランスは禁止」というルールを作った例もあります(未来永劫に「禁止」かどうかは分かりません。時代に合わせて柔軟に変わる可能性はあります)

そして、フリーランス本人の努力や実力でどうにもできないのが、クライアント(あるいはエンドユーザや商流上のSIer)の廃業やプロジェクト撤退、要員削減による仕事のロストです。実際にエンジニアをかき集めていたスタートアップが、突然の事業縮小により大量解雇を行ったケースもあります。

また、現在(2020年5月)の新型コロナ渦のような状況下では、エンドユーザやクライアントが倒産したり、プロジェクトを中断、延期、撤退するケースもあり、要員削減やプロジェクト解散は十分にあり得ます。

考えるべきは”ネクスト”フリーランス

私は、フリーランスエンジニアにはキャリアプランが必要でであると考えています。キャリアプラン形成の専門家ではないので、以下の様なものしか思いつきませんが、参考に考えて頂ければと思います。

◆どうキャリアを終えるのか?
・・・自ら事業を起こすか?
・・・いずれかのタイミングで企業ジョインを目指すか?
・・・フリーランスのまま?

◆そのためにどういうプロセスを踏むか?
・・・営業力を鍛え、自らクライアントを獲得する力とコネを作る?
・・・複業でマルチな能力を身につける?
・・・休日や終業後の時間で自作アプリを作り、収益化を目指す?
・・・ニッチ、あるいはハイレベルな資格を取得し、長期間に渡ってぶれない自らの価値を確立する?

要するに、【何のためにフリーランスになるのか?】を明確にし、ゴール設定とそこに向かうためのプロセス形成が必要ということです。

【会社勤めが嫌だからフリーランスになる】という理由でフリーランス転身されたエンジニアは、【フリーランスになることがゴール】になってしまいます
『週4日以下で働きたい』『リモートで働きたい』も同様です。その先に何を目指すのか?空いた時間に何をするのか?がキャリアを作っていく上で大事な要素になります。

最後に

会社員であろうと、フリーランスであろうと、誰にでも【キャリアの終わり】はやってきます。

会社員であれば、会社が一定のレールを作ってくれるかもしれません。
一方で、フリーランスはそうはいきません。
状況に流されたり、感覚や興味だけで突き進むと、「選べない立場」に回っていく危険があること、頭の片隅においてフリーランスエンジニアという道を歩んで頂ければ幸いです。

1人のエンジニアとして、またエンジニアをサポートする職に就く者として、あなたが望んだとおりのキャリアを歩めることを願っています


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