フリーランスが本業とアルバイトを掛け持ちする場合の確定申告
基礎知識
フリーランスとは、会社と雇用契約を結ばずに、仕事単位で報酬を得る働き方ですが、個人と業務委託契約が難しい会社では(例えば部外者に情報システムの強い権限を与えるのは内部統制でNGとかありますよね)、アルバイト(パートタイマー)として「入社」し、雇用契約書を取り交わし、会社から労働条件通知書を受け取ることになります。
この場合、自分で確定申告する旨を前もって会社に伝え、乙欄で給与計算してもらいましょう。
乙欄なので「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は会社に提出しません。
扶養控除等申告書を提出しないと、年末調整をしない状態の源泉徴収票が会社から交付されます。これは支払調書と同じ法定調書です。
会社は、給与を受け取る従業員(正社員・アルバイト等の直雇用者)に対して源泉徴収票の発行義務があります。
源泉徴収とは、給与または報酬を支払うときに所得税を天引きすることです。所得税を源泉徴収する、という言い方をします。源泉徴収の対象となる業務(例えば原稿の執筆や講演)を生業とするフリーランスには馴染みがあると思います。
毎月の給与天引きはあくまで概算による税金の前払いなので、後で精算(年末調整)が必要になります。
会社は、源泉所得税を差し引くとき「給与所得の源泉徴収税額表」を基に税額を計算します。
扶養控除等申告書を提出した人を「甲」、提出しない人を「乙」と分類し、「甲」の人は税額表の甲欄、「乙」の人は乙欄を見て計算します。
従業員数の多い会社では、年末調整は一大イベントなわけです。
何らかの理由で、年末調整の実施日までに従業員が扶養控除等申告書を提出しなかった場合、年末調整前の源泉徴収票をその従業員に渡し、個人で確定申告してもらうことになります。
確定申告書の書き方
さて、フリーランスが、本業とアルバイトを掛け持ちする場合、確定申告書には事業所得と給与所得を分けて記入します。
事業所得とは、事業で得た収入から必要経費を引いたもので、フリーランスの所得税は事業所得を基に計算されます。
給与所得とは、給与で得た収入であり、収入金額から会社員の必要経費とみなされる給与所得控除額(最低55万円)を差し引いた金額です。
確定申告で源泉徴収票の添付は必要ありませんが、確定申告書に給与所得の数値を記入するため、会社から入手する必要があります。
源泉徴収票の数値は左から、収入(支払金額)、所得(給与所得控除後の金額)、控除(所得控除の額の合計額)、税金(源泉徴収税額)と並んでいます。所得と控除に金額が書いてあれば年末調整済みです。空欄かゼロなら年末調整されていません。
源泉徴収が行われていれば、すでに税金が支払われているということです。所得税の前払いである源泉徴収税額が天引きされているので、これを記入すると納付税額から控除できます。よく確定申告で税金が戻って来ると言いますが、戻って来る金額(還付金)の上限は源泉徴収税額です。その額を超えることはありません。
ちなみに、源泉徴収票のデータは会社が住民税の計算資料として市区町村に申告しているため、税務署でも給与所得の申告が正しいかどうか確認しています。
住民税について
住民税は前年度の所得を基に課税されるもので、納付方法には特別徴収と普通徴収があります。
特別徴収とは、会社が従業員に代わって、給与から個人住民税を差し引いて納めることです。
市区町村から「住民税の決定通知書」が会社に郵送されます。
普通徴収とは、住民税を個人が市区町村へ納めることです。
決定通知書は個人の自宅に郵送されます。
地方税法で、従業員の住民税は特別徴収で給与から天引きすることが決まっているため、会社は個人の住民税額を知る必要があるわけです。
毎年5月~6月に配布される「住民税の決定通知書」には、
前年(1月~12月)の収入額・所得控除額
住民税の計算額
6月~翌年5月までの住民税額
が記載されています。以前は紙で送付されていたのですが、今は会社用に限りすべての市区町村で電子データがeLTAXで送信されています。(CSV形式なので少し加工すれば給与計算ソフトに取り込めます)
よく、会社員が副業をすると会社にバレると言いますが、これは決定通知書が会社に届くと、記載の住民税額が給与を基にした住民税より多すぎたり少なすぎることで知られるようです。
フリーランスは自分で確定申告するので、確定申告書の「住民税に関する事項」欄で「自分で納付」を選択します。
これで事業所得に係る住民税分のみが普通徴収として納付できます。
これを忘れると決定通知書が会社に送付されてしまいます。アルバイト先も大事な取引先のひとつと考え、ご迷惑をお掛けしないよう注意しましょう。