御守マグロという存在と一人の青年のMV出演についての感想

 御守マグロというオタク友達がいる。
 京都発6人組アイドルグループきのホ。(正式名称:きのうまではポジティブでした!)というアイドルグループを一緒に推しているオタク友達だ。
 初めての出会いは今でも覚えている。きのホ。のライブ(2021 11/2 京都MUSEでのハンサムケンヤとのツーマン)で偶然にも横並びで観ていたことがきっかけだった。
 俺は別のポトモダチ(きのホ。のオタクの通称)と一緒に喋ったりランチェキ合戦(同じ枚数のランチェキを購入し、見せ合うだけの行為)をしていた。隣にいたマグロは騒がしい俺達の行動を笑顔で見ていた。
 青いシャツを着て胸ポケット辺りには推しである御守ミコのバッジをつけていた。俺もミコ推しなので話しかけるかどうか迷ったが、何故か人見知りが発動して話せなかった。
 ライブが始まり、キンブレを取り出し、青に光らせた彼。あのときはまだキンブレをしっかり振っていた気がする。振っているときもこちらの邪魔にならぬよう、気を使ってくれていた青年だった。もちろん今でもとても気を使ってくれる青年だ。
 特典会では「ミコちゃんのランチェキが出ない」とミコさんに悔しそうに言っていたのが聞こえきた。本当に悔しそうだった。
 特典会も終わり、のんびり帰りながら、先程の青年と喋ってみたいなーという事が浮かんだのでSNSで探した。呟いてた内容的に彼だろうという当てをつけ、リプを送ったことから始まり、仲良くなっていった。今では何故か保護者の立場になった(?)

 そんなマグロが、忘れらんねえよのMVに出演したことについて、感じたことを書いてみようかなと思った。


 まず、御守マグロを知っている保護者(?)としてMVを観てみた。うん、いつものマグロだ。御守ミコ(きのホ。のメンバー。担当色は保冷剤ブルーである)をひたすらに、純粋に、語り続け、推しているマグロだ。

マグロの言葉というのは口から発するものではなく、全身を使って表現している節がある。この右手の先には永遠か宇宙が広がっているのだろうなと想像する。


 マグロがミコさんについて、語っているシーンはいつものマグロそのものだった。Twitterのスペース機能で話すマグロであったり、実際に会って喋るマグロそのもの。

 御守ミコについて語るとき、マグロはいつも独特である。彼の中にある芸術性と哲学性が混じり合った世界観の言葉をベースにしている。ある時は詩人であったり、ある時は哲学論者になる。もちろん一人の純粋な青年にもなるし、一人の純粋なオタクにもなる。独特でありながらも、マグロの言葉というのはとても真っ直ぐ純粋に響いてくる。簡単に言えば「何言ってるかわからんけど、とにかく推しが大好きっていう想いだけは伝わってくる」だろうか。複雑で不思議なのに、聞けば聞くほど、話せば話すほど、彼の話に耳を傾けたくなる。それほどまでに御守ミコに対しての気持ちに打算というものが一切ない。アイラブ言うの歌詞で言うところの「あなたが好きだと言うのさ」という言葉に詰まっている思いのように。

 言葉だけでは伝えないのが、マグロという人物だ。彼の中にある大きな大きな気持ちは瞬時に表面へ表われ、体の動きとして、感情として生まれる。
 あるときの特典会、ミコさんとチェキを撮り終えたマグロは踊り始めた。
「何で踊ってるん?」と聞いたところ「ミコちゃんとチェキを撮れてホクホクした気持ちを表現してるんです」とのこと。これも「あなたが好きだ」という言葉が彼の体から表現されていたのかもしれない。
 傍から見たら、急に踊りだす奴だが、マグロを知っている人間からすると、「あー、感情が溢れてるんだな」とにこやかに眺めてしまう。異常なんやけどね。その光景は傍から見たら、異常なんやけどね。

 MVの中でマグロが泣いているシーンがある。彼は特段涙もろい訳ではない。むしろ自分のことを「血も涙もない人間なのでぇ」とか言ったりする。そんなマグロが涙を零す。きのホ。の事や御守ミコの事を考えると涙を零す。とてもとても純粋な涙を零す。これも「あなたが好きだ」という気持ちが外に溢れたことによるものなのだろう。

伝えたい想いがありすぎて言葉が追いつかないから、涙が流れるんだろうな。


最初の頃は「えっ、泣いてる!?」ってなったこともあったが、今ではマグロの涙はきのホ。や御守ミコを語る上には欠かせないセットメニューみたいなものになっている。
 それどころかきのホ。のメンバーにも知られているほど(ライブ中に泣く彼の声がステージ上のメンバーにも届いたりする)だ。
 そう、様々な人に彼の涙は浸透している。

 こんな風に、推しへの大きな想いを持ち続けているマグロ。
 彼は“推し”という存在を「信じ続ける者」だ。御守ミコがいなければ、成り立たなかった人間だ。
 着色も脚色もされてない天然マグロという存在が御守ミコという世界で泳ぎ続けてるのだ。

 マグロが放つ、純度の高い言葉。御守ミコというアイドルへの想い。具体的な事を言えば、「僕がミコちゃんになるしかないんですよねぇ」って言葉だ。聞けば、笑ってしまうような言葉かもしれないけれど、俺はその先の深いところまで聞いてみたい。多分、いや、絶対長くなるけど、深くておもしろそうな話が聞ける。途中で「何言ってるのかわからへんくなったぁ〜」ってなる確率もあるけどね!!結構高いけどね!!
 そんなマグロの言葉を聞いていると、マグロの純度にあてられることがしばしばある。
 自分の中から消えた“何か”に遭遇するような、感覚。
 きっと、マグロというオタクは「ミコちゃんになる」という言葉を信じているから。御守ミコになることによって、未来のミコさんに繋いでいくような。多分、そんな世界を信じてる。だって、永遠だからね。
 俺はマグロの感じてる永遠を信じてる。俺自身の中に永遠はないと知っていても。マグロの中にある永遠は呼吸をするように感じられるから。

 そんなマグロの知られざる一面も見れた。

 自転車で京都MUSEまで向かうシーンだ。とても凛々しくて、いつも見せる顔とは違う表情が垣間見えた。
「へぇ〜、そんな表情するときあるんや」と。何かかっこよくて腹立って笑えてきた。
 一人の青年が揺るぎない気持ちで目指すべき場所に向かうような表情。
「ミコちゃんに会える」というただ1つの気持ちが彼の内から溢れ出ているんやろうね。

 MVで鳥肌が立つ場面があった。「落ちない飛行機」のチェキと共に「世界を変えるよ」という歌詞が流れ込んでくる場面。ここは何度見ても、歌詞とマグロのチェキがリンクして、鳥肌が立つ。


落ちない飛行機で彼女の不安を置いてきぼりにするくらいの高みに連れて行ってあげてほしいな。



 知っている側面も知らない側面も映像として、観られるのはとても嬉しい。自分の子供がアーティストのMVに出るということは、こんなに心が弾んで、とても嬉しいことなんだなと疑似体験させてもらったほどに。うん、俺は何を書いてるんだろうか?いや、でも保護者(?)として、心からそう思えるからね。






 けれど、だ。それはあくまでも御守マグロという存在を知っている立場の者から見た映像でしかなく、今のままでは見えない部分があるのではないか。そう考え出したら、個人的な感情や余分な色眼鏡を外したくなった。知っている誰かが出演したということはとても嬉しいことなんだけど、大切で必要なものを消してしまうから。むしろ、知っているということを頭の外に追い出さなければこのMVにも曲にも歌詞にも、御守マグロという中に存在する一人の青年にも失礼な気がするし、このままでは「アイラブ言う」という楽曲はマグロが出ていた曲になってしまう。
 そうなってしまうのは嫌だったので、頭の中からマグロという存在を消して、曲と映像だけに集中することにした。 
 
 一人の人間として一人のオタクとして、一人の青年に戻ってみて。



 
 
 曲を聴いて歌詞を読んでいると、一人の不器用な青年が愛を叫ぶイメージが浮かんだ。自信のない捻くれている一人の青年。不器用だからこそ、世界を変えられると信じながら、何も変えられない世界の中で、あなたが好きだと叫び続けるそんな彼の背中が浮かんだ。

これっぽっちも愛とか知らないよ あなたが好きだ

 ここの歌詞がとても好きだ。自分の中に明確な「愛」というものがあるのかわからないから。
 でも好きだという気持ちはわかる気がする。
「愛」という言葉で簡単に処理できない言葉。感情や理性で制御できない、心から溢れる「好きだ」という純粋な思い。
「言う」ことによって、内から溢れる思いが伝えられるように感じれて。


 自分に重ねてみると、初めての片思い、初めて誰かと思い合えた日の感覚が蘇った。
 あなたが好きだと言えることの理想と現実。
 理想はとてもとてもキレイで、それこそ恋愛小説のような奇跡が待ちわびていて、想えることの喜びに満ち溢れる色鮮やかな世界。
 現実は何も変えられない自分と、情けないほどぐちゃぐちゃになった感情が塊となって転がる世界。
 この2つの世界が入り混じった中で、ただ一つ確かな「好きだ」という想いを抱えながら生きていた日々の事。

 初めて推すということを知った日。自分だけの世界から見える“推し”という存在のこと。多数の世界から見える中に存在するたった一人の「あなた」を推すということを知った日。不器用に純粋に好きだと叫んだ。あなたにとっての何かになりたいわけじゃなくて、あなたがかけがえのない時間を充実して過ごせるように。
 他人から見たら「何を言ってんだか」と思われるようなことでも「あなたが好きだ」というたった1つの思いで生きられる日々。
 好きだという気持ちは持ち続けても変化して、形を変える。
 そんな日々の中でも「あなたが好きだ」と思える心を更新させていきたい。芯にあるただ1つの思いは変わらないから。




 MVは、推しについて語る一人一人のオタク達の映像から始まる。それぞれがそれぞれの理由で好きな気持ちを表現している。それぞれの「好き」があって、本当に面白い。キラキラしている人達の話を聞いてみたいななんて思えるほど。


 場面は切り替わり、一人の青年が映し出される。彼の語りから、曲が始まる。

 きのホ。のMVを眺めながらニコニコする彼は本当に幸せそうだ。本当に“推し”が好きなんだとわかる笑顔。


  きのホ。の楽曲である「相合傘」を踊る青年。その笑顔は恥ずかしそうでありながらも、とてもキラキラとしているのが印象的だ。


 間奏の瞬間に映る彼の所有する本と推しバッジ。彼の人間性を表現しているようだった。


 一瞬だけ映る彼の表情は「本当は奇跡が起きると思っている」という歌詞が共鳴したように映されていた。




 チェキを眺める彼は、1つ1つの思い出を反芻するかのように推しについて語り続け、1枚のチェキと共にサビに入る。

 忘れらんねえよの柴田さんが歌うシーン。愛を叫ぶように歌う柴田さんの姿はとても人間臭くて美しくかっこよかった。
 
 画面に向かって「アイラブ言う」を伝える人達の姿。画面越しの推しに伝える表情と感情は千差万別で、一つとして同じ表現がなくて、本当に微笑ましかった。

「なけなしの勇気をかき集めて」の歌詞と共に自転車を走らせる青年。向かうべきところに向かっていくような姿はとても勇ましかったな。


 

 サビ終わりに差し込まれるアーティスト名と曲名。途中から差し込まれるのって、とてもかっこよいし、痺れる。文字が斜めになってるのもかっこいいよね。


泣いている泣いている泣いている
あなたを救うだけの力と勇気が欲しい
お金とか名誉とか人気者の
ツーショットとかいらない

 流れる歌詞と映される青年の一コマ一コマ。
「愛してる〜奇跡が起きると思っている」で映されていた、純粋さに満ち溢れた彼とは違う表情が垣間見えた。


 ヒーローがヒロインを救いに行くかのように見える。

 この世界であなたがそっと微笑んでられるように、向かうべき場所へ進む彼の背中と柴田さんの歌う姿は、観ているこちらの心を徐々に熱くしていってくれる。

 静かに、でも確かに、熱を帯びた気持ちが最高潮に達するように「あなたを苦しめるすべてをぶっ壊したい」と。

 何もできないとしても。

 たった一人のあなたに会いに行く為、青年は階段を登っていく。


 例え、世界が変えられないとしても。

 たった一人のあなたの為に。

 伝え続けていく。


 これっぽっちの愛がわからなくても。

 あなたが好きだという想いを。



 たった一言の「アイラブ言う」に込めて。



 画面は切り替わり、一人一人の「アイラブ言う」が流れ込んでくる。
 先程も述べたように本当に一人一人の気持ちと曲が合わさって、一つ一つの心が画面から伝わってきて素敵だった。
 本当に色々な気持ちで推してるんだよなって。




 


 好きだと叫ぶ心は、一人一人の気持ちは、一つとして同じ形はない。愛という言葉で簡単に説明できない一人一人のたったひとつの特別な思いを。



 自分だけのアイ+ラブ+言う=あなたが好きだ(   )



 空白の中に込められた自分だけの思いを伝えたい。自分だけの「アイラブ言う」を叫び続けたい。
 言葉にすれば本当に短い言葉だけど、その言葉を放った瞬間に解き放たれている思いというものは何にも変えられないほどの美しさを伴っているから。

 推しであっても、友達であっても、家族であっても、恋人であっても。
 好きだという言葉に込められた想い。自分にとっての好きな人、存在だけに伝えられる言葉。

 これっぽちの愛なんて知らなくても、好きだって伝えられることは純粋な想いだから。
 だから、これからも、自分だけの「アイラブ言う」を。



 自分自身が想う人に。

 たった一人のあなたと、たった一人の私の為に。






 ってな事を感じさせてもらえた、とても素敵な曲とMVでした。
   



 




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