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約300名が参加した、認知科学コーチングイベント「unselfish」レポート

「周囲を気にして自分の本音が分からなくなってきた」
「目標達成のための努力が続かない」
「経営計画を作ったが会社全体で本気になれない」

このような課題に対して、認知科学に基づいたコーチングが答えを出します。

2021年1月17日に、マインドセットコーチングアカデミーにより開催され、総勢300名近くの方が参加したイベント「unselfish」。

今回はその第一部、コーチングアカデミー校長、李英俊先生の認知科学コーチングに関するセミナーレポートを通じて、

・ゴールは発見するものじゃなくて作るものだ
・”未来へのリバウンド”を起こせば、現在が変わる
・「フィードフォワード」によってクリエイティビティが生まれる

といった認知科学コーチングの原則をお伝えしていきます。


いま、コーチングを学ぶ理由

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SDGsで「8.働きがいも経済成長も」が掲げられる中で、経済成長と同様に働きがいの実現も難しい。

会社組織の中で「働きがい」を求めたときに、「良いマネージャーであろう」「予算を達成しよう」など、人が褒めてくれることをあてにしている状態があります。

しかし、現在、会社は「働きがい」について答えを用意していない。

本来であれば、「自分の人生自分で何がしたいのか」を考え、職業機能を定義して、組織に所属するという順番だったはず。

しかし、「仕事」と「収入」がべったりとくっついているからこそ、「しなければならないこと(have to)」にまみれています。

会社として生きがい、成長をどれだけ提供するのか。

そのような問題を打破できる力がこのコーチングにあると思っています。

マインドは見たいものしか見ない

突然ですが、富士山を想像して絵に書いてみてください。

・・・

書けましたかね?
では、実際の富士山をみてみましょう。

写真はこちらです。

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もしかしたら、皆さんが書いた富士山は実際の富士山より標高が高いかもしれません。

おそらく、僕らのマインドの中では富士山は「富嶽三十六景」なんですよ。

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また、もう一つ実験をしてみましょう。

皆さん片目をつぶってみてください。

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そうすると鼻が見えますよね?

でも、両目を開けてみてください。
そうすると、鼻が見えなくなりませんか?

このように、人間は物事をありのままに見ているわけではなくて、
普段意識していない部分は盲点になってしまうのです。

心の世界にもこれがあり、これを認知科学的にスコトーマと呼ばれています。


直感的な思考が、無意識的に世界を決めてしまう


次にこの図を見てください。

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2本の直線が割り箸みたいに固まっています。

ここに矢印をつけるとどっちかが長く見えるでしょうか。

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何回見ても下が長く見えませんか?

もともと、線の長さは同じだったはず。

どう見ても下が長く見えるというのは脳のメカニズムなんです。

このように直感的な思考が、無意識的に世界を決めてしまう、認知の歪みがあるんです。


「共感、傾聴」ではイノベーションが起こせない

新しいことをする前に、間違っていることを抜く。アクセル踏んでるつもりが、ブレーキを同時に踏んでしまっていることに気づいたほうがうまくいきます。

コーチはクライアントの現在の物事の見方に共感してしまうと、それが明日も維持されてしまうので、創造的な脳のパートにアクセスができない。

共感・傾聴はカウンセリングのテクニックであって、イノベーションのテクニックではありません。

新しく創造的なビジネスをやる、人生を広げ行きたい人の現状に共感、傾聴をしたとしても、物事の見方自体がアップデートされず、新しいパラダイムに書き換えたほうが、クライアントが成し遂げたい未来に近づきます。


感情は書き換えられる

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もうひとつ、感情を書き換えるワークをやってみたいと思います。

このワークの目的は、マインドの中の情報操作をして遊ぶことで、我々の内部処理が変わってく。それによって、まだ目の前にない未来について、まるであるかのように勘違いさせられるという経験をすることです。

まず、ネガティブな記憶を頭の中で、映像で出してみてください。

そして、その映像を暗く、小さくして黒いゴマ粒くらいにしてください。

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そして、その黒いゴマ粒をすごく体から遠いところに押しやってほしい。

今度は頭の頭頂部あたりに、人生で素晴らしい、喜んだ記憶を映像で思い浮かべてください。

子供が生まれたときや、大学受験の合格などなんでも良い。その記憶の映像を限界まで大きくしてほしい。少なく皆さんの部屋のキャパよりも大きくしてほしい。

その喜ばしい記憶を「元気玉」のようにして、先ほどの黒いゴマ粒を消滅させる感じで、喜びの記憶の魂を大きくしてみてください。

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そしてゴマ粒が消滅したら目を開けて帰ってくる。

うまくいった人は、脳内で何が起きたのでしょうか

まず、最初に考えたネガティブな記憶を思い出してください。2つの反応が一般的にあるんですけれども、

①ネガティブ記憶が思い出せない
②記憶はあるけど感情がついてこなくなった

というものです。

嫌な記憶Xと、嬉しい記憶Yに現実的な因果関係が見られないですね。

でも、頭の中で映像で見た瞬間に、目を見開いた現実の認知が変わっていると言うのは非常に面白くないですか?

これは例えば、「オリンピック選手が金メダル取った時にの未来をありありとイメージする」というビジュアライゼーションに使うことかができます。

我々の認識してる空間と、目をつぶった妄想空間が相互に関係をさせられるということは、脳はイメージと現実の区別がついていないと言えます。


「人が変わる」とは「情報刺激の優先順位が変わる」ということ

感覚→知覚→認知→行動という内部処理プロセスを「自我の重要性関数」として取扱っていくことをコーチングと言います。

認知科学と言うのは関数主義であり、我々の心の処理は関数に置き換えられるという考え方をします。

どういうことかというと、入力と出力の間にあるものは全部評価をしてるんです。

皆さんびアメリカと中国と日本、どれが大事でしょうかって聞くと、多くの方が日本人だから日本ですと答える。

中国に聞けば中国と答えるし、アメリカ人に聞けばアメリカと答える。アメリカ人の中でも日本が大好きな人は日本という。

要するに、人間は世界にあるありとあらゆる情報刺激の優先順位をつけているんです。

ほとんどの優先順位は社会の価値尺度で、

「偏差値高いやつはえらい」
「偏差値低い私はダメ」

みたいな感じになってしまう。

つまり、他人が作った尺度を採用してしまっているので、自由が奪われてしまっているんです。

知識がないものは盲点(スコトーマ)になってしまうので評価できないんです。

人が変わるというの、この情報刺激の優先順位が変わるということ。住む場所を変えたら即座に人が変わるわけではないんです。

「ゴールがない」ことは心のセルフハンディキャップである

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身体に障害がある方のことを「ハンデキャップがある」と言いますが、心のセルフハンディキャップもあるんです。

心のセルフハンディキャップとは「ゴールが設定されていない」ということなんです。

社会人が「今期の目標設定」と呼んでいるもの、

「今年TOEICのスコアあげる」

というのはゴールではない。

我々人間は今ここにないものを生み出すことができる脳みそを持っています。

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既存のものからゴールを設定すると、自己はそれを超えることはできせん。ゴールは自らが創造するものなのです。

なので、

「私のゴールが見えません」
「私は将来何やっていけばいいかわかりません」

という方に、まず分かっていただきたいのは、

「ゴールは発見するものじゃなくて作るものだ」

ということですね。

仕事は探すものではなく、仕事は作るもの。

ゴールも同じで、ゴールは探すものじゃなくて作るものなんです。

「決めて動くだけ」という単純なことが理解できないと、パラダイムシフトできません。

人間は、今ここにないものを生み出す能力がある。説明がつかないものにリアリティーを認めてしまえると言う脳の処理ができるんです。

一方、現在の延長線上にないものゴールとして設定できなければ、セルフハンディキャップなんです。

なぜなら、人間が本来持ってる創造的な脳の機能を使わずに死ぬからです。

努力すればするほど、現状から出られない

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ゴールがなければ、我々は現状維持がゴールになっているんです。

居心地が良い場所のことを「コンフォートゾーン」と言い、「ホメオスタシス(恒常性)」によってそこにとどまろうとします。

「ホメオスタシス」とは、例えば40度の灼熱の太陽の下や、マイナス30度の部屋に行っても、体温を一定に保とうとする働きのことです。

つまり私たちは外部からどんな刺激があっても、平熱を守ろうと体が一生懸命調整する機能があるんです。

ホメオスタシスはマインドにも働き、ゴールが設定されていない人にとって、コンフォートゾーンを維持することがゴールになります。

なので、ちょろっと目標設定をしたところで、ホメオスタシスのフィードバックがかかり、現状に戻されてしまいます。

例えば、ダイエットの後のリバウンドにもホメオスタシスのフィードバックがかかっており、ちょっとした努力だと抜けれきれません。

現状認識している世界以外の情報全てがスコトーマになるからです。

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この状態では、努力しても報われず、突破口となる情報にもアクセスができません。


実現手段のひらめきを起こす脳の機能とは


ゴールを設定した後に、実現手段を脳が見せてくれる仕組みのことをRASと言います。
RASとは情報を取捨選択する脳の機能のことで、ゴール設定により発火します。

例えば赤ちゃんが生まれたとき、街でやたら赤ん坊が目に飛び込んできた経験はありませんか?

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これは、赤ちゃんの人数が増えたわけじゃなく、自分の認識(RAS)が赤ちゃんを見せているんです。

「親になる」というゴールがあるからこそ、赤ちゃんが目に入ってくる。
これは、その人にとって内部処理の重要性が変わったということです。

逆に言うと、ゴール設定をしないと内部処理の重要性を変えることはできません。
現在の延長線上でゴールを設定しても、それは現在の認識の中でしか動かないので、新しい情報が目に飛び込んでくることはありません。

だからこそ、ゴール設定によって実現手段が見えたとき、人生にはすべてリソースがそろっていたことが分かります。

"未来へのリバウンド"を起こすと現在が変わる

「現状の外側」にゴールを設定したことにより、創造的な脳の働きが起きる。実はこれはホメオスタシスによるものなんです。

これは革命的な脳の使い方なんです。

まず、この図を見てください。

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※S.Q(ステータスクオ)=現状

この図のように真っすぐにゴールに向かいたいというのが人間の欲求ですよね?しかし、そうは簡単にいかない。

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このように、リバウンドが待っているんです。

そうすると、そこで終わってしまう。

なぜリバウンドが起きるのか。それは、未来に向かうために「外圧」を使っているからです。

例えば、家族のため、会社の予算達成のため、マネージャーの責任、やりたい・やりたくない関係なく「仕事だからやらなきゃ」というものはすべて外圧なんです。

つまり、行動のドライビングフォースが外にあるものは、すべて外圧。

他人の評価を気にして、欲求に素直になれない状態。それを「have to」と言っています。

現在を打破したくて、誰かに評価されるために頑張っても、リバウンドで元に戻ってくるということなんです。

例えば、勉強が得意じゃないスポーツの天才がいたとして、偏差値という価値尺度の中で劣等感を感じていて、努力して勉強をしたとしても、現状に戻されてしまう。
これも外圧がかかっているからですね。

実はこれを打破するルートがあるんです。

それが、ゴールに対してホメオスタシスをかけるというもの。

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ゴール側に人格をアップデートしていけば、この人格を維持しようとホメオスタシスが働く。そうすると、ゴール側が現在を書き換えてしまう。

つまり、未来にリバウンドしようと、現在がひっぱりあげられていく。これが最強なんです。

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これをコーチングと言います。

ゴールを達成するために、現在から未来に外圧を使っていくのは大きなストレスがかかる。

そうではなく、ゴール側に立ち、ゴール側から現在を見下ろす。そうすると、現在の延長線上にゴールがないのが分かるから、現在のリソースをどのように最適化し直すべきかが分かるんです。

変革しなくても達成できる未来=現状

現状とは、「現在の状態のまま行けば十分に起こりうると予測される未来」のことです。

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例えば、事業計画を立てたとして、現状の組織能力とビジネスモデルが変わらないまま、予算達成することは「現状」なのです。

現状の外というのは、バリューチェーンやビジネスモデルが変革できないと達成できないこと、つまりイノベーションなんです。

未来というと、明日以降のことを思いがちだが、認知科学的には内部表現がアップデートされていない時間軸のことは現状なんです。

SMART(目標を明確にする手法)な目標設定は全部現状になってしまうし、現状維持にまみれている人たちに共感傾聴すればするほど、現状維持が強固になり、未来が見れなくなるんです。そうするとイノベーションが起きない。


本音の力を開放する

現状の外側にゴールを置くときに、ものすごく難しいことがひとつあるんです。

それは、「本音が分からない」というもの。

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本音の力が一番難しいんです。

「良いお母さん」「良い職業人」であることが評価される中で、「それらをぶち壊してまでやりたいことってなんですか?」と聞かれたときにわからないですよね?

他人の期待に応えることが行動のドライビングフォースになってしまっている。それは外圧なんです。

本音の力(want to)とは、自分の親や家族がどう思おうが、これだけはやらしてくれというもの。大事な人たちを怒らせてもやるっていうこと。

「嫁にバレずに勝手に15万円のゴルフクラブ買っちゃった」という時ってwant toに生きてるんですね。

「仕事でそんな自由にやるのはプロ失格」と怒られかねないけれども、それで仕事をするっていうのがwant to。

そうじゃないと現状の外側のゴール設定ができない。

だからこそ、人間の根源欲求で設定することが大切。それが何なのかを知るのは難しい。

我々はかなりhave toにまみれている。コンプレックスや社会的な理想主義、責任意識もhave to。

・褒められなくてもやること
・仕事の報酬は仕事と思えること
・子育てについて責任感を外して好奇心だけでやりたいこと

こういうところにwant toがあります。

フィードフォワードとフィードバック

コーチングスキルの中でパワフルな技術に、「フィードフォワード」があります。

フィードバックはやられてきた方が多いと思いますが、180度反対の概念です。

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両方とも、目的は未来を改善するもの。

でも、出発点が違い、フィードフォワードは未来から見る、フィードバックは過去から見るのです。
フィードフォワードは、現状の外側のゴールに対して臨場感を高めるための、未来の記憶作りなんです。

妄想空間がリアルに思えるように書き換えるということ。

逆にフィードバックは失敗の追体験です。過去の記憶を反省する。

脳内に何が起きているかというと、フィードフォワードでは前頭前野の活動が活性化してドーパミンが出て、恐怖心が抑えられるんです。

フィードバックは大脳辺縁系が活性化するので、前頭前野の処理が抑えられ、ノルアドレナリンが出て、クリエイティビティがなくなってしまうんです。

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当事者の心理からすると、「クリエイティブな発想」か「思考の抑制」かに分かれてしまうんです。

クリエイティビティが発動する「フィードフォワード」の技術

まず、気を付けなければならないのは「最近どうですか?」という質問。上司が部下の仕事の状況を把握してサポートする際によくやる質問だと思います。

ダメな質問例を見てください。

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そうすると部下は現状を話し始めてしまう。そうすると、「これからどうしていきたいか?」と聞いたとしても、脳が「辛いものから脱却したい」というモードに入り、辛い記憶の臨場感が上がります。もちろん、現状の外にはいけません。

人生をよくする一言「これからどうしていきたいですか?」

そうではなく、「これからどうしたいか?」を冒頭に持ってくることがフィードフォワードにおいては重要です。

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例えば、サッカーをやっている子供に対して

「1.これからどうしたい?」

と聞くと、「プロになりたい」と未来の話がでてくるかもしれない。

そうすると次に、

「2.具体的にやってみてることはある?」

と質問すると、練習量を増やすなど、子供なりのアイデアを教えてくれるかもしれない。

次に、

「3.プロのサッカー選手になったら、次の展開はどういうことがある?」

と質問する。ゴールが達成してしまったことにするんですね。

実際、企業のコーポレートゴールの設定もこれでやるんです。

「売上を5年で15倍にして、シェアナンバーワンになる」というゴールがあったときに、達成した次の展開はどうするかを聞くんです。

そうすると、そのゴールの意味がわかって、予算達成をするという数字の目的が本当に分かる。

最後に、

「4. さらに多くの人を巻き込んだり、責任を引き受けられるとしたら、どんなことありますか?」

という質問をする。

例えば、業界トップを取って次の展開に行ったあと、さらに多くの人たちを顧客するならどんなことが考えられるか?ということですね。

そうすると未来成分と抽象度が上がり、「自社のサービスを通じて世界レベルで世の中を良くする」という発想がうまれるなど、頭が「パカッ」と開いていきます。

そこまで行くと現状の外にいきます。なぜなら、今の会社のビジネスシステムだとそこまでたどりつかないからです。

ゴール側から見て話をするからこそゴールにリアリティーを持って、現在の何を維持して捨てるべきかが分かるというのが、フィードフォワード。

フィードバックはステータスクオ強固にするものなので、コンフォートゾーンの中で仕事を楽しくするためにフィードバックが必要。

しかし、新しい未来を考えることを意思として持った人に対してやるときはフィードフォワードが必要なんです。

フィードフォワードにしか打ち手がない

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現在の世の中はフィードフォワードしか打つ手なしだと思っています。なぜならば勝ち筋が見えなくなっているし、コロナによって全員社会人1年目になっているからです。

例えば、フィールドセールスを15年間やっていたとしても、オンライン化されると0ベースになるから誰にもわからない。

フィードフォワード的な脳の使い方によって、チャンスがどこにあるかが立体的に見えていくんです。

そのような人たちを増やすために、コーチとしての社会的機能が広がっていけばいいなと思っています。

まとめ

不確実性や複雑性が高まり、一年先でさえ予測が困難な時代になっています。だからこそ、本音の力を引き出し、want toの力で現状の外側にチャレンジし続けることが、重要になっていきます。

そのための「羅針盤」として、認知科学コーチングの価値がさらに高まっていくのではないでしょうか。




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