見出し画像

種を植えて、信頼し、土壌を作って、栄養を与えること

International Mindfulness Center Japan
2021/06/17 23:43
MBSR講師養成第1期受講者で、大学教員の山田裕子(臨床心理士、公認心理師)さんにお話を伺いました。

インタビュアー:宮本賢也

1.カール・ロジャーズとの出会いにより心理の世界へ

インタビュアー
いまはどのようなお仕事をされているかお伺いできますか。

山田さん:
大学教員で、授業も教えながら、メインは学生相談室での業務を行っています。学生の心理的な相談、教職員へのコンサルテーション(学生に関する相談)、学生に関するご家族からの相談への対応などです。また、教育の一環として、健康な学生も含めた全ての学生の心理教育や予防・開発的な取り組みにも携わっています。

インタビュアー:
一貫して心理職としてキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

山田さん:
実は大学では国際経済を学んでいました。その頃は世の中の景気もよく、よい大学に行ってよい会社に就職するのがよい、という価値観の時代でした。それが在学中にバブルが弾けて状況が変わり、就職活動も様変わりして、自分が本当にやりたいことは何なのだろうと思うようになりました。

結局、出版社で学習教材を購入した生徒さんを電話とFAXを使って学習指導するという通信制の個別指導塾の先生のような仕事に就きました。そういう中で、不登校の子供さんと関わる機会もあり、心理の専門的なことはまだ知らないままでしたので、その出会いをきっかけに心理関係の本を読んで学び始めました。

その頃、カール・ロジャーズの名前を知りました。カウンセリングの大家で、その人の本を読んだ時に衝撃を受けました。もともと教育には興味があったのですが、日本の学校の雰囲気にあまり馴染めなかったので、教育に関わるということは考えていませんでした。ところが、カール・ロジャーズの本を読んだ時に、人の成長に関わることについて大きく共感し、こういう教育であれば携わりたいと思うようになったのです。

そこから、アメリカの大学でカウンセリングの修士課程を修了して日本に帰国し、教育領域でカウンセラーとして働き始めました。最初は教育相談員やスクールカウンセラーとして小中高校生やその保護者の相談業務などを行っていました。その後、大学に移って10年ほどになります。

2.MBSRがカウンセラーとしての理解を助けてくれた

インタビュアー:
マインドフルネスやMBSRとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

山田さん:
認知行動療法などを学ぶ過程で、マインドフルネスというものについては知っていました。徐々に自分の仕事に取り入れ始めたのが2017年ごろのことですが、まだその頃は参考にする程度でした。その当時は、マインドフルネスのプログラムがまだ治療的な構造に見えており、今思うと中途半端な関わりだったように思います。

効果があるらしいという話は聞いていましたし、学生と一緒にできたらいいな、というのでワークショップに参加して、学んでいました。そのうち、これはしっかり体験してみようと8週間のMBSRコースに参加しました。

それが大きな変換点でした。

先程カール・ロジャーズに衝撃を受けたと言いましたが、私にとってMBSRは、そのカール・ロジャーズが提唱していた人間中心的な考え方や、受ける人の力を信じてその成長を促進させるような援助的関係を作り出すカウンセラーとしての態度というようなもの、それらを体験的に理解する助けになっています

それまでカール・ロジャーズの言う概念を私なりに理解をしていたのですが、それを実際にやるのはどうしたらよいのだろうか、というところが自分の中で明確になっていませんでした。これが、MBSRのコースを通じて、自分なりに感じられるようになったのが一番大きなことです。

自分の存在自体が人に影響するといったような、技術面というよりも、自分のあり方とか自分の態度の重要性、それをどう培っていくかということ、それらがつながったように感じました。

それまで、様々な心理療法を学んでカウンセリングに取り入れていましたが、自分にとってはロジャーズのクライエント中心療法が底流にあり、MBSRで学んだ自分自身で内側を探索していき、あるがままに気づき、それを受容していくというような態度が、そことつながったように感じています。

インタビュアー:
今おっしゃった話しは、援助者としてでしょうか、援助される側のことでしょうか。

山田さん:
両方だと思います。ロジャーズが人の成長を促進するような雰囲気を出現させるために重要な条件としてあげているものの一つに、「一致」という態度があります。援助者自身が体験している事柄や感覚を意識でき、その体験に気づきながら関係の中にいることができる、そして、適切ならばその体験を相手に伝えること等を意識的に選択して対応していけるといったあり方で、自分が矛盾なく自分自身であることです。それがマインドフルネスと共通していると感じました。

自分を磨くことが、他人を援助していくことにつながっていると思います。種を植えて、その種に備わった力を信じて、それが伸びていくための土壌を作り、栄養を与えていくことが援助のあり方、というのが私が理解するロジャーズの考え方で、まさにマインドフルネスと共通すると思います。そのための安全な環境を整える、それぞれが自己実現の方向に向かっていくという考え方です。

インタビュアー:
それがプログラムとして提供されているのがMBSRと感じられたのでしょうか。

山田さん:
そうですね、自分自身がMBSRを受講した際に、先程のようなことを体験した感じがしました。

3.迷ったMBSR講師養成講座への参加、そして今

インタビュアー:
そうしてMBSRを学んだ後に、講師養成まで進もうと思われたのはなぜだったのでしょうか。

山田さん:
本当は、まだ自分自身が学ばないといけないので、今の段階で講師養成に進むのは早いのかもしれません。一方で、これが教えられるようになりたいという気持ちもあります。そのような葛藤の中で、日程調整が付き、いまならオンラインで受講できる部分が大きな後押しになりました。

それでも、周りの人についていけるかという躊躇もあったのですが、そこは自分が判断せずに手放して、応募してドイツ側がいいよというのであればそういう縁なのだろうと思って、まずは応募してみることにしました。

インタビュアー:
その結果、今、こうしてこちらにいらっしゃることになりました。受講者の皆さん同士で最初の顔合わせを行った2020年12月からすると半年が経過しています。4月の後半にモジュール1を終え、つい最近6月半ばにモジュール2を終えました。この間には、4人のグループで様々な課題にも取り組んでいただいています。今までのところを振り返っていただいていかがでしょうか。

山田さん:
まずは、単純に、他の受講者のみなさんと一緒に学ぶ中で、こういうことだったのか、という発見をすることもあり、そのプロセスが楽しいです。同時に、他の方に追いついていないという感覚を覚えることもあります。ただ、皆さんオープンに対応してくださるので、お互いに持っている人から学び、一緒に学んでいけていると感じます。最初のうちは教えてもらうことのほうが多いかもしれませんが、自分なりに貢献していけると良いなと思っています。

インタビュアー:
貢献するということと同時に、コミュニティとして、一緒に学ぶこと自体を楽しめるといいですね。

山田さん:
そうですね、援助する立場からは他人に対して、ただいるだけでいいんだよ、といってあげられるのですが、なかなか自分に言うのは難しいですね。どこかで人の役に立っていないと、と思うことがあります。その辺りも徐々に自分に優しくなれたら、と思っています。

4.多感で多忙な学生たちにマインドフルネスを伝えていきたい

インタビュアー:
この学びの先にはどのようなことを思い描いていますか。

山田さん:
まずは、一緒にいる大学生に伝えていきたいと思います。人は困らないと援助を求めないところがあるので、困る前にどう取り組んでもらうかというのはテーマの一つになるかと思います。

いまの勤務先の大学は、医療系理系の大学で、学生は忙しく、将来のことをしっかり考える時間を持つのが難しいというケースもあります。そうした多感で多忙な時に、自分自身の内面とつながって、自分と対話できるという体験をしてもらうのはとても有意義だろうと思います。大学生は自分で進路を決められる年頃なので、その選択をしっかりできるためのサポートとしても役にたてるのではないかと思います

インタビュアー:
ありがとうございました。

MBSR講師養成講座にご興味ある方はこちらより↓

画像1


最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!