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『ウィズ・マインドフルネス』のすすめ

当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からMBSR講師養成講座を開催しています(2022年10月開講3期はこちらから)。

その1期生として2021年10月からのプログラムに参加されている粟野加代子さんにご寄稿いただきました。複数の企業での勤務経験を経て、いまは主にコミュニティの中で活動をされています。ご自身もこれまで感じて来た不安や人間関係などでの難しさを元に、マインドフルネスに出会い、その力を多くの方に伝えたいと思われています(ご本人プロフィールは文末)。

6月3日(金)から金曜朝にMBSR8週間コースを開講します。
>>詳細はこちら

以下、粟野さんの寄稿です。

誰も感じる不安やイライラ

粟野
私にとってマインドフルネスとは、今この瞬間の自分に気づいて優しくあるがままの自分に寄り添うことです。私たちは、日常的に自分で気づく気づかないはともかくとして、大なり小なりいろいろなストレスにさらされています。例えば、ふと気が付くと、いつの間にか過去に起こった不快な出来事を思い起こして、イライラ、怒り、悲しみ、悔しさ、モヤモヤそんな気持ちが起こってくる、それも1度や2度ではなくて何度も繰り返していたりするかもしれません。また、一方では、こんな風になったらどうしようなどと将来に向けて心配や不安な気持ちがわいて、いつの間にかそれにどっぷり浸ってあれこれ考えている自分に気が付いたりすることもあります。ちょっとしたことで注意がそれて、そんな気持ちから離れることができるときもあれば、いつまでもとらわれていて眠れない夜を過ごすということもあるでしょう。また、些細なことで家族や仕事仲間に怒りをぶつけてしまい、あとでそんな自分に唖然として後悔して自分を責めてしまったり、何となくぼーっとしていて、大事な約束を忘れてしまう、似たような経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

私たちは、毎日の生活の中で様々な出来事に出会います。嬉しいこともあれば、悲しいこと、不快なことなど様々なことです。そのなかには私たちがコントロールできないことも含まれています。粟野さんご自身も、これまでそのような様々な感情の波を体験してこられたそうです。みなさんにも同様のご経験がありますか?

マインドフルネスとはなにか

粟野
マインドフルネスは、そんな時にどのように自分自身に対応していったらよいかということを自分で導いていけるように促してくれるかもしれません。何もなす術がなく、過去の出来事に悩まされたり、将来を不安に思ったり、何かネガティブな状態に身をおいていることは苦しい、あまり歓迎できない状況といえるでしょう。小さなことも積み重なっていけば、ちりも積もれば山となるで病名が付くような不調を生み出してしまう可能性も考えられます。マインドフルネスでは、今この瞬間の気づきということに意識を向ける練習をしていきます。今この瞬間の感覚に意識を向けることによって、頭の中で考えることから離れて今この瞬間の自分自身を取り戻すのです。

ここで、マインドフルネスがどのように助けになる可能性があるか、について述べていただいています。マインドフルネスの定義はさまざまありますが、MBSRを開発したJon Kabat-Zinn博士の定義のひとつに、以下のようなものがあります。

瞬間、瞬間の移りゆく体験に対し
意図的に
その瞬間に
価値判断をせず
注意を向けることで生じる気づき

The awareness that emerges through paying attention
on purpose,
in the present moment,
without judging,
to the unfolding of experience moment by moment.

まさに、粟野さんの言うように、この瞬間に気づき自分に戻っていく、ということなのです。それでは、どのようにそのマインドフルネスの実践を始めればよいのでしょうか?

どうやってマインドフルネスを始めるか

粟野
ところで、では実際どのようにしたらマインドフルネスを身につけることができるでしょうか。マインドフルネス瞑想することによってリラックスしたり、何か特別な状態になること、トランス状態になるとかそんなことをイメージしていたら、マインドフルネスの練習は、ちょっと違うと感じられるでしょう。マインドフルネスの練習は継続的に静かな時間を自分のためにとって行っていきます。練習には忍耐や勇気が必要になる時もあります。
私は以前ストレスをコントロールするのに悩んでいた時に、マインドフルネスに取り組むようになりました。ヴィパッサナー瞑想の瞑想会に参加したり、本を頼りに一人で練習していたのです。確かに、瞑想の練習は何か難しいことをするわけではありません。座ったり、横になったりできるスペース、ムーブメントをするにしても、ヨガマット分のスペースがあれば十分です。あとは、本や音源のガイドなどを参考に進めていくことができます。SNS上にはそれこそいろいろなマインドフルネスの情報があります。自分なりに瞑想を練習していき、何となく成果を実感できることもありました。ただ、一人でマインドフルネス瞑想を続けていくのは、私にとっては、かなり努力が要ることでした。特にこれでいいのかな、とかこんなことして何になるのかななどという疑問がわいてきたときはかなりぐらつきます。

粟野さんご自身は、瞑想会に参加したり、本を読んだりして、ご自身で瞑想の実践を開始されます。ここでも書かれている通り、瞑想には広い場所も、設備も必要ありません。一方で、一人だけで行うのがときに難しいことも事実です。また、瞑想は外から見えないところでおこる内的な体験であるため、迷子になったときに外から見えづらいという点にも注意が必要です。安全に、モチベーションをたもって練習を継続していくために、経験のある先生やコミュニティに所属して一緒に実践していくことをお勧めしています。
同じところをぐるぐる回って(場合によっては堂々巡りしている事自体に気づかないこともある)いたのが、別の方の体験を聞いたり、先生からの投げかけで、ふとした拍子に気づきが得られる、ということがときに起きます。

MBSRとの出会い

粟野
そして、MBSRコースに参加する機会を得て、モヤモヤしていたマインドフルネスへの取り組みがクリアになりました。最初、8週間毎回2時間半のクラスと終日行われるプラクティスデイ、毎日の宿題という構成についていけるかなと不安もありましたが、マインドフルネスに対する思いが勝りました。参加して、講師に導いてもらえる安心感、仲間がいることの楽しさや支えられているという安定感を感じました。講師や参加者との対話を通じて、自分が思ったり、考えたりしているようなことは私一人だけでなく、誰でも感じるようなことなんだなぁ、など共感できることで心が軽くなるように思います。瞑想の練習は自分と向き合っていく孤独な時間かもしれません。が、何よりも仲間がいることによって、頑張れるように思いました。その経験を分かち合えるということで力づけられるのです。
MBSR終了後も、練習会に参加するなどして、マインドフルネスの練習を続けています。

マインドフルネスを学ぶにも一人で書籍で学ぶ、YouTubeで学ぶ、先生と一対一で指導をしてもらうなど様々な方法がありますが、MBSRの一つの特徴は、グループで学ぶことです。
多くの受講者の方が言うことであり大事なことの一つは、自分自身の体験している不安などの感情について、他の受講者の人のシェアを聞く中で、それが自分だけに生じているものではなく、人間として当たり前の体験だと認めてあげること、です。
また、様々な方の体験を聞くことで、自らの瞑想実践や心のプロセスについて気づきが得られることがあります。そのためには、まずは自分自身が毎日の瞑想(を中心とする)実践を行い、ある体験を持っておくことが必要です。MBSRでは毎日45-60分程度のホームプラクティスが求められます。これは、受講者自身が実際に体験したことを起点にして、そこからもらってきた知識ではなく、自身の体験からさまざまな気づきを得ていく、という構成になっているからです。講師から理論的な説明を受けることもありますが、それは自分自身の有機的な気づきを得る媒介となるものに過ぎません。自分自身に起点となる体験があれば、他の受講者の体験など、様々なことが学びの材料になります。

マインドフルネス/MBSRを通じての気付き

粟野
そして、そんな中でいろいろな気づきがありました。一つ一つは小さなことかもしれませんが、そんな気づきがあるごとに、自分が解放されて自由になっていくような気がします。最近参加したリトリートの指導をしてくださった先生が、マインドフルネスの実践で大切なことは、忍耐、ゆるし、やさしさ、心をオープンにすることとおっしゃっていました。マインドフルネスの実践を日々続けていくことは容易ではありません。が、何かとストレスフルな忙しい日々を送っている中、マインドフルネスと共にあることによって、バランスを保って瞬間瞬間を意識してみる、そんな時間があってもよいかもしれません。そして、少しずつでも自分を大切にして人生を味わっていけるようになったらと思います。

マインドフルネスの実践について大事なことの一つは、一つ一つの小さな気づきだと思います。粟野さんがご自身で体験されているように、実践を毎日続けるのはなかなか難しいことですが、その中でも、瞬間瞬間のバランスを意識してみる、そこから実践が始まっていきます。

粟野加代子 プロフィール

大学卒業後、米系石油会社、仏系メーカー、仏系金融など外資系企業勤務後、現在は、地域活動に従事。
自身の病気体験からマインドフルネスに出会い、IMCJにてMBSRコース終了後、現在MBSR講師養成コースに参加し、この度、スーパーバイザーの指導の元、8週間コースを提供することとなりました。
悩みや苦しみを抱えながらも、そんな自分を認めるのに躊躇したり、困っている。病名が付かないけれど、健康健全であるともいえないような状態で、不具合をなんとなく我慢してやり過ごしている。そんなことに心当たりのある方は多いと思います。
他人との関わり合いや親子関係、老いへの不安、日々の生活の中で心をざわつかせる様々な出来事、そんな普通の人々のためにマインドフルネスを生かしていくことを大切にしたいと思います。
瞑想を通して、自分自身をやさしくケアし、そして、一緒に瞑想をしていく仲間との関わりを通じて、いたわりの気持ち、一人ではなく、支えあってそれぞれがあるんだということを実感していく、そんな経験を分かち合っていけたらと思います。

粟野さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)

また、この5−6月期は、以下のMBSRコースも開講しています(日程は開講日、名前のあとはMBSR講師資格以外の関連する分野)。
①5月17日(火曜10:00-12:00) 宮本:MBCT, MBCL, MBPM講師
②5月18日(水曜19:45-22:15) 小保方:精神科医
③5月23日(月曜13:00-15:30) 井上:MBCT, MBCL, MBPM講師
④6月3日(金曜10:00-12:30) 粟野:企業、コミュニティ
⑤6月3日(金曜19:45-22:15) 叶:臨床心理士、スクールカウンセラー
⑥6月5日(日曜8:00-10:30) 家永:作業療法士(精神科)
⑦6月5日(日曜19:45-22:15) 江崎:公認心理師、産業カウンセラー

*MBCT:マインドフルネス認知療法
*MBCL:マインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング
*MBPM:痛みのためのマインドフルネス

最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!