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「効果的な関わり方」を超えたマインドフルネスの新しい関わり方の可能性

当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からマインドフルネスストレス低減法(MBSR)講師養成講座を開催しています。

その1期生として2022年10月にトレーニングを終え、MBSR講師となった叶さんにご寄稿いただきました。臨床心理士、公認心理師、スクールカウンセラーである心理の専門家が、MBSRを教えることを学び、感じていることとは。(ご本人プロフィールは文末)

2023年3月6日(金)から月曜夜のMBSR8週間コースを開講予定です。
>>詳細こちら

以下、叶さんへインタビューをさせていただきました。
その1回目です。

インタビューアー:宮本賢也

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―――普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか。

臨床心理士として、大学での学生相談や、小学校でのスクールカウンセラー、引きこもり状態の方のご家族に向けた保健所での相談業務等を行っています。スクールカウンセラーの仕事は、主にご両親と、ご家庭でどのような対応をするのがよいかの相談業務です。

―――もともと心理学に興味をもたれて今のお仕事につかれたのでしょうか。

実は、偶然の積み重ねの部分が大きかったのです。最初に大学に入学した時も、自分に向いていないものを消去していった時に心理学部がありました。そして、大学を卒業した後も最初は、一般の仕事をしていて、あるとき、心理学の大学院に戻ることにして、いまに至ります。

―――最初の大学卒業時は、どのような経緯で、どのようなお仕事をされたのでしょうか。

大学時代に、病院の実習に行ったのですが、アルコール依存症や統合失調症の患者さんのケースに触れるうちに、自分の中でもう少し準備が必要なように感じて、そのまま心理の仕事につくのはどうかなと思いました。

それで、まずは普通の会社で仕事をしてみようと思い、接客や一般の事務をしてみたり、花屋さんで仕事してみたりしました。
それぞれ楽しかったり、向いていないと感じたり、様々な経験がありました。

性格的に、ひとつのことをじっとやるより、様々なことにチャレンジしたくなる性格のようです。

将来花屋さんを開業したいと思って、まずは働く経験が必要だろうということで、募集のなかった花屋さんを訪ねていって雇ってもらったこともありました。その後、自分自身で花屋さんを開業したのですが、仕事に向かう途中で交通事故にあったりいろいろなことがあり、一旦それはやめて、また花屋さんに勤めるかたちで仕事を続けました。

―――いろいろな人生経験がお有りなのですね。

その後、もう一度、花屋さんの仕事の中でも新しい分野に挑戦したいという思いもあり、その準備も兼ねてニュージーランドにワーキングホリデーに行きました。帰りに、花で有名なオランダに行ったら、夏の間はオランダでは花屋さんが開いておらず、ということもありました。

―――それが、どういう経緯で心理の世界に戻ることになったのでしょうか。

ワーキングホリデーから帰ってきてから、英会話学校で勤務するようになりました。営業の仕事の一環で、お客さんに、なぜ英語を学びたいのかを聞く機会がありました。そこで、お客さんたちが、英語を通じて実現したい夢を語るのをお聞きするうちに、自分自身がもともとやりたかったことは何だったのか、と思い直し、その結果、大学に戻って心理学を学び直すことにしました。大学院に入学したのが29歳の時です。

―――ここまでのことは、大学を卒業して数年のことなのですね。とてもバラエティ豊かな社会時生活です。そうして、大学院で心理学を学ばれた後は、どのようになったのでしょうか。

それ以降は、基本的には今に至るまで、教育分野を中心に、カウンセリングの仕事をメインにしています。

―――そこから、マインドフルネスにはどのように出会ったのでしょうか。

大学院時代にある先生との出会いがありました。私の直接の研究室の先生ではなかったのですが、とてもお世話になった先生がいました。その当時は、今に比べて、学生の立場で臨床の現場に立ち会わせてもらう機会は少なく、卒業した後でも自分自身の臨床家としての技量に十分な自身が持てない時期もあったのですが、その先生にところに相談にいったり、その先生の臨床の場に陪席させていただいたりしました。その先生が、いまから10年くらい前のことだと思いますが、マインドフルネス認知療法(MBCT)を一緒に勉強しようと声をかけてくださったのが、マインドフルネスとの出会いです。日本でトレーニングもまだ始まっていないときで、手探りの状態でした。

―――初めてマインドフルネスに触れたときはどのようなことを感じましたか。

初めてその先生にガイドをしていただいてボディスキャン(*)を体験したときは、直感的に「これが求めていたものだ」と感じました。普段行っている体を床に横たえるという動作の中で、それを注意深く行った際に、普段感じたことが無いような感覚に気づきました。注意の向け方によって、こういう体験の現れ方がするのかと驚きがありました。

*主に仰向けに横になり、静止状態で、体の部分部分に注意を向けていく、マインドフルネスの実践のひとつ。

その頃、学校の先生向けにストレスマネジメントの講座を担当する機会がありました。ストレスへの対処として、ストレスの要因を解決する方向の行動と、ストレス発散する方向の行動が車の両輪のように両方大切と伝えていたのですが、自分で伝えながら、何か不十分な、もやもやした感じがしていました。それに、マインドフルネスが何かしら役に立つのではないかと思ったのです。

―――ちなみに、普段のカウンセリングはどのようなアプローチを行っていらっしゃるのでしょうか。それとマインドフルネスはどのような関係性になりますか。

普段は、いわゆるクライエント中心療法に近いかたちで、当人の悩みをじっくり聞いたり、場合によっては認知行動療法のような働きかけをしたりすることもあります。また、ご家族とお話する場合は、ご家庭でどのような対応や態度をするのがよいかということをはなすミーティングのようなことをすることもあります。

その中で感じていたことは、ご家族も、難しい思いをしているということです。例えば、引きこもりのお子さんがいらっしゃるご両親と話をする時、無理に学校に行かせようとするより上手に見守りましょう、と言ったとします。それが頭ではわかっても、心のなかではなんとか学校に行ってほしい、と思っていれば、最初の1〜2回は良くても、段々とそれが子供への態度に出てきたり、もしくは我慢することがご両親本人の負担になります。

そのため、「効果的な関わりかた」という認知的なアプローチだけでは難しい場面があります。それはご両親自身の中にある不安を押さえつけているからです。もしマインドフルネスの気づきを持って、ご両親自身がその不安に気づいて、それと上手に関わることができれば、また新しい上手な選択ができると思います。「それが出来れば苦労しないよ」というような無理をするアプローチではない、新しい関わり方の可能性を感じました。

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次回は、その後、実際にどのような道をたどってマインドフルネスの実践、そして伝えるに至るかをお聞きします。

講師紹介 & 叶さんのMBSR8週間コース

叶さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。
(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)

また、この2月期は、以下のMBSRコースも開講しています。(日程は開講日、名前のあとはMBSR講師資格以外の関連する分野)

以下()内は開講日
金曜夜(3月10日)19:45-22:15 叶:臨床心理士、スクールカウンセラー

最後までご覧いただきありがとうございます。一緒にマインドフルネスを深めていきましょう。お気軽にご連絡下さい!