どうして依存症があると自助グループに行かないといけないの?
依存症とは、孤独から生じる病気である。
そのため、そこから回復するためには、絶対的に他者との強い結びつきが必要である。そして、誰か一人でよいので安心して相談できる人を見つけ、あとは、そのコミュニティーに属する安心感つまり愛着関係が生み出されるとよい。
依存症からの回復には、通院、自助グループ、相談できる仲間、つまり絆を作り出し、そこに色々あっても、とどまることが必要なのだ。専門病院にいっても、カウンセラーも医者も自助グループをすすめることが多い。アディクション臨床の基本だといっても過言ではなかろう。
これが、理屈なのだが、実際、依存症や依存傾向のある人や、共依存やAC(今でいう、発達性トラウマかな)の人に、カウンセリングであっていると、彼らはなかなか、自助グループへ行かない(汗)驚くほど行かない。良いと思うのでとにかくいったらいいよ!と言っても行かない(笑)
自助グループへ行きたくない理由はさまざまだろう。よく聞くのは、「傷のなめあいしても意味ないし」「なんか、怖そう」「宗教っぽい」「ハイヤーパワーが怪しい」「なじめなさそう」「一度いったけど、雰囲気があわなかった」などであろうか。要するに、人や何かを信じてみようと思えないのだ。
最低、5回は同じ会場、あるいはオンライン会場に偏見をとりあえず、横において足を運んでほしい。オンラインだとサポートを受けるのは難しいかもしれないが、「今日、はじめて来ました」などと、自分がはじめて訪れたことをカミングアウトしてほしい。
自助グループが合わない人もいるので、無理はしなくてよい。数回は通ってみないと良さはわからないと思うし、他のグループも試してみたりするといい。どうしても合わない場合は、主治医などに相談してみてほしい。
自分はどうだったか
私はアディクションの支援の専門家だが、かつて自分がアディクションにもハマっていた時期がある。ハマっている頃に、「自力じゃやめられないから、自助グループ行ったほうがいいんだろうなあ・・・」と思ったが。なかなか行けなかった。なぜなら、やっぱり怪しそうだし、怖いのである。
まず、12ステップの自助グループが比較的専門家内でも評判がよいので、そこに行って見ようと思った。うんうん、12ステップってどんなものなのだろうか?そうするとこんなことが書いてある。
なるほど、ステップ1、無力を認める。うんうん、それは多少はわかってる。ステップ2、大きな力・・・しーん。(以前はハイヤーパワーと書かれていたような)ハイヤーパワーってなんだよ。なんか怪しいし行きたくないな・・そう思った。そしてしばらく行かなかった。疑い深いし、信じない。行かない理由を沢山さがした。
そして、やっぱり人生がどうにもならなくなって、はじめて足を運んだミーティングでは、事情を話しそうとしすぎて、長く喋りすぎてしまい(爆)、時間を注意されるという・・・(汗) 「怒られちゃったわ、あらやだ」と思った(笑)
初回に、「すごい親切な人がいた」とかそういうことはなかったのだけれど、そのミーティングの雰囲気が、なんだか受容的で、「ああ、私ここに来てもいいのかな?」と思った。
それから、なんとなくつながって、はや14年である。そして、良い風に変化したと思う。業界用語でいえば、スピリチュアルに目覚めたし、マインドフルネス業界風にいえば、「マインドフルな存在」になったと思う。以前に比べれば、多少という程度にしてもだ。
自助グループの歩き方
その1 異性のメンバーに気をつけて!
次は、男女混合のグループに行ってみた。いろんな話を聞けて、ためになったし、優しくしてくれる人がいた。女性も男性もだ。メインなアディクションを手放してすぐの女性(男性もか?)というのは、独特の色気がある。そのため、結構男性がよってくることも多いようだ。でもそれに、決して食いついては決していけない。同性(同性愛であれば恋愛対象にならない相手)のサポーターを見つけてほしい。同性のがちょっと冷たい。それくらいがちょうどいいのだ。手とり足取り教えてくれるような異性は、目的をちょっと疑ったほうがいい。
言い伝えでは、お酒などをやめて1〜2年は、交際はやめたほうがいいと言われている。きちんと守っている人もあまり見たことがないが・・・(汗)
その2 特に「ピンときたり」「ぐっとくる」異性はやめたほうがいい
私たちはよく「病気が噛み合う」と表現する。一目惚れみたいな感じは、まずい。痛い目にあう可能性が高い。だいたいは、親のどちらかに似ているタイプで、最初はいいが、すぐ破局するパターンが多い。専門用語でいえば、虐待的絆の再演ということになるが、その話は長くなるので、また今度話す。
ダメージを食らったり、大変なことになるのはなぜか男性のほうが多いという印象を持っている。やめたほうがいいといっても、依存症者は、「体験重視型」なので聞かないものなのだが・・・ 客観的に今振り返ってみると私はそう思う。回復より、その恋愛が大切になってしまうので回復によろしくない方に作用しがちなのだ。
その3 同性のスポンサーを探す
同性で、年上で、回復して、2〜3年以上アディクションが止まっている人を探すといい。電話番号や、メール、ラインなどを教えてもらい、「どこのミーティングにでているか?」など聞いてみるのもよい。12ステップのミーティングでは、初めて来る人がいちばん大切と言われているので、この辺の理解はあるところが多い。
この人なら、いろいろ相談できそう、気持ちを話せそう・・と思う人やその人の回復がかっこいいと思える人を見つけるといい。希望になる。アディクションの回復には希望が必要だ。
私は今のスポンサー(注)にスポンサーをお願いして13年?の歴史になるが、いちばんのよい親友というか盟友というか腐れ縁というか、とにかくすばらしい人間関係が構築できたと思っている。自分の回復は彼女の存在なしには語れない。本当に地獄の底にいるときも彼女だけは、私に手を差し伸べてくれた。
注:自助グループでいうスポンサーとは、世話役のことをいう。回復において困ったことを聞いてくれ、12ステップをともに歩む存在。
その4 自助グループになれたら、12ステップを実践する
ミーティングで正直に話していれば良いという雰囲気が日本では強いのだが、海外のグループでは、12ステップを実践することが重視されている。正直に話すことは大切なのだが、それだけでなく、12ステップも実践できると良いと思う。
Spiritual Awakening 霊的に目覚めること・・が回復の目標だ。「依存症という病気は霊的な病なので、回復するには霊的に目覚めないといけない」それがAAなどの文献の主旨だ。
12ステップを実践するとはどうことか?はまた次の機会で話すとして、ただミーティングにいくだけでなく、ステップを歩むということをしてほしい。
回復で大切なのは、やる気、正直さ、オープンさの三点と指摘されている。
正直に、回復したいと思い、自分を開いて人と接する、ミーティングで話すようにしてみるとよい・・のだが、この3つ依存症の方には、困難なのはよーくしっている(汗)
終わりに
とにかく、誰か一人、憧れの人、こんなふうに回復できたらいいな?と思う人を見つけるまで5回くらいは、参加してほしい(笑)まあこういった文句(失礼)を聞くのが、専門家の役目だと思うのだが・・
「よくある不平不満」を述べて終わりにしたい。
「雰囲気になじめなかった」
「意地悪そうな人がいた」
「感じの悪い人がいた」
「自分より病気が全然重そうな人がいた」
「話がうまくできなかった」
「私はあんなにひどくない」
非常によくある、初期の反応で、「違い探し」と呼ばれている。
私自身は、12ステップに参加してよかったと思っている。生き方ががらっとかわった。そして、このプログラムは誰に対してもそういう可能性を持っているのだ。安全感が持てるかどうかを基準にグループを選ぶことをおすすめする。安全感はサバイバーにとって大事なキーワードである。脅かされる場合は無理しなくていい。あなたの安全が何よりも大事だ。
日本では、生活保護を受けている人は、自助グループに通う交通費が支給される。それほど、信頼があついのだ。依存症からの回復には、通院、自助グループ、相談できる仲間、つまり絆を作り出し、そこにとどまることが必要なのだ。
こんなサイトがあるので、参考までに紹介しておく。専門家が自助グループをおすすめする理由が書かれている。行くか行かないかは、結局はあなた次第である。あなたが選んでよいのだ。
援助職が知っておきたい自助グループの基本講座