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【経済本100冊】Vol.18:『父が娘に語る経済の話。』(著:ヤニス・バルファキス)のあらすじ

経済本100冊読破タイトル作成

こんにちは!メンタルブロック解除人こと心理カウンセラーの大和です。
こちらでは、「数字に疎い心理オタクが、経済関連の本を100冊読むとどうなるか?」と言う企画で、読破した経済関連の本を紹介して行きます。
既に経済に詳しい方もそうでない方も、今後の本選びの参考にして頂ければと思います。


今回ご紹介するのは、ヤニス・バルファキスさんの『父が娘に語る経済の話。』です。

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基本情報

タイトル:父が娘に語る経済の話。
著者名:ヤニス・バルファキス
初版発行年月:2019年3月
ページ数(大体):約240pg
難易度所感〈五段階〉:★★★ ほどよい

大和の適当あらすじ

ギリシャ経済危機時に財務大臣を務めた人による、子供にも分かりやすい経済の本質の話。

全体の感想

難しい経済用語を知らない人でも、経済の本質が歴史的経緯を追って分かると言う、とても親切設計の本です。しかし子供向けと言うよりはかなり大人向けの内容で、世界経済の歪みに対して色々と疑義を呈していると言う、批判的なスタンスに立った本です。

バルファキスさんはそもそも市場経済自体を性悪説的に捉えているので、産業用の機械や地球の資源を人類全員に小口分配して、共有・管理すべきと言う、若干共産主義と似通ったような結論になってます。但し共産主義と異なるのは、極力民主主義を重視しようと言う考え方がある所です。

全体的に、経済用語を用いない代わりに、色々な寓話・神話等を用いたメタファーや例え話が多いです。その引き出しの多さと、小話を重ねながら大きなテーマを論理的に展開して行ける文章力に、バルファキスさんの頭の良さが見えます。

僕的には、市場経済をそこまで悲観する必要は無いんじゃないかなーーって思ったりしましたが、社会とか経済の歪みに大きな不満を抱いている人程、バルファキスさんの話は刺さる筈です。


大和の学びポイント


< 学びポイントまとめ >

★農耕が債務と通貨の起源
★余剰によって国家と宗教が生まれた
★市場社会は債務免除で不況を乗り越えた
★ビットコインは一度盗難に遭うと誰も助けてくれない
★ビットコインではデフレ経済に対処できない
★市場経済の切っ掛けは囲い込み
★産業革命がイギリスで起きた3つの理由
★銀行は現在に縛られない
★銀行が損をしない為の金融工学
★銀行は預金者の一斉引き出しで倒産する
★自動化による価格競争はイカロスの翼


< 各詳細 >

★農耕が債務と通貨の起源
・・・考古学者によると、世界最古の文字はメソポタミアで誕生した。メソポタミアでは農耕が発達した為、共有倉庫に穀物を預けて管理していた。しかしそうなると預かり証が必要になる為、各農民がどれだけ預けたかを記録する為に文字が必要となった。その為、逆に農耕が発達しなかった社会では文字は生まれなかった。また、同時に預かり証は債務(借金)と通貨の始まりでもあったメソポタミアでは、農民がどれだけ支払いを受けられるかを記録する為に、実際にはありもしない仮想の硬貨の量を書き入れていた。これは創造上の硬貨なので仮想通貨みたいなもので、硬貨はそれよりずっとあとに作られた。[※大和註:お金の起源には諸説あるが、ここでは負債(借金)をお金の起源とする「信用貨幣論」に基づいている


★余剰によって国家と宗教が生まれた
・・・農耕社会で債務が生まれたことで通貨が流通するようになり、農作物の余剰を管理できるようになった。そして余剰が無ければそもそも国家は存在できない。何故なら、公務に服する大勢の官僚や警察を養うには、大量の余剰作物を必要とするからである。また、宗教も余剰によって生まれた、何故なら、支配者が余剰を独占することを正当化する為の思想として、国家は宗教の裏付けも必要とするからである。


★市場社会は債務免除で不況を乗り越えた
・・・借り手が破産して借金返済不能になった時に、これを救うには借金を無しにするしかない。これは「債務免除」と言い、道徳とは関係無い。19世紀に市場社会が不況を乗り越えられたのは、全ての借金が保護される必要は無いと言う方向に変わったからである。もし事業家が、会社が倒産したら全てを失ってしまうと言うことであれば、誰も事業を行おうとしないし、破産者はずっと立ち直れないままになる。そこで、倒産してもその事業に関わるものだけ没収され、個人の資産まで没収されないような範囲の責任に留めた。これを「有限責任」と言う。

★ビットコインは一度盗難に遭うと誰も助けてくれない
・・・ビットコインは画期的なシステムではあるが、ハッカーによるコンピュータへの侵入と盗難が一番の心配事である。その恐れに付け込んで、ずる賢い商売人が、少額の手数料で、超安全なサーバーにビットコインを保管すると言うサービスを始めた。すると、数百万ドルの価値のあるビットコインを持ち逃げする人が出るようになった。銀行強盗が大金を盗んで行ったとしても、預金は法律で守られる。しかし国家の法律で守られないビットコインの持ち主を助けてくれる人はいない。これは国家に紐づかないビットコインのような仮想通貨の、致命的な欠陥の一つである。


★ビットコインではデフレ経済に対処できない
・・・ビットコインの総量はアルゴリズムによって決まっている。より正確に言うと、毎年ビットコインの総量は少しずつ増えているが、発行上限である2100万ビットコインに達するとそこでストップとなる。この上限に達するのは2032年の見込みである。しかしこれには大きな問題がある。企業が生産するモノがどんどん増えて行くのに対し、総量の決まっているビットコインは相対的に希少になり、価値が次第に高まってデフレになって行く。そして、ビットコインは発行総量が増やせない為に、再びインフレに持って行くことができない。つまり、経済危機が起きてもマネーサプライを増やして調整する(※大和註:「量的緩和政策」のこと)ことができないのである


これより先は有料コンテンツとなります。価格は200円と、週刊少年誌よりも安く変える値段ですので、更にサクッと学びを深めたい方は是非ご購入下さい。



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