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VOL.2『あの公園から見上げるソラと、介護士シドの日常』

#事実に基づいたフィクション  
#東京の公園 #健康寿命 #公園の楽しみ方 #認知症 #介護の職場 #60代の生き方 #やま #山下ユキヒサ

『あの公園から見上げるソラと、介護士シドの日常』VOl.2

(1278文字・3枚)
※これはシリーズものです。まずはVOl.1をお読みください😊


【恋するきっかけ】

この公園を初めて訪れたのは、多分、十数年前。
僕が所属する社会福祉法人には、2つのグループホームがある。

すでに勤務していたグループホームから、もう一つ別の事業所、つまりこの公園近くのグループホームへの異動が、この公園を知るきっかけだった。

(ややこしいな。)

ただ、最初の異動から十数年ずっと同じ場所で勤務していたわけではない。
再度異動になったり、2つのグループホームを兼務したりと、空白の期間が5年ほどあった。

2つのグループホームは車で1時間ほどの距離がある。

だが、現在の勤務地の地域が地元ではないし、事業所近くの公園という認識だけで、この公園に特に興味も関心もなかった。

その証拠に僕は、この公園の名称を最近まで記憶していない。
簡単な短い名称なのに、僕の中では長らく「あの公園」で済ませていた。

職場で、必要に迫られて話す時にも「あの公園、なんて公園だっけ?名前」と名称が出てこない始末。

必要に迫られてとは、公園そのものが目的地ではなく、ランドマーク的なもの、他の目的地に向かうための目印でしかなかった。

事業所がある地域が地元の同僚は、「ああ、あの公園は○○公園」
そんなやり取りが何度もあった。
興味も関心もないから、覚える気もなかったのだろう。
それが、今ではどうだ。

恋してる。

いやいや、それは冗談にしても、かなりお気に入りなのだ。

たとえば、こんな話に変換する。

十数年前に、職場で初めて存在を知っただけの異性の相手。
部署が違うので、顔だけは何度か見かける程度。
それでも相手のことは何も知らないし、知るきっかけもない。

顔だけ見かける時期が長く続くが、自分の転勤がきっかけとなり何年もまったく会わない時期が生まれる。

それが再度転勤となり戻ってくる。
そしてある時それぞれの部署から担当者1名が選ばれ、会社全体の共同イベントの役員となる。
初会合に参加してみると、なんとその相手もいた。

会合のたび相手の人となりを知るようになる。
そんな中、会議での相手の発言に触れる。

口にする言葉が的を得ていた。
それでいて押し付けがましくなく、何よりみんなを笑顔にするユーモアがあった。

(あっ、この人。なんか、いい)

そのことがきっかけとなり、相手のことを意識しはじめる。

やがて、その気持ちがだんだんと強くなっていく。

(やだ、私、何か変。またあの人のことを考えてる。)

それが、恋のはじまりだった。

その「相手」の部分を、「公園」に差し替えてみてもらいたい。

わかりやすく言うと、公園と僕の関係はこんな感じ。

(いやいや、ややこしいな。)


きっかけは10月の、ある日のことだった。

その日も、夜勤明け。

僕は公園に来ていた。

この日を境に、僕はここをよく利用することになる。

(つづく)

ではまた。

次はVOl.3
にて。

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