どうでもいい。

彼の会社に行った次の日から、手続きの嵐が始まった。

印鑑証明書、住民票などを区役所に取りにいく。

住民票を受け取ると、私はいつの間にか世帯主になっていた。彼の名前の横にはトリアージされた遺体に貼り付けられる黒いタグのように、「死亡」の二文字が張り付いていた。

児童手当などの手続きが必要だというので子育て支援課へ。自分の収入と児童手当などの支援、遺族年金などでどれくらいもらえるのか、これからの自分と子供たちの生活を考えないといけなかった。

区役所の後は銀行へ。

銀行から帰ると他の金融機関や水道、ガス、電気、引き落とし口座の変更、クレジットカードの解約、年金事務所への連絡などやることが山積みとなっていた。

死の余韻に浸る間もなく現実世界が押し迫った。

これからの生活のため、追われる手続きや事務処理があまりにもどうでもよかった。

逃げたい。死にたい。

死にたい。逃げたい。

気づくと呪文のように唱えていた。


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