ずるい。

ドタバタと葬儀の時間が近づき、父の運転する車で斎場に向かう。車窓から、仲良く散歩している4人家族が見えた。幸せそうに笑っている家族4人。目を背けたくても、見せつけるようにスローモーションで動く4人。

私は「いいなぁ。」と呟いた。なぜあの家族は4人でいられて、こちらは3人になってしまったのだろう。ずるい。ずるい。ずるい。そんな気持ちが込み上げてきた。

「大切にしてね。」と長男がつぶやく。

「どういう意味?」と私が言うと、

「あのパパとの時間を大切にして欲しいなって思う。」と長男が言った。

Yはそんな風に思うんだね。私にはそんなに心はなかった。なんでうちの家族がこんな目に遭うの?もっと仲の悪い家族だっているのに。なんで彼が死ななきゃいけないの?もっとひどい人だっているのに。そんな思いばかりが脳内を巡っていた。

斎場に着くと、義理の両親がもう待っていた。

枕経をあげてくださったO住職も到着する。

ガランとした斎場。たくさんの花に囲まれた彼の写真が亡霊のように浮かび上がっている。

そんなところで何してるの?なんでそっち側にいるの?

不思議なウイルスの時代で近親者のみ、13人の家族葬が始まった。




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