初登校

いつの間にか5月は終わっていて、気づけばそこら中に紫陽花が堂々と姿を現していた。明け方まで降っていた雨に濡らされた花びらに水滴が輝いていた。

2月末で一斉休校となっていた学校が再開した。

と言っても、まだ教科書などを取りに行くだけだった。

小学一年生の娘にとっては入学式以来初登校。リモート出勤のままになっているお父さんも多く、子供を挟んで両親揃ってきている家族が多かった。

多くの規制の中なんとかできた入学式は親子3人で参加したのに、2ヶ月経った今、夫は一緒にはいなかった。夫は、もうこの世にさえいなかった。

気後している私をよそに、全身を覆ってしまいそうな大きな赤いランドセルを背負った娘は私の手を引っ張るように教科書をもらう列に突進していった。担任の先生とも楽しそうにハイタッチをして、幼稚園からのお友達や幼馴染とぴょんぴょんしながら登校できる喜びを全身で表現していた。

生きることにエネルギーを注いでいる娘とは真逆のところに自分がいるような気がした。


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