色不異空 空不異色 色即是空 空即是色

あなたは本当に骨だけになってしまったの?
それとも、どこかにいるの?
どこにいるの?

心のなかで夫に聞いた。

そんなことを心で問うていた時、ふとO住職が法事の時に持ってきてくれた般若心経のお経が書いてある紙が目に入った。

枕経を上げて下さった時や法事の時にO住職の全身から発せられる般若心経の心地よいリズムが頭から離れずにいた。

摩訶般若波羅蜜多心経から始まる、262文字の漢字を眺めていると、

色不異空 空不異色 色即是空 空即是色

という漢字列がゆらゆらと浮かび上がってくるように目に入ってきた。

色は空に異ならず。空は色に異ならず。色は即ち是れ空。空は即ち是れ色。

目に見えるものは空と異なるところがない。
空も目に見えるものと異なるところがない。

目に見えるものはすなわち空。
空はすなわち目に見えるもの。

???

夫が私の問いかけに答えているような不思議な感覚だった。

あなたは目に見えなくなったけれど、空にいるの?

私はまた心の中で夫に問い返した。



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