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映画”切り裂き魔ゴーレム”とロンドン金融街シティの闇

普段ホラーもミステリーも見ないのに、見てしまった。

なぜなら、私の好きなヴィクトリア朝時代。

イギリス帝国の最盛期として1番有名でもある時代であると思うが、個人的には闇深いイギリス社会が気になり続けて数年。(そんなに長くはない笑)

これぞヴィクトリア時代!

切り裂きジャック事件を元にした小説が映画化された「The Limehouse Golem(切り裂き魔ゴーレム)」

映画に詳しくない私が言っても説得力に欠けるが、とても良かった。

正直、覚悟していた以上のグロ連続発生により見続けるか悩んだが、止められず。ラストの”Here we are again!”は鳥肌&涙目。

ミステリー慣れしていない私には十分な伏線で、結末も予想外ではないものの終わり方の余韻。

好きと言いつつイギリス史が専門でもない私が言ってもこれまた説得力に欠けるが、ヴィクトリア朝時代って持て囃されるけど、女性目線で語るならそうだよね!という。

世間に女性が余りまくり、庶民の女性にとっては絶望システムが出来上がっている。そこから抜け出すなら男性ありき。

昨年くらいナショナルポートレートギャラリーで、「ラファエロ前派”シスターズ”」という、ラファエロ前派”ブラザーフッド”にかけたエキシビジョンがあったみたいで、まさにそれだと。

「知られていないけれど実はラファエロ前派の女性もアーティストとして活躍していましたよ」というコンセプトのエキシビジョンだった様子。(見てみたかった・・!)

インテリ層の男性(画家)から見初められて、極貧世界から引っ張り上げてもらう女性たち(モデル)。

アートの世界に仲間入りできたとしても、名を遺しているのはモデルとしてのみであって(当時はモデルという職業は売春と同等の価値観だったと聞いたことあり)、アーティストとしての活動はもはや闇に葬られているくらい聞いたことがない。

もちろん当時の女性の地位なんてイギリスに限らず同じようなものだろうけれど。

それにしても、映画の中の、

役が欲しい(「何か」になりたい)女と、哀れな女を救済して満足したい男

というセリフや、

「インテリ層なのに売春婦と結婚した変わっている俺」を誇らしげにしている描写などなど。

そうそう!こういうヴィクトリア朝時代が好きなんだ!となった。

ちなみに、私はフェミニズムの知識も持っていなければ、強く訴えていこうという気持ちはなく、(フェミニズムに反対というわけでもないのだが)うまく言えないのだが、「社会」というものが好き、ということになるのだろうか。

この女性絶望システム美化の真骨頂かもしれない映画「マイフェアレディ」(この話の元ネタもヴィクトリア時代のカップルと言われている)も好きで、久しぶりに見たい。

切り裂きジャックゆかりのイングリッシュパブ

映画の元ネタとなっている切り裂きジャックの事件。

ロンドンの金融街として有名なシティで、切り裂きジャックの被害者のうち2人が事件直前に立ち寄っていたというパブを見たことがある。

シティは現代的なオフィスビルや、日本でいう高級タワマン的な住宅が多い一方で、かなり古い歴史的な街並みも残っている。そして闇深い場所も多い。

アルコール依存症となった娼婦のたまり場であったらしい、「TEN BELLS」。映画の事件発生地となっているライムストリートより、当時さらに貧民窟レベルが高かったと思われるスピタルフィールズのエリアにある。

とはいえ、今はそこまで治安を心配するような場所でもない。

ちなみにパブは昼間だったこともあり、闇は一切感じられず。中は見ていないが、ウェブページを見るとごくごく普通。

そうしているうちに、関係ない情報を見つけてしまった。

TEN BELLの昔のオーナーがジェイミーオリバー(イギリスで有名なイタリアンシェフ)の曽祖父という情報からの、

ジェイミー・オリバー倒産!!!

こんなところにもコロナの影響?と思いきや時期的に関係なさそう。

思いもよらぬ着地点である。

調べ学習が止まらないが無念の打ち切り

映画で気になった点をつい調べてしまう。

大英博物館の図書館に行くシーンが何度かあるが、

「大英博物館に図書館なんてあったっけ?」

なんと図書室が当時あり、移設されて現在のセントパンクラスにある大英図書館になったらしい。

そして、容疑者の一人。

「哲学者カール・マルクスってあの・・?」

実はマルクスは当時ロンドンで活動していて、大英博物館の図書館もヘビーユーザーだったらしい。全く知らなかった。そして映画も芸が細かい。

ただ、調べても分からなかったことも。

映画では警察役の人が「スコットランドヤードです。(警察です。)」と名乗っているのだが、事件が起こったシティエリアではロンドン全域を管轄とするスコットランドヤードから独立した組織「シティ・オブ・ロンドン・ポリス(シティ市警察)」があったはず。

もしかすると、当時(切り裂きジャック事件発生時)はまだシティの警察は組織されていなかったのか?いや、されている。

切り裂きジャックの事件は壮大すぎて、シティの警察ではなくスコットランドヤードの管轄になったのか?

答えは見つからず、捜査は打ち切りとさせて頂きます。

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