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【無料】基礎から分かる水産用語<91> シングルシードとは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。

シングルシードとは

 主にカキをバスケットに複数個入れて1個ずつバラバラの状態で波に揺らして育てるもの。養殖カキの生産手法の一つで、カキ種をホタテ盤などに付着させて育てる生産手法「垂下式(カルチ式)養殖」とは異なり、フジツボや野生のカキといった不要物の付着を抑制して育成できる。

 バスケットは、海に設置した複数のポールの間をつないだワイヤに取り付ける。波の力でカキを揺らし殻を削るため、殻の成長が抑えられ、栄養分が身に集中。カップ(殻)も深くなり、オイスターバーなどの外食筋から好まれる整った形状に仕上がる。一方で、垂下式養殖に比べて1個当たりの生産コストは高くなりがちで、バスケットの位置変更が必要であるなど維持管理に手間が掛かるという側面もある。

 九州のカキの一大産地・糸島でブランドマガキ「みるくがき」を養殖するアクアグローバルフーズ(福岡県糸島市、上野慎一郎社長)は、本垂下から水揚げした後、かごづりにして育てる「セミシングルシード方式」を採用。糸島産天然種と宮城種(松島・石巻産)を使い育て、「国内や東南アジアなどに出荷実績がある」と同社。

 その他、バスケットを専用の機械で回転して育てる「フリップファーム方式」を取り入れたシングルシードを採用する養殖業者もいる。

みなと新聞本紙2023年2月17日付の記事を掲載