『ベッドを抜け出して。』
動の世界が寝静まって、
白い月と遠慮がちに輝く街空の星が、
ゆったりと世界を見守る。
暖かいベッドから抜け出し、
毛糸で編まれたカーディガンを羽織る。
素足で触れるフローリングは、
まるで他人のように冷たい。
コンビニで買った、冷やし忘れた赤ワインを
ただの透明なグラスに注ぎ、
台所に立ったまま、一口飲み込んだ。
ワインが喉元を通ると、
そこだけが熱くなった。
静かな真夜中。
全てが眠ってしまっている様に思っていたけれど、
耳を澄ませると、色々な音がする。
冷蔵庫の音。
時計の秒針の音。
換気扇の音。
寝室から聞こえる、家族の寝息。
それぞれが、各々の音階で一定のリズムを刻んでいる。
私の呼吸も、それに合わせるように、
一定のリズムを取り戻していく。
明日に備えて、早く眠るべきと分かっているけれど、
深夜のこの時間が、とても好きだ。
私が私に戻る、束の間の時間。
(完)
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