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【歌舞伎鳩】旅噂岡崎猫・今昔饗宴千本桜(十二月大歌舞伎①)

歌舞伎座新開場十周年 十二月大歌舞伎
2023年12月3日(日)~26日(火)

第一部:旅噂岡崎猫・今昔饗宴千本桜
第二部:爪王・俵星玄蕃
第三部:猩々・天守物語



旅噂岡崎猫たびのうわさおかざきのねこ

ざっくりとしたあらすじ
由井民部之助とその妻・お袖は赤子を抱えて旅道中。
日も暮れてきたため、通りかかったおくらに宿を尋ねると、自分の手伝っている岡崎宿はずれの古寺でよければ案内しようという。
連れられていくと、寺を任されているという老婆・おさんが出迎えたが、おさんはつい先日亡くなったお袖の母に瓜二つ。蘇ったと話すおさんだが、どうも様子が怪しく……。
きちんとしたあらすじはこちら


おさん実は猫の怪:坂東 巳之助
由井民部之助:中村 橋之助
お袖:坂東 新悟
在所女 おくら:坂東 やゑ亮


伝統芸能資料館で3時間居座った時に、見ていた演目、これだ……! あの時は子猫(子役さん)がパラパラを踊っていたのですが、今回はお人形の猫が踊っていましたね。最初はお人形を操る針金?が見えておらず、ど、どうやって踊っているんだ……となりました。気づくまではその動きが本当に気味悪くて良かった。老婆(化け猫)が調子をとって、子猫が踊っているので、見た目はなかなか楽しそうである。

映像で見ていた時もおくらのアクロバティックさに驚いた(女性の鬘と着物で梁からぶら下がったり転げ回ったりバク転したりなぞする)のですが、これは定番演出だったのか……。今回はおくらに加えて化け猫も天井裏に上がったりしており、役者さんの身体能力ってすごいな……など思いました。

魚醬を舐める行燈の影の仕掛けや、水を飲むたびに口が裂けたようになる早替わり?があって面白かった。ああいう細かい演出大好き。楽しいので。

長いお話の中の一部らしく、どうやら化け猫は由井民部之助の家に恨みがある?ようなことらしいのですが、それにしたって殺されるのは妻・お袖と、おくらであり、特におくらなんて何も関係がない(化け猫の正体を見てしまったくらい)ので可哀想である(いつものことですね)。

久しぶりの幕見席
幕見は25番あたりが中央ですかね?




今昔饗宴千本桜はなくらべせんぼんざくら

ざっくりとしたあらすじ
神代かみよの時代。御神木である千本桜が、青龍の精の襲撃によって花を散らした。そのことで世界は闇に包まれたのである。
それから千年後。千本桜の有り様を見て嘆き悲しむ美玖姫の前に現れたのは、千本桜を守護してきた白虎の精、改め、その転生した姿である佐藤四郎兵衛忠信。二人が千年前の無念を憂いていると、そこへ青龍の精が姿を現し、美玖姫に求婚する……。
きちんとしたあらすじはこちら


佐藤四郎兵衛忠信:中村獅童
美玖姫:初音ミク
青龍の精:澤村國矢


この初音ミクちゃんの歌舞伎をニコニコ超会議でやっていたのは知っていて、一度だけ途中から中継で見たことがあったのですが、まさか実際に見ることになるとは思いもしていませんでした。でも演目発表あった時から(一年前に公演決定していたことは知らなかったのですが)、絶対見ようと思っていた。なぜなら絶対に面白い確信があったため。

お話自体は結構ストレートな話で素晴らしいのですが、やっぱり何より面白いのは初音ミクちゃんですよ。これは初めて超歌舞伎を知った時から、どうやってるんだ……と気にはなっていたところでした。実際に、舞台を見るまではどういう仕組みでミクちゃんを反映させて、どういう見え方をするのかがあまり予想がつかなかった。

今回、三等席が取れなかったので幕見だったのですが、やはり四階から見ると獅童さんに比べて少しミクちゃんが小さく見えるかな?とは思ったものの、そこまで違和感を感じることなくお芝居をできているのが本当に面白かった。
映像と呼吸を合わせるってどうやってやっているんだろう。このあたりがうまくハマっていて違和感をほぼ感じさせないため、お話に没頭することができ、本当に素晴らしいなと思いました。

ミクちゃんの宙乗りも、ど、どうすんの……!?と思っていたのですが、凧に画面を乗せており(ミクちゃんのライブなどを見たことがあったので、ミクちゃんはこうスクリーン投影するものだとばかり思っていた)物理で解決していましたね。シンプル解決策。

ミクちゃんが早替わりするシーンを見ていて、歌舞伎での早替わりは、こういった映像で表現できるような、一瞬の、魔法のような転換の面白さを想像して練られた演出だったのかもなと思いました。
また、幕見席からではAI中村獅童と、リアルタイムレンダリング中村獅童がちょっと見えなかったのが残念。見たかった。

こういう新しい技術を取り込んだ、伝統的な表現、鳩は大好きなんですよね。しかもどちらも、自分たちの良さを潰さずに、双方を引き立てるように作り上げていくのだから素晴らしい。もっともっと電話屋さん(技術提供しているNTT)も技術を磨いて、たくさん面白いことしてほしい。もっとミクちゃんを出して、人間の役者さんと絡ませてほしいですね。いやはやとても楽しかった。

歌舞伎座に通って半年程度なんですが、まさか歌舞伎座でライブ会場のような歓声とペンライトの光を見ることになるとは思わず、最上階から眺めていて本当に面白かった。しかもラストには獅童さんに「立て!」など言われて立たされる。まさか歌舞伎座でスタンディングでペンラ振るとは思いませんでしたが? 佐藤忠信ライブ会場はこちらですか?
いつものごとくイヤホンガイドも聞いていたのですが、あれはもはやガイドではなく実況。超歌舞伎実況動画。そしてそのガイドが大向こうを煽り、「いきますよ〜! せ〜のっ! \萬屋!/」などやってくれるので、声が出しやすいことこの上ない。大変楽しませていただきました。ありがとう。
通常大向こうなんてかけられるものではありませんから、大変楽しい経験になりました。最近ご贔屓となりました勘九郎さんが出ていてくれたため\中村屋!/が言えて、鳩は満足です。なんとなく分かってはいたが、あれってものすごくタイミングが難しいのだなということも身をもって実感した。
そういえば大団円の千本桜がかかっているところで、和太鼓をペンラで煽る勘九郎さんを目撃してしまい、……???となった。なにやってるんですか?

しかし歌舞伎座で超歌舞伎をやっても良いという判断が下りるというのは、ひとえにこれまで公演を続けてきて、ひとつずつ実績を積み上げていったからなのだろうなあと思いました。鳩は新参者だからあんまり歌舞伎の実状のようなところは分からないのですが、やっぱりこういった新しく斬新なものって、伝統的なところだと嫌われがちというか、やっても良いけど本家に持ってくるなよ、みたいな雰囲気、どうしてもあるのだろうなと思うので、今回歌舞伎座でこの公演をかけられたことは、とても大きなことなんだろうなあ、と、素鳩しろうとの感想でございます。

12月歌舞伎座第一部は、それぞれ時代感などは全く違うものの、観客を楽しませるエンターテイメント的側面が強い、華々しい二演目で、とっても楽しませていただきました。古典も好きだし、超歌舞伎のような新しいものも好き。たくさんいろんなことをやり続け、進化する伝統芸能であってほしいなと思います。


この桜の幕も描き下ろしなんだろうなあ

(小声)
・超歌舞伎のオープニングでいくらかの古いミクちゃん曲が流れ、久しぶりにそれらを聴いた鳩がノスタルジーに圧迫されて開演前から息も絶え絶えでした。そういう不意打ちやめて……死んじゃうから……。
・地下の売店にペンラが売ってるのも見慣れない光景すぎて面白かったのですが、ネギ型のスティックシュガー?か何か、なんだったかな、食品?が売っており、これチョイスした人がほくそ笑んでいるだろうことが伺えました笑 他の部見に来た人には伝わらないじゃんか。
初音ミクちゃんの代表曲って、世間的には「千本桜」なんですか……? 鳩としてはどうしても……「初音ミクの消失」かなって……思っていたのですが………………。それか「みくみくにしてあげる♪」………………?

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