「子どもが生贄か」学校観戦は親の8割が猛反発 東京五輪1000人緊急アンケート

「AERAdot.」からの引用です。

開催まであと20日と迫った東京五輪・パラリンピック。菅義偉首相はじめ政府は「安全、安心な開催」を繰り返すが、国民の受け止めはどうか。そこでAERAdot.では緊急のアンケートを実施。1千人を超える回答が集まった。自治体の判断で中止が相次いでいる「学校連携観戦」については、保護者らが猛反発している。

【ひと目でわかるグラフ】アンケート結果はこちら

>>【緊急アンケート前編/「第5波が不安」上限1万人有観客に9割「不適切」】から続く

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「感染のリスクを冒してまで観に行く意味が無い。強制参加はもっての外。例え欠席扱いになっても行かせたくない。子供も学校行事がことごとく中止になのに五輪だけ特別扱いなんことに理不尽と感じており『絶対行きたくない』と言っている」(女性、56歳、女性)

 児童・生徒が学校単位で東京五輪・パラリンピックを観戦する計画について、アンケートに寄せられた保護者の声だ。

 アンケートでは、会場の観客数の上限、新型コロナウイルスの第5波への不安、児童・生徒らが学校単位で観戦する「学校連携観戦」について、意見を募った。6月23日から30日までの8日間、ウェブ上で実施。期間内であれば、何度でも回答が可能な仕組みだった。
年代の内訳
年代の内訳

 回答数は1067件、「男性」が47%、「女性」が49%、「回答しない」が5%だった。年齢は60歳以上が39%、50代が30%、40代が20%、30代以下が11%。居住地は東京が31%、神奈川が9%、埼玉が7%、千葉と大阪が6%、兵庫が5%と続き、都市部を中心に全国から回答があった。

 今回は、児童・生徒が学校単位で東京五輪・パラリンピックを観戦する計画に関しての質問について、結果をまとめた。アンケートでは、高校生以下の子供がいる保護者を対象に、自分の子どもを会場で観戦させたいか、尋ねた。

「学校連携観戦プログラム」について説明すると、大会組織員会は、生徒・児童用に特別価格でチケットを用意、それを自治体や学校単位で購入してもらい、子どもたちに観戦の機会を提供するという計画だ。大会組織委によると、20年1月時点で、128万人が参加を希望していた。

しかし、いまだ感染収束の兆しはみえず、観戦計画の見直しを求める声が強くなってきている。例えば、すでに目黒区(東京都)、板橋区(同)、三鷹市(同)などの自治体が中止を表明した。

実際、保護者はどのように思っているのか。アンケートできいたところ、結果は、85%が自分の子どもは「参加させたくない」と回答。「参加させたい」は12%にとどまった。「まだわからない」は3%だった。

 併せて尋ねたその理由については、次のような厳しい調子でつづられた回答が多かった。

「リスクの多い場所にワクチンも接種できない子供をわざわざ差し出すなんて、生贄か何かですか? 狂気だ」(女性、33歳、東京)

「競技場に観客を入れて見栄えをよくするために子供たちを利用したいように思えるから」(女性、47歳、埼玉)

保護者ではないが、未来を背負う子どもたちに対して心配する声も多く寄せられた(パーセンテージの集計には含めていない)。

「感染者の子供たちの間で必ず感染が広がる。子供の命と健康を何と考えているのか」(男性、80歳、和歌山)

「子供を観戦させるのであれば政治家の孫、ひ孫親類縁者の子供を優先的に行かせれば良い」(女性、57歳、大阪)

懸念されるのは子どもたちの健康だけではない。AERAdot.では児童・生徒を引率する教職員の悲鳴も報じてきた。コロナ禍で、かつ真夏の引率となると現場の教師の負担は相当なもの。しかし、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長「一生の思い出になる」「スポーツの力を感じていただく」など意義を述べ、計画を取り下げていない。
 
 なぜここまでこだわるのか。

 東京五輪の問題に詳しい作家の本間龍氏は「自分たちから取りやめることは絶対にない」と言い切る。背景として指摘するのが、五輪のための演出と、文科省がこれまで進めてきた「オリパラ教育」だ。

 文科省、スポーツ庁では16年度から、五輪への興味関心を高めることや、スポーツの価値、国際理解を深めることなどを目的に、オリパラ教育を実施している。年間35時間程度の実施が目安となっている。自治体によって異なるが、東京都ではすべての公立校で実施されている。本間氏はこう見る。

「オリパラは素晴らしいという教育の最終到達地として学校連携観戦プログラムがある。ずっと準備してきた大会組織委員会や文科省はやめられないわけです。また、子どもが会場にいれば、テレビが『小学校のみなさんが応援してくれています』と映して、盛り上げようとする。演出にも不可欠ということです。ただ、屋外での観戦は熱中症の危険がかなり高い。参加させたくないという回答は極めてまともだと思います」

 もちろん平時ならば、教育的な意義も理解できる。実際、アンケートにはこんな声もあった。

「自分も実際見たことがあるがやはり肌で感じるものは大きく生涯の思い出になると思います」(女性、45歳、兵庫)

安心・安全が確保できていると判断して、「参加させたい」という保護者もいた。

「コロナ禍のもとでのオリンピックという稀な体験は貴重と思っている。収容人数も制限され、すでに感染対策が取られている場所に対しては不安感はあまりない」(女性、48歳、東京)

アンケート最後に、自由に意見を書いてもらった。開催そのものの中止を求める意見や不安を漏らす声で溢れた。

「もっと早い段階で中止の決断をしてほしかった。どんどん経費が膨らみ、やるも地獄引くも地獄の状態。さらにコロナにまつわる国の出費など考えると、全て国民に追わされるかと恐ろしくなる。税が重くなるのは辛すぎる」(女性、57歳、東京)

「中止か開催かも、観客数もいつの間にか決定されていて怖い。亡くなった母が『あれよと言ううちに、いつの間にか太平洋戦争が始まっていた』、と言うのを聞いて『まさか』と思っていたけど、本当だったかもしれない」(女性、69歳、神奈川)

アンケートの回答から見えてくるのは、開催を目前にしても国民の不安は解消されていないという状況だ。菅首相は「安全、安心な大会を実現することにより、希望と勇気を世界中にお届けできるものと考えている」と強調したが、アンケートに寄せられたのは「開催ありき」で考える政府の姿勢への疑問ともいえる。

東京新聞の記者の望月衣塑子さんは「政府が国民のほうを向いていない」と指摘したうえで、こう語る。

「菅首相には複数の閣僚などが『中止するべき』、『中止しても支持は下がりません』、『少なくとも無観客でやるべき』という提案していますが、耳を貸さない。『IOCと森(喜朗、大会組織委員会前会長)さんが観客を入れろといっているから』と周囲に語っているようです。やること全てに説得力が欠けるのは、IOCと森さんの下に国民を見ているからではないでしょうか」

 政府や大会組織委員会はいま改めて国民の声に向き合うべきではないか。(AERAdot.編集部 吉崎洋夫、岩下明日香)

引用元
https://dot.asahi.com/dot/photoarticle/2021070200064.html?page=1

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