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一時の不思議な友人たち

現実なのか夢なのかと思うほど朧げで、不確かな人たちの記憶。
それは祖父母の家で夏休みに出会った人だったり、旅先での偶然の出会いだったり、人それぞれだろうけれど、
きっと、誰の心の中にも存在するのだろうと思う。

今から20年近く前。スマホもLINEも身近になかった頃。携帯電話は普及していたとは言え、インターネットと言えばパソコンだった時代の話だ。

皆さんは、Livly Island(リヴリーアイランド)というブラウザゲームをご存知だろうか?
※調べたところ、私が思い浮かべているLivly Island は2019年に既にサービスが終了しているらしい。DS版とかスマホ版とかもあるらしいけれど、私はブラウザ版しか知らない。

ハマっていたのが20年近く前の話なのではっきりと覚えていないのだけれど、リヴリーというペットを育成しながら、ペットを介して他のユーザーとコミュニケーションをとるとかそんな感じのゲームだった。

(なんとか上手く説明しようと思ったけれど、早々に諦めて後は我らがwikiに任せたい。)

やり始めたきっかけはよく覚えていないけれど、たぶんPostPet(こちらはもう初めからwikiに任せる)とかが流行っていて、せっかく自分のパソコンを買ったのだからと、そう言ったものに対する憧れもあったと思うし、大学生活にちょっと疲れていたというか、寂しかったというか、なんかそんな気持ちがあったのだと思う。

自分の島でリヴリーを育成するのも楽しかったのだけれど、パークと呼ばれるエリアで偶然行き合った人たちと、たわいも無いやり取りをするのが楽しかった。

当然、こう言ったゲームの常で「荒らし」と呼ばれるユーザーもいたけれど、当時はさほど気になるレベルではなかった。

そんな中で、自然と頻繁にやりとりをするユーザーができるようになる。
次第にパークに行く頻度は少なくなり、特定のユーザーと待ち合わせてやり取りを楽しむようになった。

今だったらTwitterか何かを使って、ゲーム外で待ち合わせるのだろうけれど、当時のやりとりは全てゲーム内。お互いの島の掲示板に「明日は22時過ぎに入ります。会えたら話しましょー。」などと書いてやり取りしていた。

恋に悩む自称専門学校生、
早い時間はお嬢さんと一緒にログインする自称外資系エリートサラリーマン、
謎大き、でもおそらく人生経験豊富な自称バリキャリウーマン

いろんな人たちがいた。

自称、と書いたのは疑っているからというわけではない。
インターネット上には、インターネット上の人格が存在する。
私だって少し背伸びをして話をしていたし。
(恋に悩む年下の女の子と話す時は、ちょっとお姉さんぶってアドバイスしたいではないか。)

私が出会った人は皆誠実な人だったけれど、ちょっと話を盛ったりとか、上手くいっていないことを隠していたりとか、
何というか「嘘をついている」のではなく、インターネット上という架空の場所で、なりたい自分として過ごしていたというか、そんな感じだったのだと思う。

理想の自分として相手の話を聞き、
自分のイメージの中で作り上げた理想の相手に悩みを相談するような、そんな不思議な感覚。

今の時代だったら、テキストチャットだけでなくボイスチャットでやりとりしたりとか、(サービスの規約はさておき)連絡先を交換してオフ会をしたりとか、そういうことも簡単にできるのだと思う。
けれど、当時の私にはこの限定された繋がりがとても心地良かった。


そういった繋がりも、いつの間にか終わってしまった。
私自身、最後にログインしたのがいつくらいだったか全く覚えていない。
その程度だったと言えばそうなのだろう。

けれど今でも、顔も名前も知らない友人達のことをふと思い出す。

一度でいいから会っておけばよかったかなぁ、今どうしてるかなぁと寂しく思うこともあるけれど、
会わないでいたからこそ、今でも懐かしく感じるのかもしれない。


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