3/18週SaaS資金調達ニュースまとめ
3/18週のSaaSスタートアップの資金調達関連のニュースをまとめてお伝えします。今週は、ビデオ会議SaaS ZOOMの黒字×高成長でのIPO申請や、評価額7,000億円超のRPAスタートアップの雄 UiPathの400億円の資金調達など、話題性のあるトピックがありました。
個人的には、UiPathの2年弱でARR 1→100億円達成という、他に類を見ない急成長っぷりと、マイクロソフトのCVCであるM12がSkeduloやWorkBoardの様なHRTech SaaSに張ってるのが印象的でした。
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1. ビデオ会議SaaS ZOOM 高成長×黒字でのIPO申請
ZOOMは、言わずと知れたビデオ会議SaaSを提供する、2011年創業のスタートアップ。創業者の袁征氏(Eric Yuan)は、Ciscoに買収されたWebExの創業エンジニアで、VPoEまで務めた人物。従業員思いでも有名で、Glassdoorの選ぶ「2018年最も優れたCEO」に従業員99%の支持を持って、白人以外で初めて選ばれた。現状の従業員数1,700人超。
Skypeや古巣のWebEx等、競合が多い領域にも関わらず、直近のFY19の売上330.5億円、平均年成長率+133%を達成している。顧客社数は5万社以上を抱え、内521社はARR 1,000万円を超え、平均契約期間も2.4年とプロダクトのstickinessの高さも伺える。SaaSのIPOとしては珍しく、FY19の業績は営業利益6.2億円(営利率2%)と黒字上場であることも話題の1つだ。
ただZOOMのIPOで最も特筆すべきなのは、やはり他に類を見ない超高い売上成長率だ。2018年にIPOしたDocusignやZuoraなどの他のSaaS企業との売上成長率比較(直近四半期売上ベース)を見てほしい。中央値が+38%の一方、+108%は怪物級の成長率と言える。上場後の時価総額が今から楽しみだ。
リンク:TechCrunch記事、ZOOM S-1、ZOOMサイト
2. 評価額7,000億円超!RPAスタートアップの雄 UiPath:シリーズD 400億円調達
UiPathは、2005年にルーマニア(※現在はニューヨークに移転)で創業した、RPA(Robotics Process Automation)ソフトウェアを提供するスタートアップ。
ちょうど1年前にシリーズB 153億円調達(評価額 1,100億円)、6か月前にシリーズC 255億円調達(評価額 3,000億円)したにも関わらず、今回のシリーズDでは評価額7,000億円で、400億円を調達した。この超ハイスピードでの評価額アップは、たった2年弱でARR 1億円→100億円の超ハイペースでの成長に起因している。現時点でARR180億円、このペースだと2019年中には、ARR 450億円に到達すると見られている。
今回のシリーズDは、事業会社(非公表)を中心に資金調達したと見られている。UiPathの株主には、Sequoia Capital、Accel、CapitalGなどアメリカの超一流VCが名を連ねている。
リンク:TechCrunch記事、UiPathサイト
3. 従業員の個人携帯を会社携帯にするモバイル・コミュニケーションSaaS Movius:シリーズD 45億円調達
Moviusは、1999年にアメリカ・アトランタ発祥の音声通話・テキストメッセージングに特化したソフトウェアを提供するスタートアップ。従業員個人のスマートフォンに会社用の第2の番号を付与し、キャリア並みの接続性のみならず、テキストや録音等、シームレスにコミュニケーション情報を一元管理することが可能。
今回のシリーズDでは、JP Morganがリード投資家で、既存投資家であるNEAなども追加投資。また、今回の調達に合わせて元AdobeやSunの元役員であるJohn LoiaconoをCEOに招聘。
リンク:TechCrunch記事、Moviusサイト
4. 外勤/リモートワーカーのスケジュール管理SaaS Skedulo:シリーズB 28億円調達
2013年カリフォルニア発祥のSkeduloは、外勤の営業やリモートワーカー等、社外で働く従業員のスケジュール作成・管理のソフトウェアを提供しているスタートアップ。過去は、内勤のデスクワーカーを前提としたツールが中心だったが、今後2020年までには80%の従業員は、自分のデスクを持たないリモートワーカーが主流になると見られている。Skeduloは、その変化に対応した企業側のニーズを取り込み、既存のシステムと連携できるソリューションを提供している。
シリーズBでは、マイクロソフトのCVCであるM12がリード投資家として、計28億円を調達。既存投資家であるBlackbirdやCastanoa Venturesも参加。
5. 営業/マーケティングの行動を最適化するCRM SaaS Lean Data:シリーズC 27.5億円調達
LeanDataは、2012年カリフォルニア発の営業/マーケティングのような収益部門の市場開拓を加速させるCRM系SaaSスタートアップ(彼らの言葉では、Revenue Ops Platform)。特に営業/マーケ部門での運用のし易さや予算割り当てに着目し、営業へのリードの最適割当やチャネルやマーケティング施策別の効果測定ができる。2018年はExpediaやNokia、Airbnb等のエンタープライズへの開拓が進み、売上は2倍に成長。
今回のシリーズCでは、新規投資家のTenaya Capitalリードで、既存投資家であるShasta VenturesやSapphire Venturesも追加投資。計27.5億円調達。
6. OKR特化HRTech系SaaS WorkBoard:シリーズB 23億円調達
WorkBoardは、2013年カリフォルニア発祥のOKR(Objectives and Key Results)の管理/評価に特化したSaaSスタートアップ。OKR系ソフトウェアを提供するスタートアップは数あれど、WorkBoardの強みは「洗練されて使いやすいプロダクト」と「徹底したカスタマーサクセス」。特にカスタマーサクセスは、プロダクトの進化スピードと共に、NPSとレスポンスタイムを愚直に改善し続けてきた結果、この1年間でARRは3.5倍(!)と好調。
今回のシリーズBでは、GGVがリード投資家で、マイクロソフトのCVCであるM12等合わせて、計23億円を調達。ちなみに高成長っぷりからか、前回のシリーズAから15ヶ月でシリーズBをクローズしている。
7. Y-Combinator発! エンタープライズ向けディープ・ソフトSkymind:シリーズA 11.5億円調達
Skymindは、2014年創業のY-Combinator出身のディープ・ラーニングを企業がより使い安くするプラットフォームを提供するスタートアップ。顧客は、カスタマーサービスSaaSの大手ServiceNowや欧州通信大手のOrangeに加え、CiscoとSoftbankとも戦略的なパートナーシップを結んでいる。
今回のシリーズAでは、TransLink Capitalがリードで、顧客でもあるServiceNowや住友商事のCVCであるPresidio Ventures等の戦略投資家も参加。また既存投資家であるY Combinator、Tencent、GMO Ventures等も参加し、総額11.5億円を調達。
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