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[教員/指導者向け事故防止] 授業や行事・部活の失敗で炎上しないために #4 マラソン大会のリスクと効能

先日、高校のマラソン大会を実施しました。
東京都の巨大な公園で毎年実施していましたが、今回はコロナ禍を超えて4年ぶりの開催でした。

学校マラソンは学校の周りをまわったり、河川敷をはしったり、校内のグランドを使ったり、といろいろなパターンがありますが、本校はグランドは狭いし、学校の周りの周回路がなく、当初から大きな公園で実施していました。

学校では12月から、持久走の授業として生徒は頑張ってきました。軽いメニューから徐々に増やしていき、マラソン大会に向けて体力を作っていきます。
本校の生徒はいやいやながらも、意義を理解し、皆でしっかりという意識で頑張ってきました。持久走授業ではウォーミングアップやトレーニングを行った後、寒い中課題の距離に挑戦します。
本校は山の中腹にあるため平坦でなく、上り、階段、長い急な下り坂、そして急な登りと変化に富んでいるコースを作り行っています。
正直、相当きつい持久走授業です。

距離は1周600mほどの上り下りのコースを最大7周。今年は積雪により最長6周、3.6Kmのクロスカントリーが負荷最大でした。時間走25分走も実施しました。今年度は天候にも恵まれ計画どおり実施でき、生徒の体力レベルも準備万端、最高にあったと考えていました。

いよいよマラソン大会当日、天候は晴れ。気温がなんと16度。直射日光が強く、熱く感じる状況でした。

準備も万端にスタート。男子は9Km弱、女子は5Km余り。
コースの選定は公園の指定であり、こちらの意思で決められません。男子の距離が長すぎると相談しましたが、残念ながらこちらの意見は通りませんでした。

多くの生徒の頑張りが見え、マラソン大会も盛り上がり最高潮になった頃、事故は起こりました。
ゴール前100m付近で男子生徒がよろよろと倒れました。明らかに貧血のような状況。
幸運だったのは、いきなりドカンと倒れなかったため頭などを打たなかったことです。
すぐに本部から車椅子で救護に運びました。車椅子で移動するときには、すでに意識がなくなりました。

完全に意識不明です。呼吸はあり。脈拍はあり。
この時点で、緊急対応とし、救急車を公園に要請しました。
シートの上に寝かせ、頭を低く、足を高くしました。
酸素飽和度を図る機器を取り付けたところ、80台。
呼吸は浅く、高速、どんどん顔色は黒く。
呼吸あり、脈ありですからAEDは使用しない判断をしました。

酸素のスプレーを持参していたため、それを利用しました。
呼吸している状態ですが、肺に入る感じがあまりなく状況は悪い感じ。しかしスプレーが徐々に効いたのか、酸素飽和度90台まで、脈も強くなりました。

しかし、意識混濁の状態。救急車が到着するまでに、倒れてから15分以上、いや20分はかかったと思います。
救急車の中で徐々に意識がはっきりしたとのこと、後で報告を受けました。
結果として入院したとのことです。

自分が担当運営したマラソン大会でこのような事案が生じてしまったことにショックを受けました。が、事前に「過去の学校マラソン大会での事故」の記事を読み、大きなリスクがあることは理解していました。
意識が全くなく、呼吸状況も深刻で、酸素の数値も悪かったので
正直怖かったです。数名の教員が声掛けやスプレー酸素投与、血中酸素の状況管理などを一生懸命に行ってくれました。

すぐに保護者に連絡したところ、病院に帯同していただけることになり、安心しましたが、担任、管理職が病院まで出向きました。

なんとその後検査したところ、インフルエンザB型に感染していることが判明。事前の健康チェックをすり抜けていたのでした。皆と一緒に参加したかったのでしょうか?

私の格言 「先手必勝、後手炎上」

多くの失敗・事故経験をしたからこそわかった私が創った「格言」。
保護者連絡や行動をすぐに行えば大破・炎上しにくいが、後に回せば大炎上間違いなしと知るべし。

教訓

今回は命の危険を感じる状況でした。
本人は部活動を行っていない生徒。身長体重は大型。ただし持久走授業ではしっかりと行っていた生徒。
①公園の1周5Km程度のコースを使用。監察場所を20か所、ほかにもPTAの保護者の方20名程度に監察参加していただいて行った。
②緊急対応AED装着自転車2台を準備。車椅子2台を準備。
③救護担当(養護教諭)が救急装備を十分に準備。

**今回、倒れた場所が本部から100mであったため幸運であったが、もし遠い場所での緊急事態の場合、今回のように対応できていたのかは疑問。
保健体育科や養護教諭以外の一般の教員が対応できるかは疑問。AEDの使用方法は研修などで知っている方が増えてはいるが・・・。

ものまね芸人の松村邦洋さんが東京マラソンで心肺停止となるも、救命AEDの使用で復活した話は有名ですが、いつ重大事案が発生するかわからない。
近年、児童生徒の体力の低下、いろいろな体の特徴(持病)をもつ人が多くなった。このような状況で、リスクをとってマラソン大会を実施する意義はあるのか?責任が重すぎないか?
しかし、苦しい取り組みを達成したときの充実感、自信の醸成、得られることは大変に重要だと感じます。

行事の精選と言われる時代。さて、マラソン大会は生き残れるのでしょうか?






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