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[教員/指導者の事故防止] 授業や行事・部活での炎上防止#14水泳授業

重大事故が起こってしまいました

小学校のプール授業で児童が死亡するという痛ましい事故が発生しました。
亡くなられた方、ご家族にお悔やみを申し上げます。

日本テレビの記事

授業中ということで、ほんとうに残念に思います。
まず今回の件で、報道によりわかっていることを整理します。(7/9現在)

①小学校のプールが故障で使えず、近隣の中学校のプールに出張して小学校4年生の水泳授業を行った。
②引率は管理職1名と教諭2名。
③プールが小学校より深く、慣れていなかった。
④2名の教諭が中に入り泳法指導をしていた。人数はわからないが結構多くいたようだ。壁を使っての伏し浮きの練習中。
⑤1名の管理職がプール上から、泳力のあるグループ(25mを縦に泳ぐ)を管理していた。
⑥教員は溺れた生徒に気が付かず、児童2名が気が付いて引き挙げた。

泳法指導

子供が泳げるようになるためには泳法指導が必要だが、小学生のように集中力に乏しい年代では、少ない人数でのグループ指導を行わないと難しい。
さらに泳法をしっかりと教えようとすると、水の中に一緒に入って、手取り足取りしないと指導にならない。高校生でも丘の上からでは難しい。
だからこそスイミングクラブではコーチが中で指導しているわけだ。

日本は古くからスイミングクラブが発達してきた。多くの子供たちが小さいころから通って指導を受け、泳げるようになっている児童生徒が多い。しかし、私の感覚では、近年、全く泳げない、それもどうにもならない技術しか持ち合わせない生徒も見受けられる。
バブル後、子供たちの教育にかける資金の格差を大きく感じるようになった。価値観も変わった。これができなくたって困らない、という親の考え方。
高校生になっても全く泳げずに社会に出ていく生徒が多くいることに問題を感じるのは私だけであろうか。最近、水に関する死亡事故が多いのも、そんな理由が絡んでいるのかもしれない。
だからと言って、高校生になって個別の泳法指導する状況にはならない。子供のころから行ってきたっプール授業において、技術の習得ができない生徒に今から平泳ぎの足が・・・、なんて考えられない。

近年叫ばれている予算都合・教職員の多忙などの理由から学校プールを廃止して、スイミングクラブに丸投げでいいのではないか、という発想は確かに時代にあっているのかもしれない。
しかし私個人的には、猛暑の中でプール授業がなくなると、児童生徒にとっての楽しみが減るので、残念がる子供たちは非常に多いのではないだろうか。(もちろん良かったと喜ぶ子供もいるのだが・・。)

安全管理(監視・確認)

私も長年、学校で水泳授業を行ってきた。今から20年ほど前までは、一緒に入って指導していたが、近年では一切入らず、プールサイドからの監視業務を行ってきた。
というのも高校生では40名を1名で指導する場面が多いし、泳法指導がそれほど重要でなくなり、体力育成のために距離を課題とした授業が中心であるからだ。
小学校では、おそらく泳げない児童を何とか水慣れさせながら、最低限クロールと平泳ぎを泳げるように指導するのが一般的だろう。特に低学年ともなれば、一緒に入りながら指導しないと、泳法指導なんてできないのが現状であろう。

ここで問題だ。一緒に入って指導すること必要と思うが、指導者自身がプールに入ると目線が低くなり、全体の監視がおろそかになる。いや無理となる。水中はもちろん見えない。全体を監視することの任務にあたる、プールサイドで監視のみを行う教員指導者がいるべきだ。

今回の件、どのような授業体系を計画していたのかはわからないが、そのあたりがどうであったのか、。
また、児童全体の人数がわからないが、3名の引率指導で足りていたのかどうか、これも大事な点であろう。泳法指導を行うのであれば、中で指導する指導者〇名、上からの監視担当〇名。さらにグループ分けするならそれに対して〇名が必要となる。
監視カメラでは用をなさない。人的補充が絶対条件になる。

また、小学校の先生は体育専科の教員でない場合ほとんどで、そのあたりの管理計画に詳しい方がいたのかどうか。
校務に忙殺される中で、昨年度の指導計画で行うことで、流れ作業的になっている状況はないだろうか?
これは危険が潜んでいると考える。

今立ち止まって、各学校の水泳授業を再度確認して、安全に楽しい授業になるようにしてもらいたい。
これから検証が進んでいくことになるが、文部省や都道府県の教育委員会がが中心となって進めていくべきだろう。

教育現場の現実

ネットなどには、厳しい意見も多くみられるが、現場は難しい面を多く抱えている。
①授業を行う上での指導する人数がそろうかどうか。他の学年などの授業等を実施しながらの中で教員を確保できるか?
②そろったとしても専科ではないのだから、知識・技能面で厳しい現実。
③多くの子供たちにとって、とても楽しみなプール授業を何とか経験させてあげたいという教員側のサービス精神。もしかしたら無理をしているかも。
④プール指導に関する授業案のお手本やプール出張の運営方法、などマニュアルはあったのか。
⑤適正な出張人数は何人なのか?また足らないとき人が集められるのか?
⑥プール指導にPTAや保護者、地域の方々の助力(見守り)をお願いして実施すべきか?お願いしても力のある方が見つかるか?ボランティアか有償か?そんな責任ある立場をお願いしても、やってもらえる人が集まるかどうか。
⑦見学者問題。最近、とても暑いのにプールサイドで見学させるなんてとんでもない、という記事もでている。これも簡単ではない。その児童生徒の管理をどうするか?
⑧女子の児童生徒の生理問題。生理はケガや病気ではないので、その場合どう対処するのか。
⑨プール授業の補習問題。これは持久走授業も同様の難しさをはらんでいる。単位習得、評価の問題もある。
⑩以前はよく行われていた校内水泳大会。もうほとんど行っていない中、実施している学校のノウハウは。
⑪飛び込みによる事故の問題も。今は飛び込み禁止になっているが、部活動内では大きな問題であろう。試合は飛び込むのだから。水泳の初心者が部員として入ってくる状況もある。

いろいろな厳しい現実があることも事実である。

今後

今後、検証が徐々に進むことになる。
このような悲惨な事故が繰り返されることのないように、しっかりと検証され、その結果を全国の学校へ共有周知することが大切だ。
ネットの意見の中に
「起こるはずのないことが起こった」
という意見が出ていた。元教員だそうだ。
その方はどの程度の安全管理をされていたのかわからないが、私は誰の授業であっても、準備万端していても、事故は起こりえると考えている。
今まで起こっていないなら起こらない、とか、いい加減にやったんだろう、とか、言うのは簡単だ。この方は今まで運が良かったと思った方がいい。
溺れるい以外にも心臓疾患を含め持病問題もあり得るし、近年青少年の体力低下は顕著だ。障害をもっているなど配慮を要する児童生徒も多い。

もちろん事故が起こるのは仕方がないことなんて言うつもりはさらさらない。
しかし、事故が起こることを前提として、事故防止策を事前にしっかりと対策しておくことが必要だと考えておくべきだ。
また、水泳に関してはスイミングクラブの存在が大きい。スイミングクラブの指導方法や管理方法を学校へ流していくべきだ。学校プールを廃止して、スイミングクラブに丸投げするのもやり方の一つであると思うが、学校プールを児童生徒の体力の向上や夏の楽しみとして役割を残して、安全に楽しみ、そして安全に運営できるようにしていくことも大切なことだと考える。

これでまた、教員がリスクのあることは計画したくない、学校ではもう必要ない、という議論に拍車がかかるだろうが、極端な方向に流れることのないように、子供たちのためによく議論してほしい。

また、中堅バリバリの教員がもともと少数な中でベテランの教員が退職していき、変わって多くの若い教員が採用されてきている。
指導経験の少ない若い教員が無事故で乗り切っていくためにも、このような知識技能のコツが伝達されて、安全な学校として運営されることを望んでいる。


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