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『噛みあわない会話と、ある過去について』を読んだら、なんかすごかった。

読んでいてかなりゾワっとした、辻村美月さんの短編小説。
4つの小説ともになんかすごいものを読んでしまったぞ、という気になった。

表紙、めっちゃ可愛い感じ


ポップな表紙と最初の数ページ読んだ感じが好みだったので、軽い気持ちで買ってみたのだけど、1つ目の「ナベちゃんのヨメ」を読んだ段階で、あれこりゃちょっとなんか思ってた感じではないぞ、と気づいた。
そして、2つ目の「パッとしない子」を読んで、完全に違ったことに気づいた。そして、腹部に鈍いダメージを負った。

これは本腰入れて、読むやつやった。
とにかくキレッキレの言葉の応酬で、読んだ後はなんか「すごいもの読んじゃった」という気分になる。

アク強めのキャラが出てくるけれど、どの人も身近にいるような人で、読んでいてなんとなく「あの子に似てる」と思ってしまうのが怖いところ。

それぞれの小説、キリはいいんだけど個人的にはもうちょっと読みたい!と思った。
怖いもの見たさというか、このあとみんなどうなったの!?と出てくるキャラのSNSとかめちゃくちゃ検索したくなった。(気になった人のことネトストしちゃうタイプなので)

どんな写真や文章を投稿するんだろう。
どんな交友関係なんだろう。
そんなことがすごく気になってしまった。

ぞわぞわ。

*

「パッとしない子」と「早穂とゆかり」は設定が似ていて、特に読むのがつらかった。
見ていられないというか、痛いというか、やめたげて、というか…

どちらも、過去にした行動や言葉について、現在の自分が責められる/なじられる/復讐される、みたいな感じ。

物理的な攻撃ではなく、あくまで言葉のみでの応酬なんだけれど、それがもうすさまじくて、相手の急所を的確についてくる言葉選びだった。
しかも、過去の自分だけではなく、現在の自分もまるごと否定してくる感じもすごくて、なんかもう逃げ場がなかった。

言われている側に感情移入してしまうと、書いてある描写どおり「逃げ出したくなる」感覚になったし、胃のあたりがキュウっとなって、もうわかった、ごめん、本当にごめん、やめて…と言いたくなるような。

「……私、そんなに悪いことした?」と美穂が言う
「覚えていない」と早穂が言う

過去を責められても、もうどうしようもできない。
そんな逃げ場のないじりじりした感じが伝わった言葉だった気がする。

大人になって、他人からこんな敵意を感じる機会ってそうない。
子供の敵意の比にならないくらい敵意だし、何年ものの敵意だ。
大人になってからの傷は癒えにくいのに。

しかも、相手対わたしじゃなくて、相手+相手側の味方対わたし、なのもますますつらい。

あの人は、昔あんなことを言って/していて、だから嫌いなの。
ほら、とっても浅はかでしょう。

と紹介されているようで、自尊心も保っていられない。怖すぎる。

*

そして何が一番怖いかって、全然他人事じゃないこと。

過去に何気なく言った言葉、もしくは自覚的に言った言葉が
相手を呪ってしまっている可能性が、自分にもあり得るからだ。
心あたりがゼロじゃないことが怖い。
自分もいつ美穂や早穂になるかわからない。

逆もまたしかりで、わたしも過去に先生に言われた言葉で絶対に許せない言葉があったりもする。今でも夢に出てきて悪役を演じる先生だ。

だから、どうだってことなんだけど。
どうしようもないんだけど、そのどうしようもなさも苦々しく心に残った。
なんかすごかった。
こんなにも言葉で傷つけられるんだと思うほど、すごかった。

*

全然関係ないけど、本についてきたこのポストカードかわいかった。
こういうポストカードってかわいいけど、使い道わからず溜めちゃう。
わたしだけ?

おわり



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