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原型師インタビュー・曽我菜月

「原型師」にもっと光を。
その声の下に立ち上がったプロジェクト、 MINAMOTO


今回は「MINAMOTO×絵師100人展」で絵師とコラボをした原型師へインタビュー。


今回インタビューに回答してくれたのは株式会社イクリエ 原型チーム「曽我菜月」様。

曽我菜月 様@kikacrea_icrea
株式会社イクリエ 原型チーム 原型師
美少女などのスケールフィギュアを3Dソフトで制作している


――原型師になろうと思ったきっかけを教えてください

はじめは購入したガレージキットの組み立て方がわからず、詳しい人に作り方を教えてもらおうとフィギュアの交流会に参加しました。そこで参加者たちが楽しそうにフィギュアを作っている様子を見て「フィギュアって作れるんだ!」と知ったのがきっかけです。ガレージキットを完成させたくて交流会に参加しましたが、フィギュア作りの方へのめり込んでいきました。

その出会いまでは「フィギュアは素人が作れるものではない」「難しそうだし無理」という先入観がありましたが、作る方法や材料を知るとハードルが低く感じるようになりました。やはり自分の好きなキャラクターのフィギュアが欲しいという気持ちがあったので「作ってみよう」と思いました。

フィギュア制作を始める前は漫画家を目指していたので、立体よりも絵を描いていました。フィギュアを作り始めてから「自分の世界を生み出してそれを伝えたい」というより「キャラクターの魅力を伝えたい」ほうが強いと感じている自分に気が付きました。


――原型師のお仕事で楽しさや、やりがいを感じる瞬間について教えてください

元々私はオタクなので「キャラクター」というものが好きです。ですから、キャラクターを二次元の世界から現実の三次元に出現させることに関心があります。キャラクターにうまく似せられたときや、キャラクターの造形をうまく三次元的造形に落とし込めたときはとても楽しいですし、それで喜んでもらえると嬉しく思います。まるでキャラクターが現実世界に生きているような、360度回して見ることができるところが立体の魅力だろうと思います。

キャラクターフィギュアは三次元だからといって、単にリアルなものに寄せればよいわけではないです。どのようにデフォルメを効かせるかという点が案外難しく重要です。それから、最近の傾向として「絵に似ているか」という点も非常に重視されます。イラストに描かれている皺の線や髪のなびき方などをどのようにして三次元として成立させるか。原型制作にはこのような難しさがあると思います。
絵師さんが描かれているイラストの世界をどうしたら360度の世界にできるか、という点は悩みどころです。できるだけ「イラストに描かれている要素は全部取り込めるように」という気持ちで一生懸命に絵を追っています。難しいですが、それが楽しいです。

フィギュア制作に関わる人はみんなフィギュアが好きなのだと思います。あまり表には出てこないけれど支えてくれる人の存在は大事です。

★イクリエ社で原型の「磨き」を担当している方からも同質問への回答を頂きましたので、併せてご紹介いたします。
磨く作業は何しろ地味です。原型師やフィニッシャーと比べれば出力・複製・磨きという工程は魅力をお伝えするのが困難かもしれません。

「磨く」というのは傷をつける行為です。細かく均一な傷がついた表面が人間の目には綺麗に見え、ずっとやり続けると鏡面にもなり得ます。原型の形を損なわないように傷をつけていくという二律背反的な行為は自然とその形への理解を深めます。原型を仕上げた時点でおそらく磨いた人がそのフィギュアに宇宙一詳しいのではないでしょうか。
その原型が、やがて後の工程を経て多くの人に渡っていくことを想像し、ちょっと優越感に浸ってからまた紙やすりを取って頑張っています。



曽我様が共作のターンを担当した【Conductor】

――ご自身の作品に通ずるアピールポイントやこだわり・特徴を教えてください

やはりキャラクターの顔には力を入れて頑張っています。さらに最近は身体やポーズの強化を進めるなど、精進を重ねている毎日です。私は美術高校出身で、当時専攻していた日本画の制作では大きな作品を描く前に小さなデモのような作品を作っていた経験から、最近はパソコンで原型を作る前に粘土でデモを作るなど試しています。
立体物のよいところは「360度で成立している感動」だと思うので、決め位置(正面)以外でも楽しめるような作品を作っていきたいと思っています。こだわっているところといえば全部こだわっています! 自分はまだこれからもっと進化していけると思っているので、今後ももっとよくしていきたいと思っています。

1つのものにこだわって作るのが好きで、漫画を描いていたときはコマにたくさん絵を描かなくてはならないことをかなりしんどく感じていました。それよりも、1つのものに時間をかけてよいものを作るほうが私にとっては幸せに思えたので自分にはフィギュア制作のほうが合っていたのだと思います。「作品をよくしたい」という執着心があるので、苦しい思いをしたとしても100%よいものを目指して自分と戦っています。

勤めているイクリエが様々なことにトライさせてくれる環境なので、今回のコラボ制作でも自分が「こうしたら上手くいくのではないか」と思った新しい作り方を試すことができてとても楽しかったです。


曽我様がオリジナル制作のターンを担当した【共生カンケイ】

――今回オリジナル制作のターンを担当した【共生カンケイ】についての紹介、見どころを教えてください

「共生カンケイ」は学生時代に描いたキャラクターを叩き台にして作りました。今回の作品自体は「可愛い女の子のフィギュア」にしようと思っていたので、このキャラクターにキャラクター性をつけるためにはどうしたらよいだろうと考えたとき、わかりやすく「擬人化しよう!」と考えました。アリとアブラムシを可愛い女の子にしてしまおう、と。だから「魅力的な女の子たちのフィギュア」という点が見どころになるとよいなと思っています。キャラクターデザインは普段やらないだけに、頑張りました!

――ご自身の原型作品が、絵師とのコラボでどのようなものになることを期待しているか教えてください

とても楽しみです。以前、おしおしおさんとお話させていただく機会があり、第一ターンの制作についてお互いどのような想いを持っていたのかを共有させていただきました。

絵師さんは自身の世界観を形にし、オリジナルとしての魅力を成立させる力がとても強いと思うので、どのような形でより彼女たちが生き生きとするのかが楽しみですね。所作や表情、雰囲気などがパワーアップしていくのだろうと思っています。2人の関係性がより明確に見えてくるのではないかな。
今回はよい機会を頂けて楽しかったです。


以上、曽我菜月様のインタビューをお届けしました。

「絵師100人展×MINAMOTO」コラボ作品の展示は2022年8月19日(金)~21日(日)に東京・秋葉原のAKIHABARAゲーマーズ本店7Fで展示予定。期間限定の展示となるので、お見逃しなく!

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