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(毎週ショートショートnote)お題・呪いの臭み

例えば、ふとすれ違う時に香る甘い匂い。

柔らかな果実のようなそれは、洗い立てのシャンプーの匂い?人工的なフレグランスの香り?はたまた本人から自然発生する体臭なのか?
探し求める理想の君の甘い匂いに包まれる自分を、もうずっと想像して生きて来た。

兎にも角にもだよ、良い匂いがするはずなんだ。
甘い柔らかな桃のような、優しく包み込むような香り、パーフェクト!!

実はいつの記憶かも定かでは無いくせに、その理想の匂いを嗅いだ時からそれはもう『呪い』のように離れない。
探して求めて、、時ばかり過ぎ恋らしい恋もせず、気乗りのしないお見合いで勧められるがままにゴールインして半世紀。

まぁ、理想の君の匂いなんてもんは存在しなかったのだろうなぁ。
こんな自分に寄り添ってくれた妻をしかと見届ける歳になり思う。

しかしその最期の瞬間に匂ったのだ、臭ったと言っても過言ではないあの甘い匂い。
それは妻の身体から発せられたまるで記憶と違わずな匂い。

幼い頃大大大好きだった祖母の最期に嗅いだものと同じ匂いとようやく分かった。

大好きな君から香る忘れられない甘い匂い『呪い』のように僕の人生に纏わりついた美しい死の臭み。

お詫び)初めての投稿につき、ショートショートの゙文字数の上限をかなりオーバーしてしまいました。お目汚しかもですが参加させて下さいませ。

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