太宰「映画好きは弱虫である」

太宰治の文章を280個まとめ買いしてちょっとづつ読む。

「弱者の糧」
文学と違って映画の観方が素朴すぎて、太宰ってこんな?と驚く。
映画を観るとほぼ泣いてしまう。
どんな酷評されてようが泣く。
翌日に思い出してまた泣く。
「映画を芸術だと思っていない。おしるこだと思っている」
「けれども人は芸術よりもおしるこに感謝したいときがある」

「川端康成へ」
文藝春秋で川端康成に小説を酷評された返答。
自作がどれだけ自信作かを書いたあと、悪口の合間にひとこと
「刺す。」
と書いてある。
今読んだのだと、これが一番直接的に怒っている。

「或る忠告」
詩人に言われた悪口のメモ。
売れて、名士と言われてうかれているのが作品から伝わってくるぞ、戦地に行った人のことを考えろ、とさんざん言われたことをわざわざメモして発表してるのがもうおもしろい

「~と、或る詩人が私の家へ来て私に向かって言いました。その人は、酒に酔ってはいませんでした。」
最後のうんざりした返し方!

昔のアンチコメにうんざりしている随筆がいくつも収録されている。
「人間失格」ひとつよりも、短いものをいくつも読むほうが本当のこの人らしさをわかった気になれる。
憂鬱で思い詰めてるイメージは末期だけで、人生の大部分はもっとおおらかで、だらしない自分にうんざりしながらも好きなことを楽しみたいなあ、と思いながら生きていたようだ。
使い古された言い方だけど、現代でこそ受け入れられそう。こんなに普通に面白い人なのに、二十年ぐらい食わず嫌いしてしまった。

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。