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『愛の不時着』『トッケビ』…総合エンターテインメント企業「STUDIO DRAGON」はアジアを代表するヒットメーカーに

 안녕하세요(アンニョンハセヨ) 南うさぎです。

 2010年代中盤から非地上波放送のドラマがトレンドの中心となった韓国ドラマ業界。中でも「tvN」と「JTBC」ドラマの成長について、前の記事で書きました。

 韓国のエンターテインメント業界全体の規模が大きくなるとともに、ドラマの制作費、キャスティング費も高くなりました。ドラマ市場もグローバル化し、ドラマを見るプラットフォームもテレビだけではなく、YouTubeやNetflixなどの新しい動画配信サービス「OTT(オーバー・ザ・トップ)」が台頭。こうした背景にともないドラマ制作の状況も大きく変化していきます。その先頭といえる会社がtvNドラマを多く制作している「STUDIO DRAGON(スタジオドラゴン)」と、JTBCドラマの「JTBC STUDIOS(JTBCスタジオ)」です。

 日本でもおなじみの財閥・サムソングループから分離した企業体・CJグループの一員である「CJ ENM」の子会社がスタジオドラゴン、新聞社・中央日報系列のグループ企業「Jcontentree」の子会社がJTBCスタジオで、いずれも韓国の大企業から派生した企業です。それぞれ系列のドラマ制作会社があり、親会社もさまざまな事業を展開しています。複雑そうですが、その関係性を知ると、韓国のドラマ市場をリードする企業の事情や目指しているところがわかると思います。現在、韓国のエンターテインメント企業はドラマ制作だけではない“総合エンターテインメント会社”として事業を拡大しながら、積極的にM&Aや協業をしてスピーディーにK-CONTENTS(韓国製の作品)を世界に広げることに成功しています。

 また、国内外への放送権販売やVODの流通までを一貫して行い、クリエイターたちは創作だけに集中できるという環境も作りました。現在スタジオドラゴンとJTBCスタジオはプラットフォームと制作会社の間で中心となって橋渡しをするHub(ハブ)の役割をして、最近の韓国ドラマブーム・新韓流やK-CONTENTSを支えています。ブームを引っ張っていく二つの企業が、これからどのように韓国文化を世界に発信していくのか楽しみです。

アジアのCONTENTSとライフスタイルを先導するトレンドリーダー「STUDIO DRAGON(スタジオドラゴン)」

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公式サイト(http://www.studiodragon.net)から。
「STUDIO DRAGON」ホームページのメイン画像

 スタジオドラゴンは総合エンターテインメント企業「CJ ENM」のドラマ事業部門からスタートし、子会社として2016年5月に設立されました。スタジオドラゴンが制作したドラマの多くを放送するtvNも同じ「CJ ENM」系列です。「CJグループ」は映画製作や配給、インターネットサービスまで手がけています。
 韓国で作られるドラマの数は年間約120本で、その内の30本はスタジオドラゴンが制作しています。また、2020年からのNetflixとの契約は3年間で21本なので1年に約7本、その内の3本はNetflixオリジナルのドラマとして制作することになっています。
 また2021年〜2023年の3年間、シンガポール観光庁と提携し、これから制作する4本のドラマの海外ロケ地としてサポートを受けられるようになりました。『愛の不時着』のスイスや『トッケビ』のカナダなど、スタジオドラゴン制作のドラマに登場する海外の観光地は広告効果も高いので、ロケ地もPPL(韓国ドラマに見られる間接広告)なのだと思います。 

 CJグループは食品からビューティーまで、あらゆる文化事業を行っているので、ドラマを通じてどのように事業と結んでいくのかも気になりますが、韓国ドラマの世界的な人気によって、ドラマの中で自然に韓国文化がアピールできるのはうれしいことです。

*スタジオドラゴン制作のおもなドラマ*

トッケビ~君がくれた愛しい日々~

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公式サイト(http://www.studiodragon.net)から。
2016年作(tvN 放送)
共同制作:Hwa&Dam Pictures화앤담픽쳐스(スタジオドラゴン子会社)
最高視聴率:20.5%
制作費:約150億ウォン
脚本 :キム・ウンスク
監督 :イ・ウンボク

ミスター・サンシャイン

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公式サイト(http://www.studiodragon.net)から。
2018年作(tvN 放送)
共同制作:Hwa&Dam Pictures화앤담픽쳐스
最高視聴率:18.1%
制作費:約400億ウォン
<ネットフリックスは製作費280億ウォンで独点配給版権を収得>
脚本 :キム・ウンスク
監督 :イ・ウンボク

ホテルデルーナ

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公式サイト(http://gtist.com)から。
2019年作(tvN 放送)
共同制作:GREAT TEAM&ARTIST 지티스트
ハリウッドの制作会社「Skydance Media」とリメイクバージョンを共同企画・制作する予定で、ハリウッドの制作会社と共同企画・制作をするのは韓国ドラマ業界初。
最高視聴率:12.0%
制作費:約400億ウォン
脚本 :オ・チュンファン、キム・ジョンヒョン
監督 :ホン・ジョンウン、ホン・ミラン

愛の不時着

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公式サイト(http://www.studiodragon.net)から。
2020年作(tvN 放送)
共同制作:Culture Depot 문화창고(スタジオドラゴン子会社)
最高視聴率:18.1%
脚本 :キム・ウンスク
監督 :イ・ウンボク


スタジオドラゴンの持ち株比率
CJ ENM   51.92%
NAVER   6.26%
NETFLIX 4.99%

スタジオドラゴンの子会社・関連会社
*Hwa&Dam Pictures 화앤담픽쳐스
→ ドラマ制作、マネージメント

*Culture Depot 문화창고 

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公式サイト(http://www.culturedepot.kr)から。
→ 展示企画、ドラマ制作、芸能マネージメント
所属俳優:チョン・ジヒョン『星から来たあなた』『青い海の伝説』など

*GREAT TEAM&ARTIST 지티스트

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公式サイト(http://gtist.com)から。
→ ドラマ企画、制作、流通
所属作家:ノ・ヒキョン『大丈夫、愛だ』『ディア・マイ・フレンズ』など
所属監督:キム・テキョン『LIVE』『ディア・マイ・フレンズ』など
所属監督:キム・ギュテ『アイリス』『麗〜花萌ゆる8人の皇子たち〜』など

その他
*KPJ  케이피제이  →『宮廷女官チャングムの誓い』の制作会社
*Merrycow  메리카우 →『アルハンブラ宮殿の思い出』の制作会社
*無比楽 무비락 →『半分の半分』の制作会社(ザ・ユニコンと共同制作)

*CJグループ*

 CJグループは、韓国の生活や文化をリードする大企業で、おもな事業は4つに分かれます。CJグループ創業者イ・メンヒはサムソン創業者イ・ビョンチョルの長男です。現在CJグループ会長はイ・メンヒの長男イ・ジェヒョンになるので、現サムソンの会長であるイ・ジェヨンは従兄弟になります。
 サムソンを承継したのが長男ではなく三男であるイ・ゴンヒ前会長だったので、兄弟の仲も、二つのグループの関係も悪かったようですが、2020年10月、イ・ゴンヒ前会長のお葬式でCJグループ会長が弔問する姿が報道され、二つグループの復縁と、協業を期待する声が多くなっています。
 CJグループ会長イ・ジェヒョンは韓国の映画産業を長く支援していて、韓国エンターテインメント産業の発展に大きく貢献しています。

*CJグループの4大事業

食品&食品サービス
→ [CJ제일제당 CJ CheilJedang] [CJ푸드빌 CJ Foodville] [CJ프레시웨이 Freshway]

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公式サイト(https://m.cj.co.kr)から。
 韓国を代表する加工食品として[Bibigo]ブランドは全世界に広がっています。最近[Bibigo]餃子が話題になり、日本でも販売されていて人気が高いです。日本のスーパーでもよく見かける商品が多いです。

生命工学
→[CJ제일제당 CJ CheilJedang Bio 事業部門、CJ푸드&케어 CJ Food&Care]

物流&新流通
→ [CJ 대한통운CJ Logistics] [CJ 대한통운 建設部門CJ Logistics E&C Div.] [CJ 올리브영 CJ Olive Young] [CJ 올리브영 네트위스 CJ Olive Networks]

エンターテインメント&メディア
→ [CJ ENM][CJ CGV] [CJ 4DPLEX] [CJ 파워캐스트PowerCast]

 スタジオドラゴンはCJグループの<エンターテインメント&メディア>事業「CJ ENM」のドラマ事業部門を分割してできた会社です。CJ ENMは2020年アカデミー4部門受賞作<パラサイト 半地下の家族>を制作しています。CJ ENMについては、いずれ映画編で詳しくご紹介します。

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