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【覚書】いつでもいるよ

娘が幼稚園に入った頃、
娘は私と離れる時、ギャン泣きしていた。
私にしがみつき、「やだー!!!ママー!!!」と叫び散らしていた。
毎日毎日、入園してから一年以上、大泣きしていた。

これが一人目だと、私も
ううっかわいそうに、離れるの辛いわ、大丈夫かしらハラハラ…と
気が気でなかったと思うのだが、
私は知っている。

私がすんなりと
「いってらっしゃーい!」と送り出した後、
彼女の涙がすぐさまひっこんでいる事を。
登園時に入り口で迎えてくれる先生と、クラスの先生は別なのだが、
クラスの先生からはよく言われていた。
「えっ(娘)ちゃん、泣いてるんですか?
教室に来た時には、元気いっぱいですよ!」と。
まあ、今でも周りの顔を見ながら泣く時がある。
しばらく様子を見ていると、涙は引っ込んでいる。
「ここは泣く時」みたいな判断をする娘なのだ。

一人目の息子の時には、もう息子が心配で心配でならなかったのだが、
息子は、人前で泣く事を良しとせず、
スンとした表情で去っていったものだ。
多分、彼の方が内心は不安でたまらなかったはずだ。
なんせ、彼はお泊まり保育の時に大泣きしていた。(不安がマックスになったのだろう)
息子は、しかし、スンとした表情で去っていったが、
どうも私がいつも幼稚園のどこかしらにいると思っていたらしい。
幼稚園には、当時、集会所のようなスペースがあった。
図書室のような感じにもなっており、お母さん方がいつでも本を借りることが
できた。
幼稚園終わりで、そこを借りてお遊び会を催すことにも
使われていた。
一番初めの、幼稚園に体験保育にいった際に、
お母さんたちはそこにいる、と聞いてから
ずーっと私はそこにいると思っていたようだ。
ある日「お母さんがどこにいるか知ってるよ」と
自信満々に言われた。

時は移り、息子がちょうど卒園する頃から、
幼稚園の建て替えが始まった。
息子は工事が始まってから、お母さんのいる場所がなくなった…と思っていたようだ。
娘が入園した頃には、新しい園舎になり、集会所のようなスペースは
なくなってしまった。
泣いて叫ぶ娘に、
ママはいつも(娘)ちゃんのポケットの中にいるからね
と言い聞かせ続けた。
娘はことあるごとに、
「ママ!今日話しかけたのに、ポケットにいなかったでしょ!」と
私に怒って確かめようとするようになった。
「(娘)ちゃん、ママがポケットに入ってることは誰にも内緒だからね。
幼稚園で気軽に話しかけちゃダメだよ。」
「ああ、その時はちょっとお買い物に行ってた」
などと言い訳をしたり、
「今日はずーっと見てたよ。○○してたでしょ。」と
幼稚園からの案内で知らされている行事を言い当てたりしては、
「すごーい、本当にいるの?」と笑顔の娘を満足げに眺めたりしていた。

娘も小学生になり、
「本当は、知ってたよ。ママがポケットにはおらんってこと」と
さかしらに言ってくる娘に、私も言い返す。
「ママも知ってたで、ほんまは(娘)ちゃんが、
大泣きしてたけど、ママが見えんくなったらすぐに泣き止んで
全然平気やったこと。」と。
すると、娘は
へへへ、と照れくさそうに笑う。

全然平気で母は構わない。
それでいい。
平気に元気に遊び回ってくれるほど、ママにとって幸せなことはない。

でも、本当の本当は、
ママにそんな特殊能力があったらなあ〜
家とポケットの中を瞬時に往復できる特殊能力があったらな〜と
思うことも、たまにある。


#どこでも住めるとしたら

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