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【読書記録】「自転しながら公転する」/山本文緒

山本文緒さんの本を久しぶりに読む。
山本さんの本にはピリリとした緊張感があり、
引っ掻き傷のようなものが、読んだ後、心に残る。

現代的な感覚と捨てきれない古風な考えが
ないまぜになり、
そこで揺れる主人公の感情が、
私にも身に覚えを感じさせる。

私はどっちだろう。
どっちもあるな。

貫一はアリだろうか。ナシだろうか。
手を取るべきか。否か。
貫一に惹かれる主人公・都の気持ちもわかるし、
そこに不安を感じたり、打算で考える心情も理解できる。

物語はベトナムでの挙式シーンから始まる。
貫一とお宮、「金色夜叉」のエピソードに
結末を予想しながら読む。
プロローグとエピローグは単行本化の際に、
後から付けられたものらしいのだが、
なるほど、このプロローグとエピローグが
在るのとないのとでは、
物語の見え方がまるで違ってくる。
このプロローグとエピローグで
完成なのだと納得。

結婚は確かに愛情だけでは成立しないし、
打算だけでも成り立たない。
主人公・都が使った「連帯」という言葉に、
確かに、そうだな、と思う。
私は、割と考えなしに結婚を決めてしまったところはあるが、
普遍的なことなど何一つなくて、
たった十数年でも、本当にいろんなことがある。
こんちくしょう、と思うこともたくさんあるが、
その都度、飲み込んだり吐き出したりしながら
闘い続けていくしかない。
そうしたものも含めて、エピローグによって
全体が完成されているように思う。
結婚を選ぶも選ばないも、
その人を選ぶも選ばないも、
いろんな形のある昨今の事情を踏まえた上で
一つの物語の完結を見た。


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