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【ドラマ感想】よくおごってくれる綺麗なお姉さん

「愛の不時着」が非日常なら、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」は日常を描いた作品だと思う。

カフェのフランチャイズを運営する会社に勤めるユン・ジナ。母親は肩書こそ大事!と言って憚らない主義。弁護士の恋人と早く結婚するように毎日娘をまくしたてる。けれど、弁護士の恋人は、二股をかけていて、ジナは振られてしまう。そんな時に、幼馴染の親友の弟、ソ・ジュニと再会する。二人はやがて恋に落ちるが、姉弟同然に育った二人の交際を周囲はなかなか認めてくれない。まして、両親がおらず、美大を中退してゲーム会社に勤めるジュニを母親は「条件に合わない」とはねつける。

ストーリーは平凡の一言に尽きるけれど、その平凡さをいかにリアルに、いかに細部まで描ききっているか、それがこのドラマの魅力だと思う。

ジナは会社でセクハラに遭っていて、家では結婚を急かされる。日本にもある女性の生きづらさを描いている。
自分の価値観が正しいと主張して決して譲らない母親。
私は違ったから、嫌悪感を持たずに見ることができたけれど、世の中にはこういう母親もいると聞くから、あまりにリアルな母親の描き方に引く人もいるのでは、と思う。
母親が幼馴染同然に育ててきた姉弟に始めこそ表面的に取り繕っていたのに、いよいよ言うことを聞かないと、本音をさらけ出すシーンには、「もうやめて」と耳をふさぎたくなる。

険悪なムードになってからのじれったさは、拭えないけれど、恋が始まる瞬間の描き方は素敵。

お互いにまだ気持ちを確かめあっておらず、自信がなくて踏み出せないジュニがお互いの同僚の前で「好きな女がいるのか」という話になった時に、ジナの手前はっきり言い出せず言葉を濁していたら、ジュニを狙うジナの同僚がアプローチをかけようとして、ジナがすかさずジュニの手をみんなに見えないように握る。
それによって、お互いの気持ちを確かめ合う。
こういう細かい描写が私は大好き。
音楽ベースの会話のない、二人のシーンが多くて、日本のドラマだったら省略されがちなところを、韓国ドラマはこれでもかっていうぐらいに入れてくる。
恋愛はこういう思い出の積み重ねだから、私はこういうシーンこそ大事だと思っている。

ジュニに大切にされることによって、自分が今まで恋人からどんなに大切にされていなかったかを知るジナ。

「本当に好き」って、「どれだけ相手を大切にできるか」だよなあ。

韓国ドラマの脚本が細かすぎて、ドラマを見終わるたびに一つ恋を経験したような気持ちになる。

ジュニに大切にされることによって、自分自身を大切にしなければいけないと悟るジナは、会社でのセクハラに抗議するようになる。

最後まで強かに生きる女性の姿に、静かに心動かされたドラマだった。



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