ラーメン屋、辞めます②
今日、行きつけの居酒屋で県内で数店舗展開している人気チェーンラーメン店の社長2人とたまたま隣り合わせになり、話す機会がありました
向こうは何店舗も経営して沢山のスタッフを雇っている敏腕経営者
こちとら何度も挫折と失敗を繰り返す弱小個人経営店(そして現在店舗なし)
僕のことなど
【眼中なし】
だと思っていたら、県内では僕はそれなりに注目されていたみたいで
「南さんですよね?」
と知っていただけていました
「凄い手間かけてるなぁと思っていました」
とのこと
恐縮です
やっぱりラーメン屋と名乗りたくない
その有名店は豚骨ラーメンのお店です
御二方ともとても人気のある店で、県内の方ならラーメンに興味がなくても屋号は必ず聞いたことがあるのではないでしょうか
実は僕も豚骨、横浜家系ラーメンの出身
湘南時代のらーめん南は豚骨専門店として12年やっていましたので、豚骨へも家系ラーメンにもそれなりに愛着もあります
作り方の話になった時、有名店はもう骨と水で一から焚き出すのではなく、PV(業務用スープ)に生骨を加えて作っているということを教わりました
僕が横浜で学んだ作り方とは全く違うやり方です
彼らのことを否定はしません
が
同じジャンルではないと強く思います
やっぱり自分のことをラーメン屋と名乗りたくないなぁ
そんな想いがより強くなりました
俺はSoup Noodle Cuisineです
このタイミングで店を閉めてよかったのかな
先日TVニュースで食材の高騰で飲食店が軒並み閉店をしている、という話をしていました
その中でとあるラーメン屋が閉店すると取材を受けていました
その店主曰く
「ラーメンは庶民の食べ物。これ以上食材の価格が上がると¥1000以下を維持できない。だから閉店することにした」
とのこと
なんでそこに価値を上乗せして¥1000以上で通用するラーメンを作ろうと努力しないのだろう??
なんで¥1000以下で出しなきゃいけないと信じ込んでいるんだろう??
誰が庶民の食べ物と定義付けしたんだろう??
そんなもの、ぶち壊せばいいのに
今の食材の価格の高騰は、コロナ禍が落ち着き始めた事による物不足とロシアのウクライナ侵攻による影響と、円安など様々な要因の重なりによって生まれている
解消は難しいし、これからも変化はし続けていくと考えている
今、世界的にモノの価値が変わろうとしているのではないだろうか?
今、店をしていなくてこの状況を冷静になって見れることは、もしかしたらラッキーなのかも知れない
らーめん南は次に店を出す時、全く違う価値観を提示してスタートすることができるのかも知れない
今日居酒屋で席を共にした有名ラーメン店主が僕に
「金なら貸すんで!」
と笑顔で叫んだ
僕も笑顔で
「遠慮させていただきます」
と応えた
あの方々とは、見ている地平が違う
Soup Noodle Cuisineとして生きる
その有名店主2人と会う前に行きつけの床屋で髪を切ってもらう
その床屋はとてもユニークで、美人三姉妹で営んでいる
店主は長女で、男性専門の床屋
次女はアロマオイルを用いたハンドマッサージ
三女が女性専門の美容師
この3人でひとつの店を表現している
男性専門のスペースは個室になっていて、静かな環境で髪を切ってもらえる
その店主エリナ嬢がこんな話をしてくれた
「この店を出した時、いっぱい批判されましたよ。一度スケルトンにして全部作り直した方がいい!とか。でも結局今、予約がこれ以上受けられないくらいに来ていただけているんですよね。自分を貫いて本当によかったです」
エリナ嬢は
「ビジネス書とか一切読まないし、同業者とも連まない」
とのこと
うんうん、わかるよ、それでいいんだ
「私、南さんの人に伝わりづらいことをこだわったりするの、とても好きですよ」
Soup Noodle Cuisine
ラーメン、ではなくて、スープと麺を用いた料理として表現していくことに迷いはない
表現するということ
居酒屋を出て、少しだけワインを飲もうとアペリティフを楽しめる店へと移動をした
そこで隣り合わせた方が食の分野で様々なことをオーガナイズする仕事をされている方だった
この方も僕のことを知っていただけていた
案外県内では知られているんだな
僕よりも一回りも年齢は上の方で、食とアートと社会学の関わり方で多いに盛り上がる
そう、食は人の感性にダイレクトに問いかけを果たすことのできるアートフォームなのだ
一杯売っていくら利益がでる(それも大事だけど)、よりももっと深いものを提示できるのが、食という文化なのだ
味だけではなく、ビジュアル、香り、時間の経過による食感の変化、店の設え、音、全てを使って五感に訴えかけることのできる芸術なのだと信じている
話は食から僕の敬愛する坂口安吾や中上健次にまで及び、自分の中の何かを表現することで誰かの心をアップリフトすることができるという話で盛り上がることができた
「南さんの次のステップ、楽しみにしています」
とその方はそう言葉を残して席を立たれた
そう、俺たちは表現者なのだ
自分が何かを表現することで、人の心とこの世の中を少しでも照らしたいのだ
色々なことを学んで考えた1日でした
本当に今現在店をしていなくてよかった
俺のことを苦労人みたいにいう人もいるけど、全然そんなことない
毎日前に進めている
それも店を閉めたからこそ思えたこと
今日会えた人全てに感謝します
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