見出し画像

コロナ禍で新たに始まった,地域の人と人とをつなぐGPSアートウォーキング/ 吉祥院体育振興会

南区情報ステーション「みなみなみなみオンライン」は,京都市南区役所が,南区に関わる誰もが南区をもっと知って・学んで・楽しんで・好きになってもらうことを目的に,南区の皆様によるまちづくり活動の紹介,区役所からのお知らせ等を,SNS等を用いて配信するWebサイトです。このnoteでは,まちづくり活動に取り組む方々,地域貢献活動などに取り組む企業・事業者の方への深堀りインタビューを掲載していきます。

吉祥院学区の体育振興会では,新型コロナウイルスの影響で例年開催してきた学区民運動会などのイベントの開催が難しくなったことを機に,2021年,地域交流と健康づくりの機会を作ることを目的に新たな活動として「GPSアートウォーキング」イベントを開催されました。今回は,同団体にコロナ禍における地域交流の企画づくりについてお話を伺いました。

お話をきいた人
西堀 正さん / 吉祥院体育振興会 会長
福井 和代さん / 吉祥院体育振興会 副会長

きっかけは学区民運動会などのイベントの中止から

スマートフォンに搭載されているGPS機能を使い,通った軌跡で画面の地図上に絵や文字を描く「GPSアート」。その「GPSアート」と「ウォーキング」を組み合わせた「GPSアートウォーキング」を始めたきっかけについて伺うと,2020年に,コロナ禍で様々な催しが中止となり,体育振興会の一大イベントである「学区民運動会」が開催できなかったことが始まりでした。

長年地域のスポーツ活動を支えてきた体育振興会として,翌年の行事をどのように開催していくかを考えていく中で,「中止することは簡単だが,ほかに何かできることがないのか」と考えるようになりました。運動会のように大勢が集うようなイベントを開催することは難しいだろうと判断し,三密を回避した行事を検討しました。

その際に,「GPSアートラン」というイベントの情報を見つけ,これをウォーキングでできるのではと考え,GPSランナーとして活動されている志水直樹さんの協力を得て,開催に向けて動き出しました。

開催までの道のり

2021年の春から準備を開始。学区の29の町内に,アンケートを取ってみると,当初は,積極的に参加したいという回答はありませんでした。新型コロナでイベント開催自体に慎重論が多かったことや,スマホを使いカタカナの多い新しい取組がイメージできずよくわからない,という不安も多かったと思われます。

そうした中でも,まずは興味のある方からと,町内に回覧板で案内を回してもらい,募集を始めましたが,体育振興会副会長の福井さんも,「高齢者の多い地域で,スマホを使いこなすことも難しく,“とにかくわからない”という状況からのスタートでした」と振り返ります。

今回開催した「GPSアートウォーキング」は,10月1日から11月30日までの2ヶ月間に家族や友人,会社や団体など好きな人たちと,好きなときに歩く方法で実施しました。好きな時に歩けば,密も避けられます。実際に歩いた「GPSアート」作品を応募してもらい,最後に表彰も行うことにしました。

まずは,8月に事前体験として,南区の地図を使って,道路上に一筆書きでアートを描いてみる「GPSアート講習会」を実施しました。夏休み中の開催だったので,小学生も参加し,また,学区の社会福祉協議会や老人会のメンバーなど17名ほどの方が参加してくれました。

10月には2つの講習会と,いくつかのチームに分かれて実際に地域を歩いてGPSアートを描きながら歩いてみるイベントを開催。車いすスポーツのプレーヤーに講師になってもらったり,障がいのある方々や支援者も一緒に講習会に参加するなどして,その人その人に合わせた参加も可能だという話を少しずつ共有していきました。こうした機会に,これまでの体育振興会の行事に関わりがなかった地元の企業との関係も,新たに増えていきました。

そのほかにも,洛南イオンのコミュニティスペースを使わせてもらい,GPSアートの楽しさを知ってもらう体験会や活動紹介展示も開催しました。

こうした活動によって,吉祥院学区内外の方々に関心を持っていただくことができました。

11月末には,作品募集期間の最後のイベントとして,ゴミ拾いを行いながらGPSアートウォーキングを行う「GPSプロギング」を開催。未就学児を含む親子から,地元の高齢者の方々まで,43名の方に参加いただきました。当日は,3つのチームに分かれ,それぞれどんな軌跡を描くかは内緒のままごみ拾いをしながら地域を歩きました。

スタート地点に戻ってから軌跡を突き合わせると,吉祥院学区の地図の中に,「E・C・O」の文字が浮かび上がりました。この様子は,新聞や全国放送のテレビ番組でも紹介され,参加者や関係者のよい思い出となっただけでなく,コロナ禍でもできる健康づくりの取組として,京都市内外からの多くの問い合わせと,吉祥院地域のPRにもつながりました。

これまで以上に広がった協力の輪

これだけの一連の行事を実施するにあたっては,例年の体育振興会の活動だけでは難しいと考え,西堀会長を中心に,様々なところに協力を依頼しました。地元の吉祥院いきいき市民活動センターには,講習会や2ヶ月間の作品募集期間の拠点の一つとして,早い時期から協力を仰ぎました。また,従来の学区民運動会の協賛団体だけでなく,新しく企業協賛を得るべく,たくさんの事業所を回りました。最終的には37社から協賛を得て,スマホだけではわかりにくいという世代の方向けの印刷物制作などに充てました。

地域に住む人同士のつながりづくりを目指して

最後に開催した「GPSプロギング」では,地元の小学校がチラシの配布に協力してくれました。そのおかげで,町内会に入っていない世帯の親子の参加もあり,「初めて地域の行事に参加できた」と喜ばれ,体育振興会の活動を知ってもらうことができました。今後も加入していない方々とも,このように何らかの場を通して出会い,自治会・町内会への加入につながれば。今回の試みは,その大きな一つのきっかけになったといえそうです。

今回の取組はその後,京都いきいきアワード2021を受賞するなど様々なところで注目を集め,ほかの体育振興会の方々からも,「どんな風に実現していけたのか?」と声をかけられました。他の地域の方々も,同じように学区民運動会のような大きなイベントが開催できない中,新しいやり方を模索されていることを感じました。

吉祥院体育振興会では,今回の経験を活かして,コロナ禍の今だからこそできる新しいことにも更に挑戦していきたいとのことでした。


南区情報ステーション「みなみなみなみオンライン」
取材/文 まちとしごと総合研究所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?