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暗くなっていることに気づかない
夕方、研究室の扉を開けた。日が暮れかけた暗がりに、後輩がふたり、静かにいた。
なんでこんな暗いところで作業してるの(笑)と話しかけると、ふたりとも、えっ?という顔。
ああ、気づかなかったんだ。日が暮れたことに。
ずっと作業に没頭していたんだな。そして今も、黙々とデータに向き合い続けている。
彼らは全然話さなくて、とても静かだけど、没頭するほど真摯に研究に向き合っていることは、しっかり伝わっている
追跡されるのはこわい
より精緻な広告戦略を!とか、言う。それで、web上での行動を追って、より詳細にターゲティングできますよ!とか、言う。
すごくすごく便利だけど、ぞっとする。
わたしがどこで何を検索して、どんなふうに寄り道して、いつ何を買ったのか。それが全部ばればれなのだ。
自分の跡がばれるのは、こわいな、と思う。
自分が考えていることも、何気なくした寄り道も、全部見透かされているような気がして。
跡は雄弁だ。た
中学生のときに歌った合唱曲
「カントリーロード」が好きだ。わりと昔から。でも、昔は歌詞の意味がよくわからなかった。
中学に入って、初めての合唱祭で歌った曲。最後のほう、なんで「帰りたい。帰れない。」なんだろう、どうして帰れないの?と不思議でたまらなかった。意味わかんないな〜と思っていた。
でもこの前、ちょうど当時から10年経って、ふとこの曲を聴いたとき、うわ、と思った。言葉にならない複雑な感情を、わたしはいつの間にか覚
3年ぶりのトウシューズ
3年ぶりにトウシューズを履いた。履けた。履けたことに驚いた。3年前に履いてたものが、今のわたしの足にもなじむ不思議。トウシューズはわたしが履くのをずっと待っていてくれたんだなと思った。
ポアントで立ってみた。不思議なことに、「なつかしい」とも、「あ〜これこれ!」とも思わなかった。かといって、初めてトウシューズを履いた幼い頃のような、新鮮な感動もなかった。
トウシューズを履くことが過去の思い出
ハードカバーの本に、栞の跡
ハードカバーの本に、しおりのひもの跡、ついていた。しおりで分けた2つのページに、うねったしおりの跡。これは、ハードカバーのかたさと、少しかたい紙の素材と、本と本に挟まれていた、本棚の中のひしめきや密度と、それからー彼が微動だにしかなかった時間の長さである。
そうか、そんなに長らくご無沙汰だったのか。
視界にはいつも入っていた。枕元の小さな本棚にいたので、毎晩寝るときに、タイトルがちらっと。そ