心はずっとここにある
とある街に、パワーストーンアクセサリーやアロマを提供するお店がある。
そのお店は、オーナーを初め石と対話できたり、意味を熟知している店員がおり、ストーンは品質も良く、アクセサリーも組紐を使ったあまりないデザインなので、よく買い求めに訪れていた。
数年前の3月頃だったか、しばらく行っていなかったので年末年始のご挨拶をしていないなと思い、ある日の午後、お店を訪ねた。
そこで思いも寄らない事実を知った。
仲良くさせていただいていた店員さんが亡くなったと。
確か40代後半、病名は、癌。
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彼女と初めて会ったのは、いつだったろう。
10年は経っていないが、出会って長い付き合いだ。
いや、正確には「だった」というべきだろう。
ここからは私のうろ覚えの情報なので、間違っていたら申し訳ない。
彼女の生まれは中国。
中国残留日本人孤児の両親の元に生まれ、家族と共に日本にやって来た。
中国で日本語を学習していたので、日常生活で困ることはなかったが、故郷といっても、気持ち的には異国の地、苦労も多かったと聞いている。
ちょっと訛った日本語で、ちゃきちゃきした江戸っ子気質を持っていた。
日本人と結婚し、子供は二人。
差別も受けていただろう。弟さんと結婚した中国人の家族とのいざこざなど、苦労も多かったようだが、それはそれは太陽のように明るく、常に前向きな人だった。
彼女は仏教に帰依し、ほぼ毎日、お寺で修行をしていた。
とても熱心で、何かの時にはオーナーやお客さんにお札などを仲介してくれていた。
お店では、中国での仕入れと、アクセサリーの製作をしていた。
本当に、本当にいい人だった。
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「なぜ、最後に会った時は全然そんな気配はなかったのに・・・」
私は、言葉にならない言葉で、オーナーに聞いてみた。
「癌でね・・・ずっと治療していたんだけども・・・」
オーナーからは、残念でならない気持ちがうかがい知れた。
亡くなって日が経っていたので、彼女が仕入れた石などの形見分けに参加する事ができなかったが、私の手元には、彼女に作ってもらった、彼女が仕入れた品々が残っている。
今まで以上に大切にしなければ、そんな想いがよぎった。
これは彼女の形見なのだ。
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今でも、彼女が作ったアクセサリーを身につけている。
お気に入りだからというのもあるし、何よりも彼女が作った、彼女が選んだ、大切な大切な、心。
石には意思がある。一つ一つに、アイデンティティーがある。
私はこの子達にお礼をいわなければならない。
彼女がいなければ、あなた達に会うこともなかった。
彼女の元に来ることを選んでくれてありがとう。
私を選んでくれてありがとう。
(了)
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