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老いて愛をなくす

自分が歳を取ると同時に親も老いる。

あるときは子供を褒めることをせず、あるときは子供の夢をことごとく壊していった母親。

家事をテキパキこなしていたのも今は昔。
掃除もいい加減、冷凍食材を冷蔵室に入れるのは日常茶飯事、食器洗いも雑に行う年老いた母。

今は、「年寄りなんだから優しくしてくれ」、あれやってこれやってと、自分でしなくなった年老いた母。
若かりし頃の精彩は影も形もなく、かつて子供が失敗して怒っていたことを、仕返しとばかりにやってくる年老いた母。

自分も精神的に余裕がないから、せめてできることはきちんとやって欲しいと願う。自分をイライラさせないで欲しい。

「あなたのためにならないから離れて暮らした方が良い」
そう自分の主治医に言われたことがある。できるものならそうしたい。
自分のペースで炊事洗濯をし、食事をし、家事をこなし、就寝したい。

それでも一緒にいるのは、自分が金銭的にも余裕がないからだけではなく、一人にして何かやらかして人様に迷惑をかけてもらっては困るから。

この世には尊敬できるご老人はたくさんいる。
しかし、老害と呼ばれ嫌われるご老人もたくさんいる。

母親を見ると思う。
尊敬に、人生の長さは全く関係ない。
尊敬できる人は、密度の濃い人生経験を歩んできた人。
年齢は関係ない。だから、むしろ若い人の方が尊敬できる人は多い。

少なくとも今、自分には母親に愛はない。
死んで欲しいとすら思ったことがある。
死んでくれないなら自分が死にたいと思ったことさえある。

そこで必ず出てくるであろう言葉がある。
「親を大切にしなさい」
「命は大切にしなさい」

そんな当たり前で通ってる偽善はいらない。
自分とは歩んできた人生が違うのだから。
知りもしないで一般論を基準にものを言って欲しくない。

あの頃の母親はもう戻らない。
その現実は重くのしかかる。

それでも心の隅にはある。
愛せるものなら愛してあげたい、と。

でも無理だ。
今はあなたを愛せない。

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