見出し画像

ローラースケートの登場する映画とドラマ② ザ・クラウンS4

 先日ネットフリックスのドラマ、ザ・クラウンのシーズン4が配信されて、あっという間に先ほど見終わってしまった。すごいシーズンだった。早く全部見たい、でも駆け足で見終わってしまうのがもったいない!と本気で葛藤してしまうほど、良かった。普通このテのシリーズものは、シーズンを重ねるうちにだんだん中だるみしてくるものなのに。このドラマ、もしかして今シーズンが一番良かったんじゃ?と思わせるようなすごい出来だった。

↑ 「ザ・クラウン」シーズン4予告

 これまでの3シーズンは世界史で習ったことのおさらいみたいな感じだったのだが、ストーリーが80年代に差し掛かって私も知っている時代になり、あれもこれも懐かしいものばかりだった。まずは音楽。デュラン・デュラン、ブロンディ、エルトン・ジョン、デビッド・ボウイ、10CC、クイーン、ビリー・ジョエル……。いやもう、本当に懐かしい。こりゃーきっとすぐに誰かがプレイリスト作るな、と思ったら、やっぱりすでにいくつもSpotifyにアップされていた。まったくみんな、仕事が早い!

↑ SpotifyのクラウンS4プレイリスト。各曲をクリックしてお楽しみあれ。この時代はイギリスの音楽シーンが元気な時代で、アメリカや日本の洋楽チャートでもイギリスのポップ・ソングが大ヒットしていた。

(ここからネタバレあり)

 そして今回、なんといっても凄かったのがエリザベス女王役の演技派オリビア・コールマンと、サッチャー首相役のジリアン・アンダーソンのシーン。私は最初、ずっとサッチャー役の人が誰なのか気付かずに見ていたのだが、妹に「あの人、X-ファイルのスカリーだよ」と教えてもらって、のけぞってしまった。ええええええ。嘘でしょ。でもそういえば、口元が同じだ……信じられない。

 サッチャー役といえば、あのメリル・ストリープも「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(The Iron Lady、2011)」でアカデミー主演女優賞を獲っている。アカデミー賞を獲りすぎて、もうちょっとやそっとじゃオスカーを貰えない状態のメリル・ストリープが、受賞するほど評価されたということだ。あれは、本当にすごい演技だった。年老いて認知症になったサッチャーの最後のシーンが、忘れられない。

 あのメリル・ストリープのサッチャーの後なんて、どんな女優でもやりにくいに決まっている。それが、である。今回のジリアン・アンダーソンのサッチャーが、負けてないどころか、もの凄い存在感だった。シーンによっては、あの演技派オリビア・コールマンがくわれてしまうほどの圧倒的な演技だった。この2人のシーンのじりじりとした熱量が、今シーズンの完成度の高さに最も貢献してると思う。

 ダイアナも、良かった。あれだけ皆に愛され、観る人それぞれに思い入れもあったりするダイアナを演じるのだから、並大抵のダイアナじゃ受け入れてもらえない難しい役どころなのに。若き新進女優のエマ・コリンが、ダイアナの魅力と未熟さをどちらもたっぷりフレッシュに表現していた。だけど、見てるこちらはダイアナの行く末を知っているから、つかの間の幸せに浸るダイアナの笑顔を見るだけでも、なんだか泣けてきてしょうがなかった。それにしてもこのドラマ、前シーズンまではチャールズの弱ささえ同情的に寄り添って描いていたのに、今シーズンではかなりはっきりとチャールズが悪者になっていて驚いた。王室の目線で描くドラマとはいえ、さすがにカミラとの浮気については情状酌量の余地なし、という感じなんだろうか。せっかくここ数年チャールズ&カミラの好感度がようやくあがってきたのに、みんなに2人の罪を思い出させちゃったな、これで。

 で、ダイアナがなんと。ウォークマンでデュラン・デュランを聞きながら、ローラースケートでバッキンガム宮殿の室内を滑るシーンがあるのだ。この部分は完全なフィクションらしいのだが、画としてのインパクトもすごいし、当時のカルチャーとダイアナという人を的確に表現してるし、思いついた人、天才!王室、そしてバッキンガム宮殿の荘厳な室内と伝統に、悲しいほどまったくそぐわないポップカルチャー寄りのダイアナ、というのを見事に表現してるのだ。ダイアナは、いつもこうやって自由を求めて空回りしてしまったんだな、というのも象徴的だった。

↑ デイリーメール紙のウェブサイト。ローラースケートのシーンの動画がアップされている。

 ダイアナがドラマの中で使用していたローラースケート靴は、私にはちょっと嬉しい、典型的なアーティスティック・ローラースケートの靴だった。白い革靴で、踵がちょっと高いやつだ。まぁでもこの当時、英語圏の女の子はみんなこれを履いていたかも。まだ靴の選択肢が少ない時代だった。この時に着ている洋服は、実際にダイアナが当時着ていたものに似せているらしい。ギンガムチェック、流行ったなぁそういえば。


 さすがにバッキンガム宮殿の室内でローラースケート、というのは作り話でも、ダイアナはインラインスケートで滑っているところをパパラッチに撮られてタブロイド紙の記事になったこともあったらしい。

↑ 1995年の新聞記事を紹介しているウェブサイト。記事には「プリンセス・オブ・ウィールズ(Wheels)」と彼女の称号(Princess of Wales)をもじってうまいこと言った見出しが付けられている。


 そして最後のシーンは、どっしりと重く悲しかった。クリスマスって、英語圏では日本のお正月のように久しぶりに家族が勢ぞろいして、家族愛を深め合う日なのに。後ろに流れる清らかで荘厳なクリスマスキャロルが、悲しかった。

 

 ツイッターでもつぶやいています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?