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スピード、ダービー……。ストローク(ストライド/グライド)あれこれ

 私が通っているローラースケートのクラブでは、月に一度、田舎の体育館でローラーディスコを開催している。ローラーディスコというのは、70年代に流行ったローラースケートを履いて楽しむディスコのこと。日本では「ディスコ」って死語かな。今ではすっかり下火になってしまったが、英語圏の各地のリンクでは地味にイベントとして生き残っていたりする。

 うちの近所で開かれるそのローラーディスコは、特別な宣伝など何もしないのに、フェイスブックで告知するだけで数百人もの人がわらわらと集まってくる人気イベントだ。ディスコといっても、音楽が流れる中、自由に滑るだけなのだが。アメリカのローラーディスコなどでは照明やミラーボールなどの派手な演出でノリノリに踊るカッコいいスケーターたちが多いようだが、うちのはいたって普通の田舎の体育館。照明は蛍光灯だ。

 半分くらいは子どもや家族連れだが、それでも「お、滑れるな」という雰囲気を醸し出している大人も結構集まってくる。2時間半のイベント内で数回、経験者だけの高速滑走の時間が設けられているのだが、滑れる人にはこれが結構楽しいのだ。大きな滑りやすいトラックで、思う存分高速でビュンビュン滑れる機会などなかなかない。ノロノロ滑っている人は係員にトラックの外に連れ出されてしまうくらいなので、スピードを出しても危なくないし、上手な人たちに混ざって滑るのはかなり気持ちがいい。

 そのローラーディスコに集まってくる経験者っぽい大人たちを見ていると、ただ前進するだけでもいろいろな滑り方のスタイルがあって本当に面白い。小刻みに動くホッケーっぽい人、ワイルドな感じのダービーっぽい人、アップ&ダウンせず上半身が微動だにしないスピードっぽい人、そしてアーティスティックっぽい人。今回は、そんなスタイルによるストロークやストライドの違いを見てみようと思う。

 まず大前提として、基本的にどのスタイルでも、ローラースケートやアイススケートというのはまっすぐ前に進むときには逆ハの字を描くように進んでいく。どの動画の例を見ても分かるが、まっすぐ=本当のまっすぐではなく逆ハの字の斜め前方向、なのを心に留めておいて欲しい。\ / ←こんな風に。そして、プッシュと同時に体重移動をして、完全に軸足(スケーティングレッグ)に重心を持ってくることが大切だ。


■スピード・スケート

↑ ジプシー先生が、早く滑るための滑り方を紹介してくれる動画。この方、てっきりダービーの人かと思っていたら、ダービーの前にはスピード・スケートのアメリカ代表チームの一員で世界大会にも出ていた人だったらしい。姿勢を低くして、横にプッシュと同時に体重移動。その後、Dの字を描くようにフリーレッグを後ろに持って来てから引き寄せる。なるほどー、面白い!

 インラインの人にはダブルプッシュという滑り方があるらしい。

↑ ジョーイ・マンティアという人の動画。パワーをウィールに圧縮させて、腰と体幹を使ってスピードを出すのだそうだ。地面にパワーを押し付けるようにしてプッシュしたあと、フリーレッグは円を描くように引き寄せる。スケーティングレッグは、アウトエッジに乗ってからインエッジに乗る。上体は動かさない。5:45から説明しているのは、腰と上体、反対側の肩は足からまっすぐ一直線上にあることが大切で、赤い曲線が曲がっている悪い例のように腰が曲がらないように、とのこと。

↑ バート・スウィングスという人の動画。よく見てみると、このお手本に使われている人の滑り方は、フリーレッグが三角形を描いているような感じで、プッシュしたあとシャープに後ろに引き寄せて待機させてから着地させている。いろんなやり方があるけど、この人のは変わってて効率がいいね、と動画でも言われている。このサムネ画像を見るだけでも、きれいに軸足の真上に上半身と頭が乗っているのがわかる。これはどのジャンルの人にも大切なポイント。

 スピードスケートの人は、上半身を地面と平行になるくらい屈めたまま、ほとんど上体を動かさずに進んでいくようだ。腕の振りも大きい。縦蹴りではなく横蹴りなのも特徴的だ。


■ローラーダービー

↑ Urrrk'nダービーの動画。体重移動させて左に乗って、右足でプッシュしたら回すように引き寄せる。次は体重移動させて右にのって、左足でプッシュしたら回すように引き寄せる、の繰り返し。

 急激にスピードアップしたい時はこうするらしい。

↑ スケート・ブリテインの動画。足を軽やかに動かし、前輪を使ってアクセルをかけるのだそう。走ってるみたいでおもしろい。そういえばスピードスケートの人も、最初のスタートダッシュはこんな感じだよね。

 スピード・スケートの人ほどではないが、ローラーダービーの人も上半身は屈めて腰を落としたまま滑るようだ。


ホッケー

↑ パワースケーティング・アカデミーの動画。ホッケーではLポジションにつま先を開いて後ろにストライドして、フリーレッグの膝をロックするのだそう。Lプッシュとも言うらしい。トウ・フリックという動作を入れるのがおもしろい。

 アイスホッケーでもやはり同じなようだ。

↑ コーチ・ジェレミーの動画。一歩目、三歩目以降で違うのがよく分かる。それでも、基本的には後ろにプッシュする。スピードに乗ってくる3歩目以降は真後ろではなく少し斜め後ろになる。腕も同じように、3歩目以降は少し横に振る。

 ホッケーの人も、上体を屈めて腰を低く落として滑っているようだ。そして、後ろ方向にプッシュする。


■アーティスティック

 その他のスタイルと一番違うのは、アーティスティックでは腰を落としてダウンしたあとアップして、またダウンするときの動きをパワーに変換して滑るところだと思う。スラロームなどをすると分かるが、膝を曲げる動作だけで推進力が生まれるからだ。

 そして、つま先を開いて斜め後ろにプッシュする。横にプッシュするより後ろにプッシュする方が美しいし、ダンス(アイスダンスみたいなやつ)などでペアを組んだ時にパートナーを蹴らないですむ。

 腕は振らずに横に広げて手のひらを下に向けておく。腕を横に広げると、やじろべいと同じように安定するので滑りやすい。

 上半身は倒さず、まっすぐの姿勢が基本。

 アイススケートの動画だが、この2つがとても分かりやすい。

↑ 道家フィギュアスケートの動画から2つ。美しいフォームで滑る方法が、すごく良く分かると思う。つま先を開く。ダウン、アップ、ダウン。わかりやすい。

 アーティスティック・ローラースケートの動画はなかなか良いのがないのだが、かろうじてこちらでほんの少しだけ説明されている。

↑ ニコール・フィオーレの動画。最初の話と初心者向けの説明が長いので、7:20あたりから見るといい。親指の付け根のボールの部分でプッシュする。フリーレッグを伸ばしてつま先を伸ばす。手を横に広げて。ストロークごとに膝を曲げる。重心を乗せる。


 後ろ方向にプッシュする際に気をつけなければならないのは、トウストップを使って蹴らないこと。いわゆるトウ蹴りではなく、つま先を開いて足の内側2輪を使ってプッシュし、親指の付け根のボールの部分を最後に残す。斜め後ろにプッシュしたら足を伸ばし、つま先を伸ばす。伸ばすといっても、足の甲を床に向けて伸ばすのではなく、足を少し外旋させてつま先は外側に伸ばす

 もし、後ろにプッシュしようとするとウィールがカラ滑りしてパワーのあるプッシュができないなら、プッシュする瞬間のつま先の開きが足りないことが多い。

 それから、私は始めたばかりの頃ダウンしたあとアップするのが早すぎて、ぽこぽこと体の上げ下げを繰り返していた。これは見た目にかなりカッコ悪いので、アップするのはゆーっくり!を心掛けると良い。


 アーティスティック以外の分野はよく知らなかったのだが、調べてみるとそれぞれに合理的な、理にかなった滑り方でおもしろかった。でも、そういう私も、うちの近所のローラーディスコイベントでハイスピードで滑る時は、アーティスティックのスタイルにこだわらず自然と腰を低くして上半身を少し倒して滑ることが多い。自分に合ったスタイルで、その場の状況に合わせて、ストロークやストライドを楽しんでいけば良いと思う。


 ツイッターでもローラースケートについてつぶやいています。





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