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『安くて広い家』に住むにはどうすればいいか?

「いつかマイホームを持って安心した生活を手に入れたい」
特に子育て世代の人は、そう思うことがあるのではないでしょうか?
一方で、現在日本、特に首都圏の住宅価格は過去最高を記録しています。
1億円のマンションを購入して35年ローンを組んだ場合、月々の支払いは25万円となります。
これでは一般のサラリーマンでは生計が成り立たない上に、35年もの長い期間この返済を続けるのは精神的にも大きい負担となります。
それではこれからマイホームを買おうと思っている人は一体どうすればいいのでしょうか?

『安くも広くもない真四角のマンション』

数年前にとある本を読んでいて、その中でやけに印象に残った一文があります。

みんな毎日コンビニ弁当食べて、しまむらやユニクロで買った服を着て、安くも広くもない真四角のマンションに住んで、やりたくもない仕事をやっているように見える。そういう人が好まれる。たしかにこの生き方は生存率がすごく高くて、とにかく死ににくい。子どもも育てやすい環境で、ある意味では生物が目指す最先端の環境なのかもしれないって思う部分もあるけど、俺にとってはくそつまらない。

ヤマザキOKコンピュータ『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』

この本自体は投資をテーマにした書籍なのですが、この『安くも広くもない真四角のマンション』という表現が、私にとってはやけに強く印象に残りました。
家を購入する場合の妥協案として、「安いけど狭い」や「高いけど広い」などの二者択一なら納得できるのですが、大体の一般サラリーマン、特に関東の住宅はおそらく『安くも広くもない』のが現状なのです。
それまで気づいていなかったわけではなかったのですが、あらためて文字で読むとハッとしてしまいました。
それ以来、70㎡そこらで5000万円以上といったマンション物件の広告を見るたびに、このフレーズが頭によぎり、自分はいつかこの二重苦から抜け出したいと考えるようになりました。
願わくば、その対照である『安くて広い家』を手に入れるにはどうすればいいかを考えるようになりました。

高騰するマンション価格の現状

それから4年が経った現在、ニュースではマンションの売買価格が高騰しているという報道が続いています。
不動産経済研究所の調査によれば、2023年上半期、首都圏における新築マンション供給戸数は1万502戸。平均価格は 8873万円と、前年同期比で36.3%もの大幅な値上がりとなりました。
これを東京23区に限定すると、平均価格は1億 2962万円、同60.2%上昇になる。庶民感覚から言えば、都区内の新築マンションは手が届かないのが、今のマーケットの現実です。

この書籍によると、マンションの高騰理由は以下です。
・富裕層による節税
・不動産業者による転売
・外資法人、外国人投資家による投資

さらにそれに追い打ちをかけるかのように
・建築資材の高騰
・エネルギーコストの高騰
・半導体の世界的な不足
・円安による輸入資材の価格の上昇
・労働力不足に伴う人件費の高騰
などの要因が、新築マンションの製造原価を高騰させています。

住宅探しの条件

上記はあくまで新築マンションの売買平均価格です。
住宅探しの条件を少し変えれば『安くて大きい家』に住むことはできるはずです。
そこで、住宅探しをする時の条件を以下に整理します。

<家探しの条件>
・ハード
 ・立地(地域/エリア)
 ・新築/中古(築年数)
 ・一軒家/マンション
 ・面積/間取り
・ソフト
 ・持ち家/賃貸
 ・取引方法

ズバリ『坪単価』でエリア検索

上記条件をすべて整理する前に、『安くて広い家』を見つけるために、ズバリ確認しておくべきことがあります。
それが『坪単価』でのエリア検索です。
インターネットで「坪単価 マップ」などで検索すれば、いくつもサイトでエリアごとの坪単価の相場を確認することができます。
その中でもホームズが提供するプライスマップは、地図形式でエリアごとの坪単価を見ることができて使い勝手が良いです。

LIFULL HOME'Sプライスマップ

上の画面の左上部分で『坪単価モード』を選択すれば、画面中央部分のエリアの「築10年未満」「築10年~25年未満」などの坪単価がいくらかを一目で確認することができます。
自分が住みたいと考えている大まかなエリアがあれば、その周辺をこのプライスマップで坪単価を確認すれば、より安くて広い家を見つけやすくなるはずです。

安くて広い家を探すのであれば、とにかく坪単価の低い地域・エリアを選べばいい。
しかし、坪単価だけに固着するのは危険だと言えます。
なぜなら『坪単価が低い』には、そのエリアが市場相場的に価値が低いとされる理由があるからです。
そして、自分が住む家を探すのであれば、その理由の一つである『災害に強いかどうか』をしっかり確認しておく必要があります。

ハザードマップの活用

そのエリアが災害に強いかどうかを判別するには、ハザードマップを確認するのがおすすめです。
ハザードマップは、その地域の市区町村が作成するもので、現在はインターネットから閲覧することができます。

インターネットで「ハザードマップ」と検索すると、こちらもいくつものサイトが出てきますが、中でも国土交通省が提供する重ねるハザードマップが私のおすすめです。

重ねるハザードマップでは、以下の条件のどれかもしくは複数を選択して、災害時にリスクのある場所を色付けして視覚的に確認することができます。
・洪水、内水
・土砂災害
・高潮
・津波
・道路防災情報
・地形分類

重ねるハザードマップ

近年は、気候変動によるゲリラ豪雨など洪水、内水や土砂災害に注意する必要があるでしょう。
また、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの大地震が発生するリスクが高いとも言われている。そのために津波も注意するべきでしょう。
豪雨や地震とも関連する条件が、地形分類です。地形分類は「山地」や「台地・段丘」などに分類されますが、災害リスクが高く気をつけなくてはならないのは「氾濫平野」や「後背湿地」などです。詳細は国土交通省の地形分類の内容を確認してください。

勤務場所との距離、周辺の生活・教育環境

災害の影響(ハザードマップ)以外にも、エリアを選ぶ時に考えるべきポイントがあります。
・勤務場所との距離
・周辺の生活環境
・周辺の教育環境

サラリーマンにとっては、職場や外出先などの勤務場所との距離や位置関係はエリア選びに強く影響します。特に大企業は都市部に多いので、職場の近くに住もうとするとどうしても坪単価が高くなってしまいます。

坪単価の安い地域に住みながら仕事を続けるには以下の方法があります。

<安い地域に住みながら仕事を続ける方法>
・通勤距離と時間を長くして都市部へ通勤する
・地方勤務の仕事に就く
・リモートワークが可能な仕事に就く

まず、通勤時間が長くなることはお勧めできません。「移動時間が好き」という人もいるでしょうが、移動時間が長いと幸福度が低下し、メンタルヘルスの問題が生じやすいという研究結果があります。特に出社頻度が多い会社に勤めている人は気をつけるべきでしょう。

次に、地方勤務の仕事に就くはどうでしょうか。そもそも職場が地方だと、地方に住みながら通勤時間も長くなりません。ただ、都市部で働いている人が急に地方で働くためには、たいてい部署異動や転職をする必要があるのではないでしょうか。仮にうまく異動や転職ができたとしても、これから人口減少で地方経済が縮小していく日本では、その地方勤務の仕事が将来的にあり続けるかは慎重に検討する必要があります。地方に住んで仕事をしても、将来的にはその仕事がなくなる可能性もあるのです。

最後のリモートワークが可能な仕事に就くのは比較的現実的ではないでしょうか。
コロナ以降、リモートワークができる仕事は増えています。リモートワークを基本として、従業員が自由に住む場所を選択できるという企業もあります。NTTなど特に通信・IT系の大手企業に多い印象です。

当然ですが、勤務場所との距離以外にも、学校や公園など子育てに適しているか、商業施設や公共施設が近くにあるかなど、周辺環境に関して幅広い観点で考慮する必要があるでしょう。

物件の探し方

住みたい立地/エリア、間取りなどが決まったら、物件を探すことになります。
それでは、物件はどのように探せばいいか?

<物件探しの方法>
・不動産サイトから検索
・不動産屋の店舗で相談
・広告を見る
・詳しい知人に相談する

現在では主にインターネットを介して、多くの物件を見ることができますが、比較すればするほど、住みたいと思う物件の価格は上昇していきます。多くの物件を見ると、どうしても比較して良い物件に魅力を感じるからです。特に新築、タワーマンションは、綺麗で周辺環境も整い、非常に魅力の高い物件ですが、1億円は優に超えてしまいます。

上記の物件探しの方法とは別の、『安くて広い家』を探すための方法を紹介します。

空き家問題

空き家とは、長期間誰も住んだり、借りたりしていない住宅のことです。
総務省統計局
によると、日本全国には6502万戸の住宅建物があります。
そのうち空き家の数は、なんと900万戸です。
まさに全体の13.8%、つまり住宅のうち8件に1件は空き家なのです。

さらにこの空き家数、空き家率はともに1978年から右肩上がりに増加傾向で、2023年は過去最高となっています。
その背景には、中長期的な人口減少が要因であると考えられています。

先ほど説明した通り、新築マンションの価格は過去最高を記録するくらい高騰している、つまり需要が上がっているのに、なぜ実際には人が住んでいない住宅が増え続けているのでしょうか?

その要因の一つには、不動産仲介業者が空き家を取り扱いたがらないことがあります。
取引額の低い空き家を仲介して取引するのは、得られる手数料が少ないので、不動産仲介業者は積極的に取り扱うことを避けがちなのです。
この空き家問題は、日本の社会問題として認知されており、地方自治体が「空き家バンク」を運営して、空き家の削減を目指すという動きも活発です。

空き家の探し方

この全国に900万戸と多くの空き家が実際にはあるのに、空き家の多くは市場に出回ってはいないのではないでしょうか?
住める状態の家を相続したものの、なかなか売りに出せないという所有者が多いようです。

そこで、すでに市場に売りに出されている空き家や、まだ市場に出ていない空き家を探せば、『安くて広い家』が見つかる可能性もあるのではないでしょうか。

<空き家の探し方>
①空き家バンクを活用する
②空き家マッチングサービスを活用する
③空き家所有者に問い合わせる

①空き家バンクを活用する
空き家バンクとは、その地域の地方公共団体が空き家情報を公開している仕組みです。
以下のサイトなどで物件を検索することができます。
・アットホーム 空き家バンク
・LIFULL HOME'S 空き家バンク
・全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集(国土交通省)

②空き家マッチングサービスを活用する
・家いちば
・地方移住マッチングサービス LOCAL MATCH
・さかさま不動産
・ダイワハウスの空き家管理サービス Livness(リブネス)

マッチング以外にも、会員定額制で空き家を含む好みの物件に住めるというユニークなサービスもあります。
・全国渡り鳥生活倶楽部
・ADDress

③空き家所有者に問い合わせる
これは少し難易度が高いアイデアですが、もし特定の空き家があって「この家に住みたい!」と思ったら、登記情報などからその物件の所有者に問い合わせてみて、空き家なのか、売り出す予定はあるのかなどの交渉をしてみるという方法はあります。
しかし、取引時のトラブル防止や確率の低さから一般の素人が挑戦するのは避けるべきかもしれません。

空き家に住もうとすることは、社会課題に向き合ってそれを解決するという社会貢献と同時に、『安くて広い家』に住むという自己実現にもなるのではないでしょうか。

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