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ガーデニングとピープルマネジメント


1. 私のガーデニングポリシー

はじまりは

2019年3月末に、世田谷の今の家に引っ越ししました。それからガーデニングが趣味になりました。自宅は、通りに面した横に長い敷地で、ちょっとした花壇スペースを3ヶ所作りました。最初は引越しや保育園に通う娘の世話もあるので、手がかからないようにプロに植栽をしてもらいました。

 新しい家に引っ越して1年経たない2020年1月。転職をしたのですが、その直後にコロナが猛威を振い、すっかりリモートワークが定着した頃、自宅の前の通りを散歩する人が増えたことに気がつきました。

 引っ越して1年、少しずつ好きな植物を植えていたものの、特に明確な目的があったわけではありませんでした。しかし、その時「散歩をする人を和ませるような花壇にしたい」「いつ通っても発見や楽しみがある花壇にしたい」と、この場所の目的を決めました。 

テーマは「いつ通っても発見があり、心癒される花壇」

一年中、いつ通っても見どころがあるように、まずはプラニングから始めました。

Garden Note

 また、ここから私のガーデニングポリシーが生まれました。「多様な植物を、その特徴を生かしながら一番イキイキ成長できる条件で植え付ける」です。イキイキ育つ植物は、生命力に溢れ、どれも本当に美しく、通りを歩く人を魅了します。まだ、植物が多様なので、それぞれが最も輝く季節が異なり、いつもどれかの植物がハッとする美しさを感じさせてくれます。

制約条件

 さて、近所の方のためにと志はあるものの、週5で夜遅くまで働くため、お庭の世話ができるのは週末だけ。しかも数時間です。この制約条件をもとに、手間がかからない樹木や宿根草、低木をうまく混植し活用することに決めました。

 また、一年草(ワンシーズンだけ咲く草花)を植え替えるのは、年に2回の春と秋だけというのも自分のルールとして決めました。

さあ、花壇づくり

 テーマと条件が決まったら、まずは、環境のアセスメントから。うちの花壇は午前中しか日が当たりません。同じ花壇でも前列と後ろ側では日の当たり方が違います。また土は、以前建っていた家の基礎なのか拳サイズのコンクリートの塊がごろごろ埋まっていたので、土壌改良をして水捌けの良い土を入れました。

 次に、環境に適した植物を選びます。成長した時の背丈、どんな土質を好むか、日向/日陰どちらを好むか、乾燥/多湿どちらを好むかなど、植物の特徴を知り、花壇に植えていきます。一つの花壇の全部が夏に咲く一年草だったら、その花が咲いている時は美しいけれど、咲き終わった後に見るべきところがなくなります。もしくは、全部を季節ごとに植え替えなければなりませんので、私には管理できない。

 例えば、花壇後方にはある程度背丈が高くなり、日陰に耐える低木(紫陽花やニワナナカマド)を配置し、その横には同じく日陰でも葉が美しい多年草のホスタやヒューケラを植える。花の少ない冬に開花するクリスマスローズも欠かせません。手前には、一年草の花(冬〜春ならビオラ、夏〜秋ならペチュニアやトレニア)、さらに手前には花壇から溢れるように咲くアリッサムもいいかも。

 こうして、春には一年草の花が咲き、梅雨時期には紫陽花が咲き、夏にはまた一年草の花が咲き、秋には落葉を楽しみ、冬にはクリスマスローズを楽しめる花壇ができあがり、一年中通り過ぎる人々の目を楽しませてくれる植栽ができます。

季節ごとの開花

 ちなみに、本当に近所の方を楽しませているか気になりますよね?実は、コロナ禍でも色々な方から声をかけていただきました。「いつもお庭楽しみにしています」「その植物はなんという名前ですか」など、たくさん声をかけてもらえるので、目的は達成できているのではと思っています。

 地域の広報誌のようなものにも写真付きで紹介されたり、奥沢地域の景観づくりにも貢献できているようです。

奥沢界隈ニュース・みどりの街づくりガイドにも

2. 植物と人材育成の共通点

 2020年ごろからガーデニングにハマった私ですが、3年間花壇を作り続け気づいたことがあります。それは、花壇づくりはチームづくりと似ている。そして、人材育成と植物を育てることは共通点が多いということです。まずは、後者について書きたいと思います。

植物が育つには

 植物が育つために必要なのは、太陽(光)・温度(環境)・水・栄養分の四つです。光にあて、適切な温度で育て、水をやり、栄養分を加える。

 あの有名な山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」と似ている!と思っているのは、、、私だけかもしれないので、説明しますね。

近くに太陽はいるか

 先輩や上司は太陽です。若い植物をイキイキと育てるのは、太陽が輝きその光を届けるから。良いモデルが近くにいれば、人は育ちます。
 私はよく「自分は誰かの太陽になれているか?」と自問自答します。

変化が起きる伝え方をしているか

 植物は言って聞かせて理解するということはありません。(植物に話しかける類のことは別として)しかし、人も植物も外から入ってくる情報は成長にとって重要な要素。忙しいからとほったらかしにせず、なぜその業務をするのか、なぜあなたにお願いするのかを、まわりから伝えられ理解して行動できている人は育ちます。
 ちなみに、落葉樹は気温という情報を感知して落葉します。その植物が厳しい冬を乗り切るには、必要な情報を感知し、自ら変化する(葉を落とす)から乗り切ることができ、翌春にひと回り大きく成長をしてくれるのです。
 人の育成にも似ている部分があります。「言って聞かせ」には、できていない部分へのフィードバックも含まれるかもしれません。それを相手が理解し、自らを変化をさせることで、その人は同じ失敗を繰り返さないようひと回り大きく育つのです。相手が変化をしているかまで注意してみることが大切ですね。

満足させるな、背伸びをさせているか

 植物はそもそも、成長しようという意欲が旺盛なので、光を与え、適した環境におき、水を与えればぐんぐん成長します。ちょっと脇道にそれますが、「水やり三年」という言葉があるほど、植物に適した水を与えるのは奥が深い作業です。若くまだ根もしっかり張っていない植物に多量の水を与えすぎても根が腐ってしまい、枯れてしまいます。十分な量よりも「ちょっと少なく与える」のがコツです。植物は、水が少し足りないと、周りから水を吸収しようと根をぐっと広げ、根張りが良くなり、成長が促進されるのです。
 これは、成功体験の積ませ方にとても似ていて、本人ができるレベルのことのちょっと上のレベルを任せることに似ています。人も植物も、その場所に満足していては、成長しないのですね。

特性を見て褒めているか

 褒められるのは、人も植物も嬉しいですね。植物にとってのご褒美は養分です。養分には、3大要素「チッ素・リン酸・カリウム」があり、簡単に書くと効果はこんな感じです。

チッ素:葉の成長を促す
リン酸:花や実の生育を促す
カリウム:根の成長を促す

 ちなみに、植物よって、どの養分をより多く必要とするか(比率)は異なります。例えば、大輪の花を咲かせる植物には、リン酸が多めに必要だけれども、年中青々とした葉が美しい観葉植物には、チッ素が多めに必要。また、植物の成長初期には、根をしっかり張るためのカリウムは欠かせません。
 よって、私はその人の成長段階やその人の目指す方向性に合わせて褒め方や褒めるポイント・比率を変えるようにしています。

3. 花壇づくりとチームづくり

 ちょっと長くなってきたので、この辺で筆を置きたい気持ちを抑えて、最後まで書き切ってしまおうと思います。

まずは、テーマや存在意義、目的

花壇づくりでもチームづくりでも、最初に大切なのは「なぜそのチームは存在しているのか」、「どんな役割を果たすのか」への答えだと思います。花壇はテーマや目的がはっきりしていないと、色がバラバラで統一感のない花壇になってしまい、「ただ植物が植っているだけ」の空間になります。
 企業が事業を展開するとき、必ず存在意義があり、価値を提供し利益を得ます。その事業を推進するために存在する各組織・チームにも存在意義があり、果たすべき役割と目的があります。そこを明確に把握していないと、チームは方向性を見失います。それは、なんとなく綺麗なんだけどどこにでもある花壇と同じで、いつしか道ゆく人々の風景となり、人を魅了する美しさという価値を提供することはできなくなるのです。

地際にひっそり咲くビオラ・ラブラドリカ

次に、条件の確認

 花壇の周りの環境・条件を確認します。東西南北どちら向きの花壇で、日照時間は?夏と冬の気温の違いは?土は水捌けが良いのか、悪いのか、以前は何に使われていた土地か。今、どんな植物が植っているのか。

 チームなら、トップの考え方、メンバーの年齢層や性別、これまでの歴史、メンバーの考え方、各メンバーの成長したい方向性。(花を咲かせたいのか、実をつけたいのか、枝を伸ばしたいのか。)など。メンバーの特性を深く理解した上で、チームとしての役割を果たすため、誰にどんな役割をお願いするか、どのように伝え、背伸びさせ、褒めるのかを考えます。

さあ、チームづくり 

 私の花壇づくりのポリシーは「多様な植物を、その特徴を生かしながら一番イキイキ成長できる条件で植え付ける」と書きましたが、チームづくりでも同じです。「多様な人材を、その特徴を活かしながら一番イキイキ成長できる環境で働いてもらいたい」と考えています。それぞれの成長のスピードや成長の仕方、成長後の価値の出し方は異なって当然。それがむしろ、チームの強さとなり、成果を出すことにつながると考えています。

今年伸びた枝ではなく、去年の枝にしか花を咲かせないクレマチス・ペトリエイ

 ある植物は、春に大輪の花を咲かせるが、暑い夏は苦手かもしれない。この場面には強い、この業界の顧客に強いメンバーは必要。

 ある植物は、日向に植えると葉焼けして枯れてしまうが、日陰でこそ美しい花を咲かせる。逆境に強いメンバーは頼もしい。

 ある植物は、花は地味だけど葉がグラデーションがかって美しく、しかも一年中鑑賞することができる。目立たないが、安定したパフォーマンスを出し続けるメンバーはチームの屋台骨。

 ある樹木は、ひっそりと一番後ろに立っているだけに見えるかもしれない。しかし、自分の根から養分をだし、土壌を良くし、他の植物を元気にしている。人望のあるメンバーはチームの要。

 ある低木は暑い夏に葉を茂らせ、その根元に植っている植物に涼しい木陰を提供している。木陰のおかげで夏を乗り越えた植物は、秋から冬に美しい花を咲かせる。チームには、相性の良い組み合わせも大切。 

4. 最後に

 間違って受け取って欲しくないので、あえて書きますが、テーマに合わない植物はどんどん植え替えればいいと言いたいわけではありません。水の量や土質、肥料の量は人の手で調整できますし、メンバーに合わせて伝え方、背伸びの具合、褒める比率は変えることができる。それでも、どうしても合わない場合には、その人にあった環境への植え替えも必要でしょう。大切なのは、その植物がイキイキと成長できる環境を整えることで、庭全体・組織全体の成果につながるということです。

 コロナ禍で閉塞感が漂っていた頃、なにより庭仕事・土いじりがマインドフルネスにつながっていました。今では、通りかかった方に声をかけてもらえるのが励みになり、これからも細く長く楽しみたいと思います。

 カスタマーサクセス部では、メンバーを募集しています。カジュアル面談からでも歓迎ですので、是非下記リンクよりエントリーください。お待ちしています。


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